前回のブログ①で、この直売所を運営する企業(株式会社)の【事業定義】を、少し長いですが以下のように想定してみました(あくまで私がもらった資料等から整理してみたものです、ご了解ください)。
「地域で新鮮・安心安全な農産物を作る顔の見える生産者と、食の楽しさを求める消費者が出会う場を提供し、両者の健康と幸せを守るお手伝いをする事業」
そして、【顔の見える生産者】として、全員の似顔絵を直売所に掲示していることを述べました。ここで、少し付け足します。
【消費者が求めているものを作る】
事業定義として、消費者の健康と幸せを守るお手伝いをあげていますが、消費者の求めている健康と幸せをどう見せるか、アピールするかです。
【I駅長】ここの生産者は、消費者の求める栄養・健康志向の農産物や加工品を作っている、
というメッセージを発信しています。
ナルホド、各農産物の栄養成分や機能など、細かく表示し、「体の不調に効く野菜リスト」なども掲示されていました。
また、生産者が製造したジュースやジャムのラベルを自ら作る(写真、イラストは自ら考え、希望者にはラベルの形にして支援)というスタイルを貫いていることです。
【私】このマイラベルは、農家に負荷がかかりませんか。
【I駅長】マイラベルは農家に自ら売る感覚を持ってもらい、考えることの重要性を身に着け
て欲しいからです。負荷とは思っていないでしょう。
【私】こんなに種類があると、お客様は迷いませんか・・・
【I駅長】イヤ、皆さん、買い物が楽しいと言ってくれますよ。
I駅長が考える消費者が求めているものとは、一つ一つの商品の新鮮・安全・安心はもちろん、直売所がスーパーや市場にはない楽しく買い物できる空間の提供です。種々の色鮮やかなラベルが並んでいると、スーパーには無い楽しく面白い売り場になります。欲求は、非日常の場で、ゆっくり選択するという購買行動です。
また、どんな作物を作ってもらうのでしょうか。
I駅長は農家でもあるので、自ら新たな農産物を作ってみて、消費者の立場でこれなら買うというものを生産者に作ってもらうとのこと。最近では、ニンニクとラッキョウを奨めています。まさしくマーケットインの発想です(ただ、I駅長が多くの消費者の思いを代弁できるのか、という疑問がわきますが、納得できる理由を後で述べます)。
さらに、この企業は栽培方法等の技術的な指導のほか、農業者が20品目つくり、1反歩100万円をどう実現するか、という講習をしています。
畑に無駄なものはないという考えを徹底していて、
【I駅長】畑で捨てたり、腐らせてはいけない、全部売り場に持ってくるよう伝えています。
それには、6次産業化での付加価値化が欠かせません。最近では、青とまとジャム、スイカ
糖等が注目されています。
【消費者に直売所に来てもらうには】
直売所は、農産物や加工品をただ並べて待っていても、消費者は来てくれません。
【私】消費者に、数ある直売所の中から選択してもらうには、どうしたらいいでしょうか。
【I駅長】ズバリ、言いましょう。楽しく買い物をしてもらうためには、味覚イベントや農産
物プレゼントが効果的です。
イベントは、訪問時、写真のスイカ重量当てクイズを行っていました。
直売所はデカいものが売れるし、注目されるとI駅長は言います。なぜか。
スーパーに無いもので、普段流通しない非日常的なものとして、産地に近いほうが本物に出会え感動するということではないでしょうか。
このスイカクイズで感じたことがあります。最初の訪問から2日後に再び伺ったのですが、違いに気づきました。9.5キロの小型スイカが参考に置いてあり、投票箱の位置も変わっていました。たぶん、お客様の声を参考に変えたと思います。ドラッカーのいう「顧客との対話」の表れでしょう。
また、農産物のプレゼントというと、抽選で欲しい商品がもらえると考えてしまいますが、この直売所は違います。どう違うか。
【I駅長】プレゼントの農産物は、実際に農場で収穫してもらいます。
そうです。1,000円以上の買い物で抽選し、当たったらチケットを渡し、お客様に収穫時に農場に来て収穫してもらうのです。必ず、リピーターになるとのこと。驚きは・・・
【I駅長】体験農場は全部プレゼント用です。
消費者を面白いイベントや農産物プレゼントで引き付け、その体験を通じて直売所の購買につなげ、顧客化していく企画力・行動力に感心しました。
そして、帰り際、I駅長が最後にぽつりとつぶやいた一言を私は聞き逃しませんでした。
【I駅長】他の直売所は、人を集める努力をしているのでしょうか。
以上2回にわたり、レポート風に記しましたが、全体のまとめを次回ドラッカーに登場願い試みます。そして、このI駅長(最初は片手以下の報酬で、生産者と消費者をつなげ、アイデアや行動力で成果を出している)とはそもそも何者なのか・・・。
関心のある方は次回をご期待ください(笑)。
この記事を書いた人

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長谷川戦略マーケティング研究所所長
1955年生まれ、長野県埴科郡坂城町出身。長野県信連勤務後、政策研究大学院大学で公共政策修士を取得。長野県や上田市で統一ブランドの創設や農産物マーケティングを推進。また、小学校PTA会長や地域活動にも積極的に取り組む。現在、中小企業診断士・公共政策修士として「長谷川戦略マーケティング研究所」を立ち上げ、企業や行政のマーケティング支援に従事している。落語鑑賞が趣味で、「上に立つより前に立つ」や「やってみなければ幸運にも巡りあえない」という言葉が好き。
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