映画「君の名は。」を見て地域創生を考える①

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一週間前に、映画「君の名は」を見ました。テレビの宣伝や昔の映画から触発されたわけではありません。たまたま空いた時間を何に使うかと考えた時、頭に浮かんだのです。

還暦を過ぎた男が1人でアニメ映画を見るのは、少し抵抗がありましたが、もし顔見知りに出会って問われれば、「監督が長野県出身者なので何となく」という答えを心に用意して映画館に入りました。

私が映画を見たり本を読んだりするのは、今の仕事や個人的関心事に関連して何かインスピレーションや解決策がふっと湧いてくるか、気楽に試したいからです

湧いてきたことは直接のストーリーとは関係ないことが多いので、自分の中だけに留めておくのですが、今回見終わった後、いろいろなことが頭に浮かんでは消え、何日か経って発酵してきた考えがあるので、書き記します。

見てない皆さんには分かり辛いかと思います。ストーリーはネットに出ていますが、早く見て下さい(笑)。さて、心に発酵してきたこととは、10年前に私がとったある行動です。

時間軸で考えるということ

県域の農協系金融機関に勤めて五十路を過ぎた頃、県内のある村の観光活性化支援のため地元農協に派遣されました。この村は、なかなか外からの人を受け入れないので、私も2か月持てばいいほうではと、農協職員にささやかれていました(後で知ったことですが・・・トホホ)。

私が農協本所に赴任して、初めて行ったところは、村の支所ではなく、役場でもなく、ある場所です。いろいろ考えた末のことです。皆さんなら、生まれて初めて行った村で、まず最初に行くのはどこですか・・・。

私が行ったのは・・・「お寺」です。

雨の降っている日でした。お寺に伺ったのは、一般に住職は村の歴史をよく知っていると思われるので、まず私を知ってもらい、効果的な情報収集先としてつながりたいと思ったからです(でもなぜ最初か・・・インスピレーションです)。

戸を開けて住職に村の観光支援に来た旨挨拶したところ、10分程つま先から頭のてっぺんまでジロジロと疑いの目を持って眺められ、「なぜ農協に派遣されてきたのか」「この村の観光をどうしようとするのか」「そもそも、あなたは何者なのか」等、尋問を受けました。

その緊張した検分の時間が過ぎると、住職の趣味のカメラやビデオを見せてもらい、自慢のDVDを貸してもらいました。まずは、信用してもらえたのです。この思い切った「お寺に行く」という行動は、後に私に思わぬ影響をもたらします。それは・・・

その後、支所や役場に行き、取引先の旅館・民宿に挨拶に行ったのですが、行く先々で同じことを言われました。どんな言葉か・・・

長谷川さんのことはお寺の住職から聞いています、ご苦労様です」。

外者をなかなか受け入れないことで有名なこの村で、行き会った住職が私という男を人的に担保してくれたと思うのです(変な男ではないよということでしょう)。1週間で受け入れらる道が開けました。

その後少したって、村の方たちが飲みながら話してくれました。なぜ私を受け入れてくれたのか・・・。「住職の話から、長谷川さんは、短期的な関わりではなく、この村をしっかり理解しようという人間だと感じられたので信用したんです」と。

その後、色々な村の方とよく酒を飲み人間関係を第一としたことから、村人以外は原則参加できないお祭り(国の重要無形民俗文化財)にも入れてもらい、大変貴重な体験となり、今日も親しくしてもらっています。

そこで、「君の名は」との関係です。この映画は、ある神社の神主の孫娘が主人公で(もう一人いますが)、この神社が歴史を行き来する重要な磁場になります。この町の歴史は、湖と神社がキーですが、私は「そこにしかないものの価値を歴史を踏まえて考えることが重要」というメッセージをこの映画から汲み取りました。

それも、若い男女2人の主人公が入れ替わりながらというストーリーで、観客の若い人たちをも巻き込んで歴史を旅します。

地域創生に歴史と人との絆が欠かせない

私は、中小企業診断士で、公共政策修士なので、地域起しや再生・創生(あまり単語にこだわらない性格なので併記=平気)について相談を受ける場合がありますが、この時間軸となる歴史と、地域住民の絆を重視する考え方で取り組んでいます。

ところが、現状の地域創生等の計画策定で見受けられるのは、時間的制約からか、その地域固有性はさーっと一通り触れた程度で、他地域等の成功事例を紹介しそこから学ぶやり方です。「その地で考え導く」という大切な時間を要する発酵工程を短縮・省略しています

これら現状で多くみられるやり方と、私が試みているやり方を、次回に簡単に記します。
それは、私がこだわった【お寺】や「君の名は」の【神社】に象徴される地域の歴史の軸たる存在=そこにしかない価値を見出し、どう地域再生に取り込むか、考えることにもなるからです。

(蛇足ですが、安心してください。私がお寺にこだわるスタンスは今も維持しています。そう、私は地元の菩提寺の護寺会最年少役員です・・笑)。

この記事を書いた人

長谷川 正之
長谷川戦略マーケティング研究所所長

1955年生まれ、長野県埴科郡坂城町出身。長野県信連勤務後、政策研究大学院大学で公共政策修士を取得。長野県や上田市で統一ブランドの創設や農産物マーケティングを推進。また、小学校PTA会長や地域活動にも積極的に取り組む。現在、中小企業診断士・公共政策修士として「長谷川戦略マーケティング研究所」を立ち上げ、企業や行政のマーケティング支援に従事している。落語鑑賞が趣味で、「上に立つより前に立つ」や「やってみなければ幸運にも巡りあえない」という言葉が好き。
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