長野県の農産物で、今までこのブログに登場してこなかった代表的な品目を、そろそろ紹介した方がいいという雰囲気になってきました。
というのも、日本のワイン業界において注目すべき大きな出来事が5月26日、27日にあったからです。「G7伊勢志摩サミット」で、12本の日本ワインが提供されました。
名だたる専門家による選考委員会が設けられ、
12本中長野県産ぶどうによるワインは何本か・・・
3本が入り(25%)、その品質を世界にアピールできました。
白ワインは4本中2本。玉村豊男氏が経営するヴィラデストワイナリーのシャルドネと、シャトー・メルシャンのシャルドネです(詳細はネットで検索されたし)。
赤ワインは、シャトー・メルシャンのマリコ・ヴィンヤード・オムニス。使用品種は、 カベルネ・ソーヴィニヨン55%、メルロー36%、カベルネフラン9%で、赤白とも欧州種です。
この3本のうち2本は、東御市(ヴィラデスト)と上田市丸子地区(マリコ・ヴィンヤード)で栽培されたぶどうで、この地域は、今、千曲川ワインバレー東区(8市町村のワイン広域特区)として、全国的に注目されています。
何しろ、先行して大手ワインメーカーの圃場が2つあり、プチワイナリーが6つで、そのワイナリーオーナーは全員が県外から移住している熱き人材です。
長野県は、2013年3月に「信州ワインバレー構想」を策定し、県全体でワイン産業の振興を図っています(他に桔梗ヶ原ワインバレー、日本アルプスワインバレー、天竜川ワインバレー)。
今回、ワイン産地として上田地域に注目が集まりましたが、私はワインが「ある歴史的なもの」を引き継いでいると思っているのです。
その歴史的なものとは何か・・・
ずばり「シルク」です。
明治から昭和初期にかけて、この地域は蚕糸業で栄え、蚕都上田は世界を相手に勝負していました。上田から信越線で横浜港へ、そこからヨーロッパ、アメリカに生糸が輸出されました。上田は「信州の横浜」といわれ、横浜に上田町という地名までありました。
桑の樹とブドウの樹は良く似ています。深根性で、当時の生糸の産地はフランス・イタリア。ワインの産地もフランス・イタリアです。シャトーメルシャンのマリコヴィンヤードは、丸子地域の陣場台地にあり、旧桑畑でした。また、ヴィラデストのぶどう畑も旧桑山です。
今、桑は健康食として注目され、実のジャムや、葉のお茶として商品化され、私も食べています。あの食欲旺盛なお蚕さんがもりもり食べ、シルクを産みだす桑の葉は、栄養の塊です。血圧を下げる抗酸化作用があり、桑の葉にはビタミン・ミネラル・食物繊維などが豊富、カルシウムは牛乳の約24倍、鉄分は納豆の約15倍ともいわれます。桑の実(マルベリー)ジャムは、ポリフェノールの一種であるアントシアニンがブルーベリーの約3倍、鉄分は他の果実の 4~10 倍など、大変な健康食です。
財政面に限界のある私は、もっぱらシルクの川上の「桑の葉っぱや実」の栄養に関心がありますが、もちろん、伝統的な「上田紬」の名刺入れも2つ持っています(それがどうしたと言われそうですが、着物を買うまでには至っていません・・残念)。
また、シルクの着物の復活を試みている方たちも知っています(その着物を眺めているだけなので気が引けます・・・)。ワインとシルクを歴史的なつながりで考えると、この地域の魅力を味わい深く受け止められます。
ここでの学びは
千曲川の流れが引き継いでいるように、歴史を流れとして身近に引き寄せて感じることが大切と思います。この地のワインとシルクはどちらも世界基準!
WIN-WINの関係です。さらにほろ酔いかげんでそこに「いー(E)」関係を加えると
⇒文字通り WINE―WINE の関係になります。
上田の蚕糸業は、地方都市では例がない「ある産業」をもたらし、現在まで続いています。
その産業とは何か・・・次回に。
この記事を書いた人

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長谷川戦略マーケティング研究所所長
1955年生まれ、長野県埴科郡坂城町出身。長野県信連勤務後、政策研究大学院大学で公共政策修士を取得。長野県や上田市で統一ブランドの創設や農産物マーケティングを推進。また、小学校PTA会長や地域活動にも積極的に取り組む。現在、中小企業診断士・公共政策修士として「長谷川戦略マーケティング研究所」を立ち上げ、企業や行政のマーケティング支援に従事している。落語鑑賞が趣味で、「上に立つより前に立つ」や「やってみなければ幸運にも巡りあえない」という言葉が好き。
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