県庁のマーケティング・コラム2「地産地消・上田城千本桜祭り直売編まとめ」

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今までの5回の報告のまとめをします。初めて読む方もいるかと思いますので、ダイジェスト版的に進めます。
直売所の販売支援にあたり、雨の中での逆境の時こそ、思いっきり売って見よう。と珍しく燃えた私がとった行動とは・・・

現場で、真剣に「戦略」を考えたことです。雨の中で発想すると、大きく弾んで広がります。どうしてか・・・そう・・・うちゅう的発想になるからです(雨中→宇宙、雨に唄えば・・、ピッチピッチチャップチャップランランラン)もとえ
それは、仮説として「筋道」を考え、実行しつつ検証し仕組み化していくという、シンプルな発想です。直感的に3つを思いました。

その場の環境を活かす
違いを見せる(ポップ広告・試食試飲重視)
接近戦を挑む

現場で考えると、与えられた条件を活かすしかありません。プレイヤーは、戦う場を選べないからです。一つ目の「その場の環境を活かす」とはどういうことか、
わかり易く言い方を変えると・・・
“あらかじめの条件不利などない、どう活かすかだけ”ということです。その日の天候から顧客の心理を読む、関連購買を考える。また、競合店との関係、客の導線を観察することです。また、今後の天候を予測しての扱い商品の選択です。その日の条件を有利にできる設定を考えます。

では 寒い雨の日が有利になる戦略とは何か ズバリいうと(皆さんも同じでしょう)「寒い」時に、心地よい状況の「温かい」を強調する商品を選択することです。
アイスクリームやジュースがあらかじめ販売商品として決まっていれば、苦戦は免れません。直売所ならば、「おやき」がフィット商品になります。

また、観光バス客がメインターゲットならば、お土産として信州ならばリンゴという本命の「上田産リンゴ」を主力商品とします。「この時期でも美味しい」がアピールポイントです

観光バス客の特徴は、観光後のお土産購入時間が短かいことです。
何種類もの商品を店先に並べたのでは、お客様は短時間で選択するのは難しい。
そこで、二つ目の「違いを見せる」では  “手書きにより違いを見せて、短時間で売る”
つまりは「ここだけ情報」を強調することです。それには、売りたい商品を優先順位で選択して絞り、その日の天候等を活かす文言を考え、お得な価格と思って買ってもらう。

私は、POP広告として赤マジックで書き加えました。
おやきには、「雨の日は、あったか~いおやきが美味い」
リンゴチップには、「バスの中で食べると、ホッペが落ちる!」
ふきみそは、「バスの中で食べると春が訪れます」
アスパラは、「スーパーのとはチョッと違う朝採りの新鮮さ」等

上田城の千本桜を見に来ている観光客は、自らに「なぜそれを買うのか」という問いを発し、それへの明確な回答が欲しいのです。(自問自答です)

私は、おやきを売るとき、菜の花のおやきを一番目に売る商品と位置付け、
“桜には菜の花が似合います” のキャッチフレーズで、菜の花を前面に出して売りました。

春の信濃路の代表的な 春の花「桜と菜の花」のセットの物語により、お客様の購入理由にフィットしたのか、菜の花のおやきは、あっという間に売り切れました。

一方、寒い雨の日は、店側も戦意が上がりません。そんな時、POP広告は、顧客向けだけではなく、売り手の意思統一・戦意向上にも役立ちます!

もう一つ、POP広告に加え、効果的なPR方法があります。
そうです・・・
試食・試飲です。色々説明するよりも、 まずお客様に試食・試飲してもらい、「おいしい」と声に出してもらうことがポイントです。もっといえば、お客様に言わせることです。このお客様の声を他のお客様が聞いて、自分も買おうという誘因にしてもらいます。

お客様がお客様を呼ぶ! これが「売れるしくみづくり」です。マーケティングですね。売り手が「おいしいですよ、安いですよ」と言っても、お客様の反応は期待薄です。お客様がおいしいといえば、本当と思います。周りの方も試食・試飲したいと思ってくれます。
田中良介さんも言っていますが、DMで、お客様の声を載せると説得力が増すということと同じだと思います。

三つ目の「接近戦を挑む」とは・・・
POP広告等を声に出して伝え、お客様の心をつかむことです。
それには、やたら大きな声は出さないで、雑踏といえども、一人のお客に話しかけるのが有効と思います。それはなぜか・・・お客様は、通りを歩きながら、どの店に行くか迷っています。 どの店がいいか、何かきっかけが欲しいと思っています。

その時、小さな声で、「寒い日は、あったかいおやき100円で幸せが訪れます」のささやきは、自分だけに向けられた情報と思ってもらえるでしょう。 じゃあ、ちょっと見てみるか、というきっかけとなりえます。

また、近くの「おやき専門店」は蒸しおやきなので、「焼きおやき」の良さを説明し、違いをアピールします。(他店をむやみに刺激しないのも大切、私はこの専門店のおやきを買いに行き、挨拶してきました)専門店は1,000円パック売り。ならこちらは、「100円ばら売り」を強調して違いを出します
買ってくれたお客様に「おやきを食べて、100円で皆様が幸せになれますように」との追加の言葉に、道すがらの方達からドッと笑いが起きました。(狙いどおり・・・笑み)

さらに、「雨の中、気をつけてお帰りください」と背中に声掛けします。 周りの人が聞いていて、お客様を大切にする姿勢を感じてもらえたらラッキーです。キーワードは「お客様の声を引出し、つなげていくこと」です。

 お客様がどう反応するか、テストしながら作っていくのが、マーケティング と思います(まさしく、変化するマーケットに適応していく Market + ing の現在進行形ですね!)。今回の直売所販売支援は、この一連のアプローチ「テストー検証ー仕組み化」の実戦の場となり、とても有意義でした。

関わった4カ所の直売所の皆様からは、大変勉強になったとの過分のお褒めの言葉をいただきましたが、さらにサプライズが最後に訪れました・・・

私の出番が終了したところで、隣のブースの販売員に挨拶したところ・・・
「4日間の出店での売り方を隣で見ていて、とても勉強になりました。とても私にはまねのできないことでした。でも一つでも実行していきたいと思います!」と返してくれたことです。

以上で、まとめとします。

この記事を書いた人

長谷川 正之
長谷川戦略マーケティング研究所所長

1955年生まれ、長野県埴科郡坂城町出身。長野県信連勤務後、政策研究大学院大学で公共政策修士を取得。長野県や上田市で統一ブランドの創設や農産物マーケティングを推進。また、小学校PTA会長や地域活動にも積極的に取り組む。現在、中小企業診断士・公共政策修士として「長谷川戦略マーケティング研究所」を立ち上げ、企業や行政のマーケティング支援に従事している。落語鑑賞が趣味で、「上に立つより前に立つ」や「やってみなければ幸運にも巡りあえない」という言葉が好き。
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