「終着駅は始発駅」のこころは・・・②

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前回のうどん屋に続き、ある旅館の事例をお話しします。

一般の旅館ホテルは、お客様のチェックアウト後、お見送りをします。お辞儀をして手を振って見えなくなるまで続ける姿はよく見かけるでしょう。丁寧ではありますが、ほとんどの旅館はここで終わり。次のお客様の対応に移ります。

しかし、ある旅館の女将の行動は違っています。このアクションのおかげで、リピーターが非常に多くなり、安定経営につながっています。
その行動とは・・・

見送った後、すぐ事務室に戻り、あらかじめ用意してあったペーパーをFAXします。   このペーパーにどんなことが書かれているか予想できますか。
それは・・・

「前略 長谷川様ご家族様 お帰りなさいませ。
当旅館にご家族でお越しいただき有難うございました。
不行き届きがありましたら、何卒お許し下さいませ。
実は、お見送りした後心配しております。
お帰りの上信越自動車道の混雑がテレビニュースで放送されていました。
また、天気予報では、お住まいの長野県は梅雨前線で強い雨とのこと。
無事お帰りになられますよう念じております。
また皆様にお目にかかれます日を、従業員一同待ち望んでおります。
とりあえずの思いをFAXさせていただきました。
乱雑乱文をお許し下さいませ。 早々
5月22日15時30分 上田旅館女将 真田丸子 」

 

だいたい、このような雰囲気の内容です(文章の添削はグッと我慢いただきたく・・・、あくまで趣旨ということでご勘弁を・・)。しかし、多くの皆さんから、こんなことは忙しい中で無理です、との即答が聞こえてきそうです。
しかし、あらかじめ様式を準備しておいて、当日空いている時間を作り書き加えます(天候やお客様の体調を気遣う内容、天気が良ければ、それはそれで書きます)。

FAXですから、簡単な用件のみで良いと思います。出来ないことはありません。直筆が良いのですが、今はパソコンの筆文字でなら即書き加えられます。また、FAX番号は予約の際お聞きしておきます。

受け取った客様の反応はどうでしょうか。
疲れて夜遅く家に帰ってきたら、FAXで旅館から先回りした挨拶と自分たちの帰りを心配するペーパーが届いている。この旅館(女将)は、お客様である私たち家族が無事に家に着くまで心配りしてくれているんだと感激するでしょう。実際、リピート客が多いことからわかります。

確かに、簡単にできることではありません。私が以前、中小企業診断士として旅館ホテル経営者の皆さんに研修でこの話をした時、実行した人は20人中1人だけでした。
皆さんが無理なくできることで付加価値は付きません。感動もしてもらえません。お見送りした最後から始まるのです。
やはり、お客様の喜ぶ顔が見たいための「執念」と思います

ここでのまとめ⇒「終着えきは始発えき、そこから執念というレールを敷いて、利えきに行き着きましょう」

この記事を書いた人

長谷川 正之
長谷川戦略マーケティング研究所所長

1955年生まれ、長野県埴科郡坂城町出身。長野県信連勤務後、政策研究大学院大学で公共政策修士を取得。長野県や上田市で統一ブランドの創設や農産物マーケティングを推進。また、小学校PTA会長や地域活動にも積極的に取り組む。現在、中小企業診断士・公共政策修士として「長谷川戦略マーケティング研究所」を立ち上げ、企業や行政のマーケティング支援に従事している。落語鑑賞が趣味で、「上に立つより前に立つ」や「やってみなければ幸運にも巡りあえない」という言葉が好き。
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