中山間地JAの新たな流通への挑戦

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私の支援している上田地域の「JA信州うえだ」は、高原野菜の産地を有していますが、全体としては大規模農家は少なく多品種少量生産型の地域が散見されますが、日照時間は長く、小雨で寒暖差が大きいことから、良質の農産物が生産されます。今後、JAは今までの系統出荷中心から、一部自ら商談会等を通じて直接販売する計画を立てています。

しかし、スーパー等と取引するには欠品は許されず、一定量を確保する必要があり、中山間地の小規模農業は不利と言わざるを得ません。
しかし、この状況だからこそ付加価値を生む取引が、あるスーパーと今始まろうとしています。今までの規模のメリット一辺倒の取引ではない、新しいスーパーとの関係構築です。

このスーパーは、広島・岡山を中心とするグループ企業ですが、どのような経営戦略をとっているのでしょうか。確かにユニークですが、決して奇を狙ってなどはいません。何せ過去16期連続2ケタ増の売上を達成しているのですから。
では、このスーパーのどこがユニークなのか。

それは・・・「18時以降の売り切れはOKという方針」です。欠品厳禁はスーパーの常識ですが、18時以降欠品してもいいとなれば、鮮度落ちの激しい葉もの野菜は、18時までが営業時間であり、ロス分を見込んで高い値段設定などしなくて済みます。朝から他店より安いお買い得な値段で売ることができ、売り上げが伸びます。直売所と同じ感覚です。

この「鮮度を第一」とする広島のスーパーは、上田のある地域の農業者達と、多品種野菜の価値を最大化して売り切る、という新しい流通プロジェクトを始めます。

多品種で規格外の端物を含め、売り切る条件は2あると思いますが、今回その条件が整う可能性があるのです。

一つは、端物野菜は加工用にしか使えませんが、このグループは

スーパー以外にも多様な販路を持ち、地域の食を支える企業

であることです。夕食材料宅配事業や外食・給食事業、料亭・居酒屋事業、通販事業があり、これらの販路を活かして売り切るのです。

二つ目は、そのためには、

品目ごとに独自の選果基準を持ち、できるだけ選果に時間をかけないことです。

今回、この基準作りにチャレンジしようとしています。

ミニトマトなら、もし大きさは違っても良ければ、量り売りします。そしたら、選別にかかる時間等のコストは削減でき、鮮度の良い野菜を消費者に提供できます。

生産者と消費者の間に入るJA・卸売会社・スーパーグループ会社の3社による記者会見が先日行われ、私も会見場で聞いていましたが、そこで、この新たな基準作りが可能ではないかと思わせる場面がありました。
それは、スーパーグループ会社の社長が語った次の言葉でした。

「今まで小売りが大きくなり、その論理“欠品は最大の悪”を生産者に押し付け、規格品以外は現場で捨てられていました。これは小売の我がままです。我がグループは、扱う野菜を全部使う業態開発にチャレンジしています。そしてできる限りの新鮮さを提供していきます」。

扱い品目は、アスパラ、ブロッコリー、ミニトマト、キュウリ、キャベツ、レタス、ズッキーニなどで、上田市のこの地域で生産できる品目です。それぞれの品目の選果基準をどう作るか、期待したいと思います。

一方、新しい流通は、お客様の声が生産者に届くシステム作りです。それには、生産者-JAとスーパーグル―プの間に、全国的な流通を担う卸売会社が仲立ちする(コーディネートする)必要がありますが、この全国2位規模で脱市場を目指す卸売会社の存在が、中山間地域の農業者と遠隔地域の消費者をつなげることを可能にします。

この流通チャレンジは、中山間地の農業者の収益アップに貢献すると思いますが、何よりJAの組合員の結集度が高くないと実現できません。特に地域の若い農業者がJAを自らの組織として積極的に利用し関わることです。JAは組合員のための組織という原理原則を今こそ見つめ直す時と思います。新しい流通では、改めて「協同」が大切なキーワードになるでしょう。
この独自選果基準作りの今後は、私も注目していきますし、このブログで伝えていきたいと思います。

ここでの学びは
生鮮野菜の新たな流通への挑戦(ちょうせん)で目指すのは→ そう、超鮮(ちょうせん)です。

この記事を書いた人

長谷川 正之
アグリフードビジネスアドバイザー

□1955年生まれ、長野県埴科郡坂城町出身。慶應義塾大学法学部政治学科を卒業後、長男としての責任を感じ故郷・長野県の農林系金融機関に就職。在職中は、融資や資金証券運用業務ほかに携わる一方、企画業務では「中小企業診断士」の資格を活かし経営戦略(経営理念の策定含め)を立案し事業展開を図る。54歳時に、「上司の顔より真理の顔を」という言葉に出会い、「ソロで力量を磨き、パーティーを組んで更に高い目標に挑戦していく!」意識を自覚。思い切って選択定年で退職。
□55歳で一念発起し、政策研究大学院大学政策研究科まちづくりプログラム(修士課程)に学び、ダントツの高齢者ではあったが無事「公共政策修士」を取得。 
□56歳で長野県庁の民間登用試験を受け、任期付職員として採用(課長級:農政部農産物マーケティング室企画幹)。県農畜産物の統一ブランド「おいしい信州ふーど(風土)」を玉村豊男氏と共に創設し普及。6次産業化推進や「信州ワインバレー構想」策定等にも関わり、任期満了につき退職。
□61歳で上田市農林部農産物マーケティング推進室・専門員に採用。「発酵で輝く上田のまちづくり」を提唱し、民間の「信州上田・発酵の女学校」等の設立を支援。上田市の統一ブランド「信州上田なないろ農産物」を創設し、地産地消を強力に推進。講演では「尊農上位論」を熱く説く。現在、ながの農協非常勤監事も務める。
□地域活動として、地元小学校PTA会長、さらに当時の小学校連続殺傷事件発生に際し地域で自主防衛すべく歴代PTA正副会長会(ビーナス会)を組織し現在会長。「地域の子どもは地域で育てる」を合い言葉に実践中。春・夏休みには、町内児童館で本の読み聞かせを楽しく行っている。
1995年阪神淡路大震災時には、友人の落語家や中学同級生たちといち早く復興支援寄席を開催。以降、高齢者福祉につながればと坂城寄席を継続開催中(現在休演)。地区の自治活動にも積極的に関わり、来年は区長を担う。コロナ禍や自然災害多発のなか、自治会(区会)が自治体(町行政)を構成する確かな「共同体」の仕組みを作りたいと意欲を持つ。
今後、「中小企業診断士」「公共政策修士」の知識・経験を活かし、さらに地域に貢献したいと前を見すえる。紆余曲折の人生のなかで培った多彩な人脈が自らの強み。
□趣味は落語鑑賞。好きな言葉として 「上に立つより前に立つ」 「スピードが感動を呼ぶ!」「笑いで輪(和)来!」「他人の言葉を気にして生きるには人生は短すぎる!」。
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