ブドウ農園時代に、6次産業化商品を販売していたときのことです。
とてもストレスに感じていたことがありました。バイヤーさんや何とかの企画会社やデザイナー、そして一般の方からも、こんなことを頻繁に言われました。
「オタクの商品、デザイン良くないね。こんな感じのデザインにしたらもっと売れるのに。世の中で売れているものをもっとよく見てみたら?地方にいたら、なかなか分からないかもしれないけど。」
商品パッケージやラベルを、新しくしたら売れると。
デザインを流行のものにしたら、もっと売れると。
昔は僕も、そうかなるほど!と純粋に思っていました。しかしある段階から、これを言われることがイヤでイヤで仕方がありませんでした。
あなたも商品を販売しているなら経験があるかもしれません。
デザインには答えがありません。人によって、良いと考えるデザインが全く異なるのです。またこんなこともありました。
バイヤーさんや関係者が集まった打ち合わせの場で、相変わらず僕はデザインのことを指摘されていました。皆さん、我も我もとデザインの悪い点を語ります。抽象的なデザインのことを、あれこれ言うのはたやすいことでもあります。
数分遅れて、とあるデザイナーさんが部屋に入ってきました。
そして一言目に、「お!このデザインなかなかいいね!」
一瞬、参加者がし~んとしたのを覚えています。そうなんです。人によって感じ方が全く異なるのです。そしてデザインを良くしたら売れるかというと、それは分かりません。売る段階になると、デザインを良くしろ!と言っていた人は、ササッと消えていきます。
僕ももちろん商品デザインは良くした方がベターだと思います。でももっと優先すべきことがあります。
それは先日のブログでも書きましたが、ターゲット顧客を明確にすることです。あなたのお客さんは、年配の女性でしょうか?もしくは高級百貨店のバイヤーでしょうか?それによっても求められるデザインが変わってきます。
もっと極端な例を挙げましょう。今の日本の高級路線では、シンプルなデザインが好まれます。でも、あなたの商品を香港に持って行ったらどうでしょうか?中華系では、赤色金ピカの派手派手ラベルが重宝されます。日本のシンプルデザインは地味で魅力に欠けます。
ターゲットによって求めるデザインは全く異なるのです。
顧客が定まっていない状態で、お金をかけてデザインを新しくしたら悲惨です。再び、外野から「このデザインは良くない。分かってないな~。」と言われます。ブドウ農園時代も僕はこれで何回か失敗をしています。新しいデザインが不評で、元に戻しましたこともありました。デザイン代をドブに捨てました。
そんな苦い経験を通して、最後はターゲットを伊勢丹新宿店に設定し、ジュースのデザインリニューアルをかけました。伊勢丹店頭で販売することを念頭に、バイヤーさんの意見を取り入れて、作成しました。しっかり的を定めて、関係者を巻き込んで作ったのです。お金もかけました。
そのデザインに対しても、やはり自称デザイン通の人は、とやかく言います。でもそれを僕は自信をもって突っぱねることができました。明確なターゲット顧客の要望を満たしたデザインだからです。心の中で「お前のためにデザインしたんとちゃうわい!」と思っていました。(興奮すると、大阪弁に戻ってしまいますが、ご容赦を・・・)
だからまずはターゲットとなるお客さんをしっかり定義してください。そこからデザインを考えるのです。
もしどうしてもデザイン変更を先にかけたい衝動にかられた場合は、知り合いの人に格安で作ってもらいましょう。スタイリッシュなデザインを参考に、自分で作ってみてもよいでしょう。
まずはお金をかけずに、小変更をかけて、マーケットにリリースするのです。そしてあなたの商品を買ってくれるお客さんの意見をヒヤリングしましょう。間違っても、お客さんでない人の意見を取り入れてはいけません。
「お客さんでない人の意見」とは、同僚、上司、自称デザイナー、お節介アドバイザー?等の意見などです。また、場合によってはあなた自身の意見も、無視する必要があります。あくまでも、あなたにお金を出してくれるお客さんの意見を聞くのです。そこに答えがあります。
ただし、どれだけ良いデザインを作っても、イコール「儲かる」にはなりません。継続的に売るためには、マーケティングの仕組が必要です。集客の仕組やリピートしてもらう仕組みです。その中に、必要に応じてデザインの要素を組み込むのです。
デザインはすべての解決策ではありません。解決策の一つなのです。
この記事を書いた人

- 世界の最新トレンドとマーケティングに精通しており、食品企業の商品開発やマーケティング活動を支援している。自身もかつては食品企業で、苦労しながら商品開発と販売をしていた経験あり。 日本と世界をつなぐ架け橋となり、食品企業のレベル向上に貢献することがミッション。 海外での講演活動にも精力的に取り組む。
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