6次産業化の進展は地域金融機関で決まる②

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前回、地域金融機関が果たさねばならない役割を、6次産業化の地域ネットワーク型への転換という視点から述べましたが、別の大きな理由があると思います。その理由とは・・・

金融機関は、取引先に対して「殺生与奪権」を持っているからです。

金融機関は、「半沢直樹」を思い出すまでもなく、時には倒産やむなしの判断をすることがあります。ですから、金融機関としては、普段に取引先の健全経営や経営革新支援の為に、提供できる付加価値は何かを追求する責務があると思うのです。

たとえば、6次産業化商品の独自性をどう見極め計画の妥当性を判断するかです。それには、ある程度の一般的な栽培加工の知識や経験を持つことが必要で、可能ならば、優秀な人材を地域の適切な企業に研修派遣し、技術やノウハウを習得すべきでしょう。

他専門機関にアウトソーシングする例も散見されますが、内製化しないとノウハウの蓄積につながらない、行員の能力が向上しない、士気が高揚しないと思うのです。

また、市町村に派遣して地域全体の公共的な立場を感受し、戻って人脈を広げてネットワーク作りに貢献する等も考えられます。その努力が地域の発展を促進するエンジンになると思います。その上で、金融機関に少し厳しい見方を述べます(お許しください)。

地域金融機関はリスクをテイクすべき

最近、ある方たちと話をしました。一般的に企業は材料・原料を仕入れ、付加価値を入れて製造し販売します。そこでは、いかに安く仕入れるかが利益確保の基本です。しかし、日本で、驚いたことにタダで商品を仕入れている業種があります(周りからウッソーという声)、さてお分りですか(全員沈黙)。皆さんよく知っている業種です。

そう・・・金融機関です。皆さんから預かっている預金はほとんどゼロ金利。

金融機関は「お金」という商品を扱っていますが、ほとんどタダで仕入れ(長期低金利時代で、今は1年定期0.02%等、100万円を200円で仕入れているのです。トホホ。わかりませんか、預金者に何も払っていないということです)、そして金利をつけて貸出しています。しかし、金融機関からはこんな声が聞こえてきそうです。

「貸出の金利も下がるし、利ザヤが確保できず、そもそも資金需要がなく、貸出す先が無いんです。行との競争も厳しいし・・・。無理して貸して不良債権化したら経営は大変です」。ハア~⤴です。

外部環境、そして自らの事しか考えていないと言われかねません。貸出競争激化なら、低金利競争ではなく、経営アドバイス等の支援機能強化という付加価値で戦うのが筋です。では、資金需要は本当に無いのでしょうか。

ある金融機関職員は、資金需要を見つけるため早朝5時からあるところへ毎日行きます。どこかおわかりですか・・・。

近隣の銭湯に朝一番で入りに行き、風呂で交わされる住民の会話に耳を傾けているのです。いろんな情報が入ってくるそうです。まさしく、資金需要という情報は、取りに行くのです。

私は、金融機関の批判をしたいわけではありません。預かった地域住民のお金をリスクをテイクして地域に貸し出し循環させ(信用を創造して)、経済効果を主導してほしいと思っているだけです。そのリスクをテイクするには何が必要でしょうか。経営体力はもとよりですが、当たり前のことが求められます。それは・・・ノウハウです。

ノウハウの蓄積は内製化で

そのノウハウ取得に金融機関は貪欲であってほしいと願っています。金融庁も地方銀行が地域経済に貢献しているかをはかるため新たな指標を導入するという記事が出ていました。地元企業にどれだけ融資しているかや、担保や保証に依存しない融資の割合など、銀行に本来求められている金融仲介機能を十分果たすよう促すとのことです。

しっかり行動している金融機関があることは知っています。昨日、他県の金融機関に伺い、職員の皆さんとディスカッションする機会があり、毎年一定数の行員を地元の主力業種企業に派遣しているとのこと。地域金融機関の「人材資源の高付加価値化」は大切です(そこで打つ手は何かを話し合ってきました)。

私が内製化にこだわって主張するのは、どの経営支援機関(コンサルタント組織等)と組むのが効果的か見極める「目利きのノウハウ」は、取引先の現場に行かないと身に着けられないからです。

会議室では、有名大企業出身者等のビッグネームの肩書の専門家なら効果的な支援が期待できるとアバウトに考え、自らの責任回避が優先しがちになりかねません。

そんな中、こんな声も聞こえてきそうです。「当行は、1次の農林漁業者とはお取引がないので、2次・3次の取引先をつなげようがない」と・・・。そうでしょうか。6次産業化のネットワーク化に向け2次・3次の取引先にできることは何か。

それは・・・私が県職員時代、ある地域金融機関と組んで行ったことです。次回に紹介します。

この記事を書いた人

長谷川 正之
長谷川戦略マーケティング研究所所長

1955年生まれ、長野県埴科郡坂城町出身。長野県信連勤務後、政策研究大学院大学で公共政策修士を取得。長野県や上田市で統一ブランドの創設や農産物マーケティングを推進。また、小学校PTA会長や地域活動にも積極的に取り組む。現在、中小企業診断士・公共政策修士として「長谷川戦略マーケティング研究所」を立ち上げ、企業や行政のマーケティング支援に従事している。落語鑑賞が趣味で、「上に立つより前に立つ」や「やってみなければ幸運にも巡りあえない」という言葉が好き。
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