千曲川ワインバレーは女性がリードする ②

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前回は、大手ワインメーカーのブドウ畑(ヴィンヤード)の話で、ワイン用ブドウの収穫は、地元女性の皆さんがリードしている話でした。
今回は、ワインを飲むのも、女性がリードしているという話です。

まず、千曲川ワインバレーに限らず、日本全体の動きをつかみます。

「女性が好きなアルコール飲料」は何か

少し前のデーターで恐縮ですが(NHK放送文化研究所全国調査データ2007年)、男女別アルコール飲料の好みについて、興味深い内容を紹介します。

男性の年齢階層別(20歳~29歳、30歳~59歳、60歳~)の全てで1位は何でしょう、誰もが同じ答えを言うでしょう。そう、「とりあえず、ビール」です。焼酎、清酒と続きます。
では、女性はどうでしょうか。予想してみてください。

そう、ワインと果実酒です。当たりましたか。
30歳~59歳がワイン1位で、他は3位。この順位は、今もそんなに違和感はないと感じます。では、なぜ女性はワイン好きなのでしょうか。次に考えてみます。

日本酒と女性の関係

まず、男性が好きな日本酒(清酒)と女性との関係を考えます。
日本酒(清酒)には、女性が参加できない伝統・歴史があったといわれます。
江戸時代、日本酒は男性が酔うために飲むものとして、男性中心の家の中や外の遊びの場面で日常化していきます。それらは、多くの落語の噺に出てくることから、ご承知の通りです。
飲んだ後、最後にご飯を食べるという「食前酒」としての日本酒は、長らく女性と男性が一緒に飲める環境にはありませんでした(小さい時の我家もそうでした)。

ワインと女性との関係

一方、ワインは西洋料理の食中酒ですから、明治の導入期の絵画を見ても、男女同席ですし、宴会は男女で踊る舞踏会です。ワインは、酔うために飲むものではなく、料理を食べる中で飲むもので、料理とスパークリングワイン、白ワイン、赤ワイン他を組み合わせる「マリアージュ」の魅力です。
しかし、日本の歴史では、お米のご飯主体の食生活に合わなかったこと、欧州種のワイン用ブドウの栽培が難しかったこともあり、戦後の大阪万博以降―輸入ワイン拡大時まで待たねばなりませんでした。今では、レストランで男女のグループや女性同士が当たり前に料理とワインを楽しんでいます。

ワインを先行して学ぶ女性

日本人は、一般的に「ワインは知識を必要とする」という意識があります(私も同じ思いです、でも意識だけで行動が伴いません)。ワイン資格では、皆さんご存知のソムリエの他に、ワインアドバイザーやワインエキスパートがあり、年々受験者数が増加しています。
このワイン資格取得者5万人のうち、女性の占める割合は何パーセントでしょうか
それは・・・ナント45%です。多いと思いませんか。

そこで、紹介したいことが有ります。
このワイン資格の中で目立つ資格が、「ワインエキスパート」です。
女性の占める割合がナント・・・
6割を占め、7,729人います。

ワイン資格保持者図2

このワインエキスパートは、20歳以上なら誰でも受験でき、ワインスクールなどに通い取得しています。消費者側に立ってワイン消費をリードする人達で女性が主導している、といえるでしょう。(さらに詳しく考えたい方は、福田育弘(2015)『新・ワイン学入門』集英社インターナショナル、を参照下さい。)

千曲川ワインバレーは女性がリードすると考えるわけ

私が、敢えて千曲川ワインバレーという地域においても、そのワイン消費は女性がリードすると考えるのは、次の理由からです。

一つ目は、「軽井沢」という女性客にも人気の集客力のある観光地と千曲川ワインバレーをつなげる戦略を長野県として考えていることです。
つまりは、「軽井沢を起点とするワインツーリズムの展開」です。
首都圏のワインに関心のある女性他の皆様に、馴染みの軽井沢駅に設置するワインポータルサイトで情報発信し、来てもらうものです。
具体的には、軽井沢~小諸~東御市~上田市を走る路線バスを試験的に走らせ、それぞれのワイナリーで飲んだり、ヴィンヤード巡りをするものです。間もなく、このブログでも情報発信できると思います。

二つ目は、千曲川ワインバレーは欧州種のワインが中心で、世界的な品質の大手ワインメーカーのワインから、集積しているプチワイナリーのワインまで、幅広く味わえることです。首都圏に近いので、ワイン資格取得者やワイン好きの女性を引き込める魅力を備えていると思います。

三つ目は、千曲川ワインバレーは、対象の8市町村が「ワイン広域特区」を形成していることです。
ワイン産業は、幅広い地域産業(農業・食品加工業・飲食業・宿泊業・交通機関・金融機関・大学等教育機関など)とリンクできます。中でも、ワインを味わえるレストランやホテルがないと始まりません。少しづつですが、増えていく気配があることです。
先ごろ東御市田中駅近くで、ご夫婦で始めたワインレストランは、夫は東京で活躍されていたベテランシェフ、婦人はシニアソムリエです。まだ始めたばかりで詳しくは書けませんが、追って情報を提供いたします。
ワイン好きの女性がこの地に住み、起業したり、消費をリードしてほしいという希望があります。

以上、女性が日本ワインの消費をリードし、中でも千曲川ワインバレーは女性が牽引していくという私の思いを、希望を含め述べました。

最後に、この後、我家でも「ワインは男女で飲むもの」というスタイルに則り、家庭内でリード役の妻とワインを飲みます。

実は、今日は妻の誕生日です。

この記事を書いた人

長谷川 正之
長谷川戦略マーケティング研究所所長

1955年生まれ、長野県埴科郡坂城町出身。長野県信連勤務後、政策研究大学院大学で公共政策修士を取得。長野県や上田市で統一ブランドの創設や農産物マーケティングを推進。また、小学校PTA会長や地域活動にも積極的に取り組む。現在、中小企業診断士・公共政策修士として「長谷川戦略マーケティング研究所」を立ち上げ、企業や行政のマーケティング支援に従事している。落語鑑賞が趣味で、「上に立つより前に立つ」や「やってみなければ幸運にも巡りあえない」という言葉が好き。
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