農業法人に勤めていたとき、ぶどうの加工品をシンガポールへ輸出していました。
物流とお金の流れについては、シンガポール現地にある企業を通しました。この会社とパートナーシップを結んで、一緒にシンガポールで売り歩きました。県の補助金も活用しながら、僕自身、昨年はシンガポールに2回営業に行きました。ターゲットとなるお客さんは飲食店でした。
シンガポールでついた値段とは・・・
一般的には、輸送料や流通会社の手数料などを加味すると、シンガポールでは日本の2倍程度の値段になります。ジェトロや輸出の専門家からもそのように教えられていました。
と・こ・ろ・が・・・
シンガポールのパートナー企業は、日本の4倍の値段を付けたのです。
な、なに~!
こんな高値で売れるのか?と最初は不安に思いましたが、シンガポールではこの値段で簡単に売れてしまうのです。実際、飛び込み営業した飲食店でも、いとも簡単に契約に結び付きました。
売値は何で決まるのか?
一般的な経済の教科書には、原価の何割増しかして値段をつけましょうと書かれています。しかし現実は異なります。ターゲット顧客がその商品にどれだけの価値を感じるかで決まってしまいます。
シンガポールのお客さんは、うちの商品にそれだけの価値を感じ取ったわけです。だから売れるのです。恐るべしシンガポール。これはシンガポールだけの話ではありません。香港だろうが国内だろうが値段の設定は、あなたがどれだけの価値を提供できるかで決まります。原価は関係ありません。
実は海外のほうが売るのが簡単?
YesでもありNoでもあります。どういうことかというと、海外で売るには感情的な怖さと漠然と見えない障壁があるからです。そして、最初の一発目は非常にパワーが要ります。そういう意味では難しいと言えます。
しかし一度その壁を突破すると、国によっては非常に高値で取引ができます。僕も何十件と現地の飲食店を営業して回りました。その2/3は飛び込みでしたが、それでも成約につながることを体感してしまうと、輸出をしないことは勿体ない気がしてしまいます。もしかしたら一度軌道にのれば、海外のほうが拡販は簡単かもしれないとすら思います。
あなたの商品に価値を感じてくれる人がどこにいるか?
あなたはムリをしてまで輸出をする必要はありません。でもあなたの商品をしっかり評価してくれるお客さんがどこにいるのかを考えましょう。そして探しましょう。
価値を感じてくれないお客さんを説得するより、価値を感じてくれるお客さんを探すほうが早いです。
ぼくの場合は、その一つがシンガポールだったわけです。
-田中良介
追伸:世界食品トレンドをもっと学びたい方は、以下のメルマガにご登録ください。食品企業の商品開発やマーケティングに役立つ最先端の潮流を、田中が解説しています。
メルマガ「世界の最新食品トレンドを知る」
この記事を書いた人

- Innova Market Insights社の日本カントリーマネージャー。世界の最新トレンドとマーケティングに精通しており、食品企業の商品開発やマーケティング活動を支援している。自身もかつては食品企業で、苦労しながら商品開発と販売をしていた経験あり。 日本と世界をつなぐ架け橋となり、食品企業のレベル向上に貢献することがミッション。 海外での講演活動にも精力的に取り組む。
この投稿者の最近の記事
【田中良介】2018.07.17国際線での大騒動
【田中良介】2018.06.16これからの商品開発のヒント
【田中良介】2018.06.12サラダチキンが伝わらない!?
【田中良介】2018.05.31境界線が曖昧になってきている!