県庁のマーケティング・コラム2「地産地消・上田城千本桜祭り直売編⑤」

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4月13日(水)午後、曇り。地元JA直売所の出店で、男性2名、若手女性2名と協調しての販売支援を行う。商品は、りんご1個100円(ばら売り可、6個で500円) りんごジュース100円 お茶100円のシンプルな品揃え。商品を絞ってあるので  私としては売り易い。

このコラムで繰り返し言っていますが、メインのバス客は、上田城見学後の短時間での購入なので、お客様に目を止めてもらうには、たくさんの品揃えでは目が散ってしまうのです。
結果から報告すると、リンゴ在庫12ケースを売り切り、追加分6ケースも完売、計18ケース完売続いて、ジュースも完売。お茶もほとんど売れました。想定外の結果にJA職員も驚いていました!

この日の戦略は・・・くもり空、暑ければジュースから売るところですが、バスも午後多目に到着するので、リンゴをお土産にという姿勢で攻めることにしました。

POP広告は、私の出番が午後だったので、敢えて書き加えず、声で勝負とわりきりました。そう判断したのには理由があります。お客様に対してPOP広告よりも効果的なPR方法があったからです。

それは・・・試食です。色々説明するよりも、実際に食べてもらって、「おいしい」と思ってもらう方がはるかに効果的です。
接近戦で、まずお客様に試食してもらい、「おいしい」と声に出してもらうことがポイントこのお客様の声を他のお客様が聞いて、自分も買おうという誘因にしてもらいます。

お客様がお客様を呼ぶ!

これが「売れるしくみづくり」です。マーケティングですね。

実際に私がやった状況をちょっとだけ再現してみると・・・
私: 「試食してみて、いかがですか」と聞く。
客: 「おいしいわ」と小さな声での感想
私: 「そう、おいしいですか」と大きな声で周りに伝えるように復唱

売り手が「おいしいですよ、安いですよ」と言っても、お客様の反応は期待薄です
お客様がおいしいといえば、本当と思います。周りの方も試食したいと思ってくれます。
そして・・・
他の客:「ほんとにおいしいわ」と少し大きめの声での感想
私:  「そう、おいしいでしょう」 と追い打ちで復唱し
あっ、お買い上げですか、ありがと~ございます」大きな声で周りに伝える。

お客様が集まりだすと、効率的に売りたいので、6個で500円という価格設定を活かし、私:「5個買うと1個おまけがつきます」という儲かるという顧客心理を突くと、バスの客が、飛ぶように買ってくれました。
私:「あと、残りに限りがございます」と希少商品をアピール。
特に関西方面のお客様は、店頭が込み合うと、われ先に買ってくれます。

「初めて人が人を呼ぶ醍醐味を味わえた」とはJA職員の言葉です。
リンゴ売り切れ後は、リンゴジュースが続き、売り切れ御免。

しかし正直に言いますと、全て順調に売れたわけではありません。
再度の発注6箱が届いてから、30分は全く売れませんでした。いやな雰囲気。
そこで、私がとった行動は・・・

敢えて、「売れています」と声がけしました。そして、そこから少しずつ道すがらのお客様が反応するようになりました。どう流れを作るかです。

ここまで書いてきて、試食でもしお客様が「あまりおいしくないね~」と反応したらどうするの? との疑問を持つ人がいるかもしれません。私ならそのときは、あまり言いわけはせず「正直、今の時期はどうしても味は落ちます。でも品質はバッチリなので、ジュースにしたらまだまだ新鮮でおいしいです。」「6個500円で安いので、ご家族で信州上田を味わってください」と、価格の安さのメリットをアピールします。もちろん、他のお客様に聞こえないよう小声で・・・(笑)

お客様がどう反応するか、テストしながら作っていくって、楽しいですよ。
この一連のアプローチは、前にも言いましたテストー検証ー仕組み化ですね!

直売所最終支援の 4月15日(金)は、晴れで暑い日です。A直売所が出店し、ベテランの男性2名と女性2名です。扱い商品は、おやき(あんこ、切り干し大根、野沢菜、きのこ、クルミ)、弁当(かつ丼、天丼、八宝菜)、クルミ、とうたち菜(小松菜他)、キャベツ(群馬産)、花、乾物多数。

結果は、商品があり過ぎて、あれもこれもで、売れ行き今一つ。暑いので、ジュースがあれば売れるのですが、何種類もの乾物を店先に並べては、お客は直売所の新鮮さを求めてくるのに、期待外れ。また群馬県産のキャベツまで並ぶと、地産地消と違うのではないかとなります。商品選択の失敗の事例です。

千本桜祭りに出店する場面の読み(天候、客層、競合出店者他)を間違えての品揃えだったので、私も含め、中途半端な対応になってしまいました。改めて、バス客を相手に売るのは短時間なので、「単純アピール商品」と「売り手の魅力」しかありません!

次回は、まとめです。

この記事を書いた人

長谷川 正之
長谷川戦略マーケティング研究所所長

1955年生まれ、長野県埴科郡坂城町出身。長野県信連勤務後、政策研究大学院大学で公共政策修士を取得。長野県や上田市で統一ブランドの創設や農産物マーケティングを推進。また、小学校PTA会長や地域活動にも積極的に取り組む。現在、中小企業診断士・公共政策修士として「長谷川戦略マーケティング研究所」を立ち上げ、企業や行政のマーケティング支援に従事している。落語鑑賞が趣味で、「上に立つより前に立つ」や「やってみなければ幸運にも巡りあえない」という言葉が好き。
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