農家のマーケットインとプロダクトアウト

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圧倒されました。
活気に満ち溢れてました。
今まで参加してきた展示会と全く違いました。

東京ビッグサイトで開催された、ホビーショーに行ってきたのですが、それがあまりにも刺激的でした。小物やアクセサリー、刺繍、おしゃれな食品などの展示会です。アクセサリー作り体験や、デコレーション巻やフルーツデコのプチ教室もあります。

3日間で約13万人の来場者があるそうです。その96%が女性。入場料を払って女性がここにやってきます。(実は2年前に、パートナーさんを通して、この展示会で巨峰の干しブドウを販売したことがあります。おほほ。)

食のコーナーが1/3で、ホビーコーナーが2/3のレイアウト。このホビーコーナーが、僕にとって完全に未知なる世界でした。奥様方の活気といったら、そりゃもうすごい。日本を牽引しているのは、間違いなくこの人たち・・・(笑)

入場料が1200円、そして体験コーナーも大概有料で、3000円くらいはするのですが、それでも人であふれかえっています。自分でデコレーションをしたり、可愛い小物を作ることって、女性にとって魅力的なんですね。勉強になりました。

大きな会場に、500店舗ほどがひしめき合っています。芸術的なことはよく分からないのですが、一つ、僕の目にとまったものありました。出店者の一人が書いた文章です。

出来上がりを想像しながら、チクチク刺繍しているときの楽しさ、そして綺麗に仕上がったときの達成感は、私にとって他では得られない喜びです。ハンドメイドは、心豊かになれる楽しさと幸せが溢れている!と、改めて実感した作品となりました。

他の出店者が、作品の特徴や機能性、またデザイン性を語っているなかで、この人だけは、視点が異なるのです。商品の説明ではなく、自分の内側から出てくる想いや感情を表現したポップでした。この文章を見るだけでも、チクチクしている状況が目に浮かびます。うきうきした気分が伝わってきます。温かさも感じられます。

プロダクトアウトとマーケットインのどちら重要?

マーケティング用語で、プロダクトアウトとマーケットインという言葉があります。

プロダクトアウトとは、商品開発や生産を行う上で、作り手の考えを優先させる方法のことです。「作り手がいいと思うものを作る」「作ったものを売る」という考え方です。

それに対して、マーケットインとは、お客さんのニーズを優先し、顧客視点で商品の企画・開発を行い、提供していくことです。「顧客が望むものを作る」「売れるものを作り、提供する」方法を指します。 (かなり簡略化しております・・・)

最近の傾向では、マーケットインが良いと言われています。農業界ではマーケットインが出来ていないから云々カンヌン、、、とよく言われます。

プロダクトアウトを意識するとき

プロダクトアウトでなければならないものがあります。それは自分の内側にある想いです。生産者さんの想い、すなわち価値観です。

小規模生産者さんの場合、生産者さん自身も商品の一部であり、その価値観が意味をもちます。このことを、本当の意味で理解している生産者さんは意外と少ないと思います。

商品開発はマーケットインが良いのですが、あなたの内側にあるものは、プロダクトアウトでなければなりません。その独自の価値観に、お客さんが引き付けられるのです。

農家にとってこれが一番の差別化

もちろん、あなたもしっかりした想いがあり、農業を始めたのだと思います。6次化に取り組んでいる方は、加工品にも想いがこもっているはず。

味や価格だけの勝負なら、競合が多く存在します。でもあなたのプロダクトアウト的な想いを競合はマネをできません。だからこれは即、差別化につながります。もしその軸が揺らいでいるようなら、今一度原点の想いを思い出してください。あなたの想いや価値観は、商品の一部なのです。

そしてもう一つ大切なこと。

その想いをあなたはお客さんにしっかり伝えてますか?
伝えないと、それは存在しないのと同じですよ!

この記事を書いた人

田中良介
田中良介
Innova Market Insights社の日本カントリーマネージャー。世界の最新トレンドとマーケティングに精通しており、食品企業の商品開発やマーケティング活動を支援している。自身もかつては食品企業で、苦労しながら商品開発と販売をしていた経験あり。 日本と世界をつなぐ架け橋となり、食品企業のレベル向上に貢献することがミッション。 海外での講演活動にも精力的に取り組む。
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