果実栽培農家、そして6次化事業者のあなたに質問です。
「あなたは、ひたすら甘味だけを追及していませんか?」
僕も含めてですが、生産者の多くは甘味のきいた商品のほうが良いと、無意識に思いがちです。お客さんに「甘いですね!」と言ってもらえることが、最高の褒め言葉であると勘違いしてしまいます。
以前、僕の扱っていたブドウ加工品(干しブドウ)には甘いタイプと酸味の効いたタイプがありました。酸味の効いたタイプは、意図してその味にしたわけではありませんでした。その年の異常気象に大きく影響を受けたため、結果として酸っぱくなってしまった品種でした。
生産者の思い込み
酸っぱいから売れないであろうと、当初思っていました。しかし店頭販売を続けるうちに、お客さんの意外な反応が見られることが分かりました。
酸味が効いているほうが美味しいと言うのです。甘いほうの品種は、甘すぎると。
こういう声がちらほら聞こえ始めたので、マルシェなどの店頭販売の機会を使って、マーケティングリサーチをやってみました。
マーケティングリサーチといっても、簡単な方法です。お客さんに甘い干しブドウと、酸っぱい干しブドウ、両方を食べてもらって、どちらが好みか質問するだけです。
すると、甘い派と酸味派が、ちょうど半々になることが分かりました。男性は甘いほうを好み、女性は酸味の効いたほうを好みます。(あくまで干しブドウに対するリサーチです。)
カップルや夫婦の場合は、意見がバシッと分かれます。どちらを買って帰るかで、もめるシーンもよく見られました(笑)。そんなとき「両方買いましょう!」と勧めると、ほとんどは両方買ってくれました。
今の世の中、味覚や好みが多様化しています。酸味だけでなく、渋みに反応する人もいます。最近は皮の柔らかいブドウが好まれますが、中にはしっかり噛みごたえのある皮を好む人もいます。
あなたは酸味や渋みを、あなたの常識内で排除していませんか?
6次産業化で差別化する方法
もしあなたが、甘いだけを追求している場合、一度お客さんの声をとってみることをお勧めします。あなたの目指しているゴールは、本当のゴールでない可能性があるからです。
甘さ勝負をしていると、まわりは競合だらけです。果物にしても、6次産業化の加工品にしても、世間は甘いもので溢れています。ジュース、ジャムなど・・・・そこで同じ甘さの勝負をしていたら、差別化を図ることは容易ではありません。
発想をずらしてみましょう。自分は、酸味や渋みで勝負してみると。
そうなると、競合が急にいなくなることに気が付きます。景色が変わります。まだこの方向で勝負している生産者さんは少ないからです。
ただし、ここでも単純な罠に陥らないようにしてください。酸味や渋みを思い込みだけで追及してはいけません。お客さんの意見を聞いて、求められる方向性やその背景を考えるようにしましょう。
それができると、6次産業化の取り組みとしては、はるか上をいくことができるようになります。
-田中良介
追伸:
甘いものが大好きと言われているシンガポールで、店頭マーケティングリサーチをしたことがあります。日本ほどではないですが、酸味を好む傾向が見え始めています。日本の数年遅れくらいの感じでしょうか。要注目です。
この記事を書いた人

- Innova Market Insights社の日本カントリーマネージャー。世界の最新トレンドとマーケティングに精通しており、食品企業の商品開発やマーケティング活動を支援している。自身もかつては食品企業で、苦労しながら商品開発と販売をしていた経験あり。 日本と世界をつなぐ架け橋となり、食品企業のレベル向上に貢献することがミッション。 海外での講演活動にも精力的に取り組む。
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