ブドウ樹の枝を見ていて、思ったことがあります。
剪定して切り落とした枝を、販売できないかな?
もともと僕は大阪出身で、小さいころから信州にあこがれを持っていたからか、ブドウ果実だけでなく、樹も枝もなぜか魅力的に見えてしまうのです。
会社(ブドウ園)で、枝を販売したいと提案したら、クレームにつながると猛反対を受けました。でもどうしても売ってみたくなって、周りの反対を押し切り、売ってしまいました。
まずニーズがあるのか分からなかったので、既存のお客さんに「剪定枝をプレゼントします。」と言ってみました。「水に挿しておくと、新芽が出てきます。上手くいけば、葡萄の赤ちゃんがなります。」ってな具合です。そうしたら、多数の応募がありました。ブドウを育ててみたかった、という意見がおおく聞かれました。よしよし!
次に、東京のマルシェで一本30円で販売してみました。そうしたらなんと50本売れました。まじで!?
次の段階では、飲食店にFaxDMを送りました。「剪定枝から出てきたブドウ新芽を食べられます」と言ってみました。「タラの芽(上の写真)のように天ぷらやフリットにしたら美味しいです。しかもブドウなので、果実独特の酸味があります。」と言ってみました。そうしたら、都内の高級フレンチから注文が来ました。これはいけるかも!
僕自身も剪定枝を何百本もかき集めて、コンテナに水挿しをしました。そうしたらしっかり新芽が出てきました。
今度は「ぶどう新芽を天ぷらに使いませんか?春の珍味です。」と飲食店にFaxDMを出してみました。すると横浜の高級飲食店から注文が入りました。おぉ!
注文をとったのものの、新芽を切り取ると瞬間的にシナッとなってしまいます。これがブドウ新芽が世の中に出回らない理由だということがここで初めて分かりました。ちょっと焦りましたが、新芽を枝ごと送ることにしました。そうしたら数日は日持ちすることが分かりました。
その飲食店では、枝付き新芽を、枝ごと天ぷらにして、一品料理として出してくれました。そして、信州の葡萄農家が自分たちのために特別栽培をしてくれた、とお客さんにPRしていたようです。
一部の枝は、新芽が出る前に乾燥しないように新聞紙でくるんで、冷蔵庫に入れておきました。そして、時間差で暖かいところにだして、また水挿しをしました。そうしたら新芽が、時間差で出てきました。それを再び飲食店へ販売しました。
さらにさらに、冷暗所で新芽を発芽させてみました。すると、ホワイトアスパラならぬ、葡萄のホワイト新芽になりました。ワォ!
隠れ資産を発見しよう
今まで見向きもせず捨てていたものの中には、価値のあるものがあります。
僕のような地方に住む人間にとっては、何の変哲もないものが、都会の人にとっては宝である場合があります。また海外の人にとっては、もっともっと宝である可能性があります。その答えは意外と近くにあることが多いです。あなたはまだ気づいていないだけなのです。
もしあなたが果樹農家であれば、ここで述べた新芽ビジネスは応用できるはずです。世の中の新芽の大半は、天ぷらにすれば食べられます。新芽をペペロンチーノに入れて、春のパスタにしてもよいでしょう。(以下写真は、うちの親がトライしてみたときの、ぶどう新芽写真です。)
まずは無料で販売してみる
いきなり販売するのに躊躇する場合は、僕がやったように、まずお客さんに無料でプレゼントしてみましょう。たとえ無料でも、ニーズのないものは売れません。それで確認をとります。ニーズがあることが分かれば、小さく販売してみましょう。
ただしここで注意点があります。枝を管理する手間暇を考えると、新芽ビジネスで利益を上げるのは難しいです。少なくとも僕はそうでした。
本当の目的はお客さんとのコミュニケーション
そこで途中からは、お客さんとのコミュニケーションツールに切り替えました。お客さんから「新芽がでてきたけど、どのタイミングで鉢に植え替えればよいですか?」とか「ブドウの赤ちゃんがでてきたけど、ここからのケアをどうすればよいか?」と質問がきます。
それに親身になって答えてあげていると、お客さんとの信頼関係が醸成されます。そのお客さんが、秋になればうちのブドウを買ってくれるのは、必然的になります。
あなたの商売で見逃している資産はないですか?
枝、葉っぱ、花、摘果部分など・・・・一度考えてみてくださいね。
この記事を書いた人

- Innova Market Insights社の日本カントリーマネージャー。世界の最新トレンドとマーケティングに精通しており、食品企業の商品開発やマーケティング活動を支援している。自身もかつては食品企業で、苦労しながら商品開発と販売をしていた経験あり。 日本と世界をつなぐ架け橋となり、食品企業のレベル向上に貢献することがミッション。 海外での講演活動にも精力的に取り組む。
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