農家とお客さんのコミュニケーション

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前々回のブログで、顧客リストを持つことの大切さをお伝えしました。商品を買ってくれるはお客さんなので、顧客リストは資産だということも述べました。

https://agri-marketing.jp/2016/05/06/post-1094/

すみません。これ半分ウソです。「何言ってんねん、こいつ!」って感じだと思いますが、半分間違いであり、半分は正しいです。

ここについては誤解が生じがちなので、追加説明したいと思います。

正確にいうと、顧客リストを持つだけでは意味がありません。大切なのは、お客さんとの信頼関係を築くことです。これが資産となります。

お客さんとの関係が悪ければ、あなたの農産物を買ってもらえるはずがありません。お客さんがいて、そのお客さんとの関係が良好であれば、購入につながります。

JAに卸しているだけのときは、お客さんのことを意識する必要はありません。これは日本の農業が抱える大きな課題です。

ではお客さんとの直接取引を始めたあなたは、何をすればよいのでしょうか?6次産業化に取り組んでいるなら、今日の内容は特に大切です。

僕が農業法人で実践していたことをご紹介しましょう。

聞くコミュニケーション

純粋にお客さんに意見を聞いていました。

フレンチやイタリアンレストランに加工品を卸していたのですが、定期的に電話をしたり訪問をしたりして、商品に対するフィードバックを貰っていました。また、頻繁にそのレストランに食べにいきました。食べながらシェフと会話をしました。

一食1万円はするレストランが大半だったので、自分への投資だと思って、自腹を切って食べていました。(単純に、食べて飲むのが好きなだけという意見もありますが・・・)

またスーパーに配達に行ったときも、かならず店員さんの意見や要望を聞くようにしていました。「売れ行きはどうですか?お客さんからの反応はいかがですか?商品に問題はないですか?」

個人のお客さんから注文の電話が来たときは、そのタイミングを利用して、お客さんの意見をヒヤリングしていました。「前回注文されたときは、ワインと一緒に食べられたのですか?」

聞くというコミュニケーションは、お客さんとの関係を構築するのに最適です。でもこれは意識しないとできません。とくに昔ながらの農家の方は、苦手な方が多いようです。

ひたすらお客さんにヒヤリングしていると、商品開発のアイデアをもらえます。また他のお客さんへPRするときの営業トークのヒントをもらえるメリットもありました。

こちらの状況を発信する

1.5ヶ月に一回ほどのペースで、約1000人のお客さんにお便りを出していました。ブドウの生育状況などを、ニュースレターのような形で伝えていました。お便りの後半には、商品紹介や注文フォームを付けていました。これが毎回大きな注文につながっていました。

またメルマガも出していました。ブドウ加工品の開発秘話や、今週の農作業などを、面白おかしく発信していました。農業にかける信念のような真面目な話も、伝えていました。

これらを続けていくうちに、お客さんから言われたことがあります。

「いつも私のことを気にかけてくれていて、ありがとう。そして毎回は注文できなくてごめんなさい。」

こういうことなんです。

お客さんのことを常に気にかけて、コミュニケーション

上で述べたこと全てを、直ぐにやっていくことは難しいと思います。でもそれを意識するだけでも違います。

配達に行ったついでに、要望を聞くことくらいはできるはずです。最近注文のないお客さんに、「なにかご不明点はございますか?」と電話をすることもできます。

簡単なことから始めて、それを習慣化しましょう。そして、徐々にお客さんへコンタクト回数を増やしていきます。最初から完璧にやる必要はありません。

次の段階では、そのコンタクトを取るタイミングや手法を、仕組み化していきます。

お客さんとの信頼関係は、すぐには醸成されません。やはり時間がかかります。それをコツコツ続けることが、いまの農業に求められています。やるだけで、売り上げは間違いなく伸びます。お客さんにも喜んでもらえます。

農家からのお便りは、都会の人にとっては嬉しいものです。ご存知のように、地方、農業、食、健康というキーワードが、今の時代とても重要視されていますよね。そのキーワードを全てもっているのは、生産者であるあなたです。

農業には時代から求められる要素がすでに備わっています。それを活かさない手はありません。

-田中良介

この記事を書いた人

田中良介
田中良介
Innova Market Insights社の日本カントリーマネージャー。世界の最新トレンドとマーケティングに精通しており、食品企業の商品開発やマーケティング活動を支援している。自身もかつては食品企業で、苦労しながら商品開発と販売をしていた経験あり。 日本と世界をつなぐ架け橋となり、食品企業のレベル向上に貢献することがミッション。 海外での講演活動にも精力的に取り組む。
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