行政が喜んで対応したNPO法人からの依頼 

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NPO法人は、いまや全国に5万件あります。行政とNPOの協働が言われる中、行政を手伝っている私が、最近喜んで対応した事例を紹介します。そこには、農産物のマーケティングや6次産業化の面から、いろいろな可能性があると思うのです。

上田地域のNPOを支援する中間支援組織のNPO法人理事長から上田市にこんな依頼がありました。

当NPOは、上田産の農産物のブランディングに対する中間支援活動を行っているが、新たに行政や金融機関にも加わってもらい、協議会をつくりたい。
具体的には、市内のNPO法人S学園の生徒達が手掛ける地元産ニンニクの栽培や販売への支援、加工品のご当地グルメ「美味だれ」(焼き鳥のたれ)のブランド化を図るため、生産から加工・販売までのコンサルティング業務を行いたい。

その資金調達として、国の補助事業を申請しているが、「市や金融機関との協議体組成」の必要性を言われ相談にきた、とのことです。
美味だれ

この相談はどこが違うのか。

まず、中間支援組織として具体的な取り組みを想定し、必要資金を国からの補助金で調達する段取りを整えていることです。
その条件である協議会設立につき、まず地元金融機関の承諾を得たうえで、市に要請に来られました。

多くの相談事例は、使える補助金を教えてほしい、申請をバックアップしてほしいという初期のものです。当然行政として相談にのりますが、今回は、まず当事者として情報を収集し国や金融機関にあたったうえで、行政としての支援は何が可能か問うてきたことです。そうすると、ストレートに話が進みます。

行政として支援できることは・・・

行政の支援として考えられることを即答しました・・・
①ニンニクの栽培指導

県の改良普及センター職員につなげ、対応する。
②ニンニクの成分分析
ブランディングには違いを作ることが重要ですが、外国産、国内主要産地の生産物との比較
分析を行うため、県の研究機関につなげ、対応する。
③販売支援
市のマーケティング専門者等がバックアップする(不肖、私が担当します)。
④ブランド化支援
市の関係部局が、飲食店他の関係団体等を巻き込んで展開する。

他にもありますが、このファーストコンタクト時の動作で、ことがスムーズに運びました。

この事例から学ぶこと

NPOがNPOを支えるという仕組み作りが有効。
特に、6次産業化では、生産者、加工事業者、流通・販売事業者という関係者がどうつながって地域内資源を付加価値を高めて循環させるか、がポイントとなります。

それらのつながる関係者は、株式会社だけではなく、地域のNPOやボランティア団体も含まれます。多くのNPO法人は、志は高いのですが、人的・資金的側面は脆弱なのが現状です。
特に最近、引きこもりがちな生徒たちへの農業体験支援(彼らは非常に丁寧に農作業をするとのこと)や、障害を持つ方々の農業への関わりが注目されています。

行政や金融機関は、このようなNPOを支援する中間支援組織と協働し、力を発揮できると思います。中間支援NPOが地域内のNPOに対して、資金面他の相談にのる機会を増やすことが、地域社会の問題解決に有効と思います。

ここで、だいぶ昔のことですが、私は似たような経験を思い出しました。
1995年の阪神淡路大震災時、私は復興支援のため地元で支援寄席を開催し、その義捐金を神戸の被災地で活動している地元大学生グループに託し、その成果を次年度の寄席の場で報告してもらいました。

被災地の方のビデオレターが寄席の会場で流され、さらにそこで集まった義捐金を学生に渡すという仕組みを作り、4年間続けました。責任者であった私は、最後の年は代表して家族で神戸に行き、復興宣言した皆さんに手渡すことができました。

ここで考えることは、自分たちの義捐金が直接リアルに被災者に役立っているという「手応え」です。

行政が「手応え」を感ずるとき。

新たに生まれたこの「信州上田産ブランディング協議会」は、地元の新聞にも取り上げられました。普段は感じ難い「生徒や障害を持つ者の農作業を通じた学びや喜び」「加工に加わる地元事業者の熱い思い」「地元産を愛し思いを込める料理人」他、いろいろな地域の皆さんとつながり、プロデュース役を果たすことが期待されます。
各行政は、このような仕組み作りを行い、「手応え」を感じ取っていきたいですね!

ちなみに、この中間支援組織のNPO理事長は、30歳代の爽やかな女性です。

この記事を書いた人

長谷川 正之
長谷川戦略マーケティング研究所所長

1955年生まれ、長野県埴科郡坂城町出身。長野県信連勤務後、政策研究大学院大学で公共政策修士を取得。長野県や上田市で統一ブランドの創設や農産物マーケティングを推進。また、小学校PTA会長や地域活動にも積極的に取り組む。現在、中小企業診断士・公共政策修士として「長谷川戦略マーケティング研究所」を立ち上げ、企業や行政のマーケティング支援に従事している。落語鑑賞が趣味で、「上に立つより前に立つ」や「やってみなければ幸運にも巡りあえない」という言葉が好き。
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