6次産業化の進展は地域金融機関で決まる③

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「地域金融機関が、1次の農林漁業者とはお取引がないので、2次・3次の取引先をつなげようがない」といわれることは、そうでしょうか。

6次産業化のネットワーク化に向け2次・3次の取引先にできることは何か。それは・・・「取引先へのアンケート調査」と行政とつながることです。

「アンケート調査」でどうステップを踏むのか

2次・3次の食品製造・小売り・飲食等の関係取引先に「アンケート調査」をし、6次産業化に取組む意識調査をすることです。

どんな食材を求めているのか、加工で差別化出来ているのか。販売先としてどんな相手と組みたいか等です。商売上、具体的にイメージがつかめていない事業者も多いかと思います。そんな時は、初期的な講演会から入ってもいいと思います。

実際、県職時代には、ある金融機関のアンケート調査書作成のお手伝いをしました。私の中小企業診断士のノウハウが少しはお役にたったかなと思います。残念ながら調査結果を次のステップに活かす前に退職となり、どの程度の効果があったかはっきりとはわかりませんが、的を絞って相手先の6次産業化ニーズに応えていきたいですね。

その金融機関が企画したシンポジウムでは、県も協力して優良な経営者たちの事例紹介と、私が司会役でその皆様とパネルディスカッションを行い、好評でした。

そこの場では、農政部も加わり、1次の生産者や6次化に取組む事業者も紹介しました。農業者とつながっている県農政部の所管部署や現地機関をつなげたのです。行政も、自らの情報をどの程度提供できるのか。

個人情報の関係での限界もありますが、金融機関との連携のあり方について、胸襟を開いて情報交換すべきと思います。当然に、行政職員も熱いハートが求められます。

このように述べてきた私の話しに、じーっと我慢して読んでいただいた方の多くはこんな思いを抱いているのではないかと想像します。次の言葉です。

地域では行政の役割の方がもっと重要ではないのか」

いたって、まともな言い分かと思いますが、それに対して私はこう考えます。

「国の施策は変わります。ネットワーク活動交付金の補助率等もそうです。いいとは思いませんが、行政の予算に頼った取り組みは長続きしません。民間が自ら作っていく動きを見せていく中で、行政の機能や情報をうまく使っていくべきと考えます。民間出身の県職員としてそう考えます。

昨年、第三セクターや業界新聞社が主催した「県内6次産業化シンポジウム」のパネルディスカッションで、私は行政を代表して参加しました。が、1次・2次・3次の事業者から集中攻撃を受けました(覚悟はしていましたが・・・トホホです)。
批判の内容は、一言で言えば・・・

「国の施策はころころ変わってしまい、使えない」というものです。それに対する私の答弁は確かこんな感じでした。

制度の継続性がないのは、県や市町村から見てもおっしゃる通りです。ただ、国が行う6次産業化「総合化事業計画」の認定は、1次産業者が地域の2次(委託加工事業者)・3次(販売・飲食店等)の事業者と組んでの事業計画が妥当であると国が認めることであり、その作成経過で専門家の6次産業化プランナーから無料で多くのアドバイスを受け、学ぶことができます。

金融機関もその事業計画に基づき融資するなら、地域の活性化につながる融資と対外的にも言えるのではないでしょうか。そんな答弁に、少なくても参加していた金融機関の職員は頷いてくれました。

私が県内の地域金融機関8行に6次産業化の施策説明に回ったとき、同行した管内の現地機関(地方事務所)職員のほとんどは、初めて金融機関本店の会議室に入ったといっていました。また、他県から視察に来られたいくつかの県職員も、県農政部が金融機関に6次産業化の研修で回っていると話したら、一様に驚いていました。

金融機関と行政が地域でネットワークを組む

金融機関職員と県職員という両方の経験を持つ私としては、今回3回にわたってそこから学び考えたことを、少し長いブログで書きました。
行政と地域金融機関がネットワークを組むのはまだ始まったばかりですし、また、JAや商工会議所や観光協会などの皆さんとのつながりも地域で重要なことは言うまでもありません。

その中で、金融仲介機能をもつ地域金融機関は、他の金融機関や行政等とタッグを組んで、「このままでは地域は衰退してしまう」という危機感と6次産業化への熱い思いを事業者ともども共有し、「地域ネットワークを促進する役割」として融資(ゆうし)等の支援を積極的に行いリードして欲しいと思います。

そういう「勇姿(ゆうし)」が地域を活気づけます。
(私が役立つならお声掛け下さい)。

この記事を書いた人

長谷川 正之
長谷川戦略マーケティング研究所所長

1955年生まれ、長野県埴科郡坂城町出身。長野県信連勤務後、政策研究大学院大学で公共政策修士を取得。長野県や上田市で統一ブランドの創設や農産物マーケティングを推進。また、小学校PTA会長や地域活動にも積極的に取り組む。現在、中小企業診断士・公共政策修士として「長谷川戦略マーケティング研究所」を立ち上げ、企業や行政のマーケティング支援に従事している。落語鑑賞が趣味で、「上に立つより前に立つ」や「やってみなければ幸運にも巡りあえない」という言葉が好き。
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