コストと手間をかけて6次産業化にチャレンジしたのに、安く買いたたかれて赤字・・・
これはよくあるパターンです。
小さい農家の場合は、自社で製造すると手作り部分も大きいので、たいがい想定以上の人件費がかかります。外注する場合も、製造ロットが少ないため、加工賃は高めになります。
要するに、利益確保のためには、否が応でも高値を付けなければなりません。でも一般的な加工品であるドライフルーツやジュースなど、なかなか高値で売れるものではありません。僕もこのギャップにとても悩んでいました。
一般的に、ドライフルーツ(干しブドウなど)は一パック200~300円です。しかし僕が売り歩いていた干しブドウは、その5~6倍の値段をつけていました。半生タイプの干しブドウで特徴はあったのですが、お客さんからするとさすがに高すぎる・・・ということになります。でも小規模農家にとって、赤字にしてまで6次化に取り組む意味はありません。だから価格はキープすることにしていました。しかし売れない・・・
価格が高いと言われる本当の理由
あまりにも「高い!」と言われるので、お客さんになぜ高いと感じるのかを、聞いてみました。そうするとほとんどの人がこう言いました。
「普通、干しブドウはもっと安いじゃないですか。御社の商品は美味しいけど、いくらなんでもたかが干しブドウにそこまでお金を払えない。」
そのとき、僕はハッと気がつきました。お客さんはこの商品を他の干しブドウと比較していることを。ここに大きな問題があったわけです。分かりますか?
お客さんは、うちの半生干しブドウそのものを評価しているわけではなく、輸入物の安い干しブドウとの比較で高いと感じていたのです。
商品カテゴリーを変えた結果・・・
そこで安い干しブドウと比較されない戦略をとることにしました。何をやったかというと、まずは商品名を変えました。セミドライ葡萄という名前にしました。
そして「これは生でもなくカラカラの干しブドウでもありません。限りなく生に近いセミドライ巨峰です。他にはないジャンルの商品です。」というスタンスを取るようにしました。比較対象を変えてしまった訳です。
この方針のもとに、ポップ、パンフ、DM、営業トークを組み立てるようにしました。
すると、安い干しブドウと比較されることが減りました。結果として、思惑通りお客さんからの「高い!」が激減したのです。
競合対策として商品名をさらに変える
時間が経つにつれ、今度は別の問題が出てきました。競合商品が出始めたのです。同じように「セミドライ」と呼ばれるドライフルーツが増えてきました。そこでさらにセミドライから軸をずらすことにしました。
商品名を「半生葡萄」にしたのです。要するに、これは基本的に生のブドウで、その風味を向上させるため、わずかに熟成乾燥をさせたという位置づけにしました。比較対象を、千疋屋さんで売られているような一房1万円クラスの高級ブドウにしたのです。
そうすると、また売り上げが伸びました。実際は、販売場所によって、「セミドライ葡萄」という言葉と「半生葡萄」を使い分けていたのですが、商品名を変えるという戦略は効果てきめんでした。
ジュースの場合は、比較対象をワインにしてしまう
ジュースの場合は、比較対象をワインにするようお客さんを誘導していました。
「こちらのジュースはさっぱりしているので食中ワインの代わりとして、こちらのジュースは濃厚なので、食前酒かデザートワインの代わりとしてどうぞ。」てな具合です。
営業トークのいたるところにワインという言葉を散りばめました。ワインであれば、高いものは何万円とします。比較対象をそこに持っていったわけです。そうすることにより、6次化商品であるジュースを高い値段で販売することができるわけです。
◇◆
お客さんはあなたの商品をみて、どのカテゴリーであると感じているでしょうか?それが高値で売れていない可能性があります。一度考えてみてくださいね。
-田中良介
この記事を書いた人

- Innova Market Insights社の日本カントリーマネージャー。世界の最新トレンドとマーケティングに精通しており、食品企業の商品開発やマーケティング活動を支援している。自身もかつては食品企業で、苦労しながら商品開発と販売をしていた経験あり。 日本と世界をつなぐ架け橋となり、食品企業のレベル向上に貢献することがミッション。 海外での講演活動にも精力的に取り組む。
この投稿者の最近の記事
【田中良介】2018.07.17国際線での大騒動
【田中良介】2018.06.16これからの商品開発のヒント
【田中良介】2018.06.12サラダチキンが伝わらない!?
【田中良介】2018.05.31境界線が曖昧になってきている!