アベセデス・マトリクス①

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アベセデス・マトリクスをご存知でしょうか。私が、農産物の商品化や既存商品へのアドバイスを求められる時に、必ず頭に浮かべる図です。今回は、簡潔にその紹介をします。飲食品をシンプルにかつ戦略的に考える上で参考になると思います(たぶんですが・・・)。

この説は、親しくさせていただいているエッセイストで画家の玉村豊男さんから教えてもらった考え方です。「アベセデス・マトリクス」(米山俊直・吉田集而・TaKaRa酒生活文化研究所著、2000年発行)に詳しく書かれていますが、16年前の著作にもかかわらず、少しも色あせていません(と思っているのですが)。

2つの座標軸

まず、横軸に農業的(自然依存的、少量生産)と工業的(人工的、大量生産)を置き、縦軸にローカル性(弱い情報発信力)とグローバル性(強い情報発信力)というカテゴリーをとります。その結果分けられた4つの事象を、それぞれABCDとすると、その位置関係は次の通りとなるでしょう。酒を例にとり説明します。

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横軸の農業的というのは、自然や風土に依存する部分が多いということであり、天候により収穫量が変動したり、質が変化したりします。これらの生産物は均一ではなく、ある意味、個性的なものが多いと言えます。通常、その生産量は少ないものです。

一方、工業生産の場合は、自然に依存しない人工的な環境で生産が可能となるため、均質な商品が大量に生産されます。また、多くの地域に技術移転され風土離れをした形で生産されることも含まれます。さらには、都市化された消費地において、お互いに競い合うように味が洗練されていく現象も、工業化に伴って現れます。

縦軸には、「グローバル化・情報化」の視点から、ローカル性―グローバル性というベクトルを設定します。いまだに狭いその地域だけで飲まれる酒はたくさんあります。現代は情報化社会であり、都市部の人たちにより多く飲まれるには洗練された味わいや香り、飲みやすさ等、強い情報発信力が求められます
それでは、4つのカテゴリーごとにみていきます。

ABCDの位置づけ

Aのカテゴリーの酒は、素朴な形で古来より存在します。酒はその地の農産物の加工品という意味では、全ての酒はAに始まるといっていいと思います。Aの酒は、狭い範囲の地域でしか消費されず、飲み手も限定されます。すぐ劣化することが影響していますが、流通に適さないため情報発信力も弱く、特定の風土やそこに住む人々のライフスタイルに密接に組み込まれた酒といえます。Aの酒としては、ヤシ酒、馬乳酒、バナナ酒、雑穀ビールなどが典型的です(飲んだことのない酒が多くて、突っ込まれると困ります)。

Bのカテゴリーの酒は、工業化され、近代的な技術が導入されて均質的に大量生産されるようになった酒です。その味わいや香りはある一定の水準まで洗練され飲みやすくなっており、Aよりも一回り大きな範囲で消費されている酒といえます。にも関わらず、情報発信力が弱いため、世界的にはあまり流通せず、いまだローカルな酒に留まっています。それが逆に魅力的な個性を生み出す源にたっているともいえます。代表としては、日本酒、焼酎、紹興酒等が挙げられます。

Cのカテゴリーの酒はBよりも情報発信力が強いタイプであり、ラガータイプのビールや連続的蒸留機からできる高い純度のアルコールから作られたウォッカです。最近注目のヴァラエタル・ワイン、たとえばシャルドネやメルローなどの単一品種から作られるワインがあり、特にニューワールドと称されるアメリカ・南アメリカ・南アフリカ・オーストラリア・ニュージーランドなどで生産が拡大しています。世界共通の品種名を前面に掲げることで、伝統的なワイン産地の呼称から離れることができ、輸出によって世界に高いレベルの美味しさや飲みやすさを発信し、顧客を獲得していると言えます。

ここで、BとCで起こるもう一つの事象を説明します。それは・・・
高いアルコール度数をより低いアルコール濃度で飲む傾向が現れるようになります。泥酔することなくほろ酔いの状態で楽しむ場合で、消費者に応えるには酒を水や炭酸で割ってアルコール度数を下げたもの、つまりはチューハイ・カクテルなどが市場に出回っており、この現象をSOFT・DRINK(ソフトドリンク)のSをとってS化と呼びます。

Dのカテゴリーは、基本的には自然や風土に依存した伝統的な製法で生産され、産地を特定するもので希少性も高い。品質が高く味わいは個性的であり、物語性を持ち、高級なイメージを持つ酒といえます。代表的な例としては、ドメーヌ・ワインやシャトー・ワイン、コニャックやシェリーなど、ブランド価値の高い酒です。

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だいたいは、以上のようにABCDS(アベセデス)マトリクスはなりますが、これは準備運動です。
次に酒から一般的な食べ物に広げ、このアベセデス・マトリクスで考えるとどうなるか・・・は、次回のお楽しみ・・・。

この記事を書いた人

長谷川 正之
長谷川 正之
アグリフード(風土)アドバイザー

長野県の農産物統一ブランド「おいしい信州ふーど(風土)」を創設し中心となって推進。また信州6次産業化推進協議会副事務局長として、地域6次産業化を主導。H28年3月をもって任期満了し、地域創生を支援するコンサルタント業務を開始する。長野県内で幅広いネットワークを持つ。

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