6次産業化の現実的で安全な立ち上げ方

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「いつの間に、こんな在庫の山が・・・」

これ、6次産業化に取り組んだ農業者によくある話です。そして、、、、

「見なかったことにしよう。今は農作業で忙しいし~」
「良い商品だから、いずれ売れるだろう。あの人も、美味しいと言っていたし~」

となります。しかし、売れる気配があったのは最初だけ。その後は、全く売れません。そのうち、加工品が埃を被りはじめます。賞味期限が切れ始めます。

そして焦り始めます。原料代と加工賃と人件費をかけて作った加工品です。お金がかかっている訳です。いやでもそれは事実として残ります。

「う~ん、他の加工品なら売れるかも。」となり、また同じことを繰り返します。

これは一生産者として、6次化に取り組んだ当初の僕の姿です。何が悪いのでしょうか?何が間違っているのでしょうか?

売ることに時間を割いていない

農業者に販売活動に注力すべきだとアドバイスすると嫌な顔をされます。彼らは自分の商品に誇りをもっていて、口コミで勝手にどんどん売れていくと信じているのです。販売は自分がやる価値のある仕事ではないと考えています。まさかあなたも・・・。

よくあるのが外野の、と~ってもいい加減な意見を信じてしまうケース。

「これ美味しいです!この商品発売したら絶対、私買います!頑張ってください!」

友達や知り合い、そして場合によってはバイヤーまでもが軽々しく言います。

「そうか。やっぱり俺の商品の評価は高いぜ。フフフ。」

そして、銀行からお金を借り、加工設備を導入し、人件費をかけて、時間をかけて、完璧な6次化商品を、満を持してマーケットに投入します。

すると。。。

「あれ、全く売れへん。おかしいぞ。うちの商品を買うと言っていた人は、どこにいったのかな?」

となります。(そして、この記事の冒頭に戻る。)

この農業者の素晴らしい取り組みを、ホープ(祈り)マーケティングと呼びます。要するに、祈りの力で販売を促進しようという、卓越したマーケティング手法です。(笑)

販売するまで商品の価値は分からないという事実

6次化商品を発売する前の評価を、信じないほうがいいです。いくら自分が良いと思っても、誰かが絶対売れると言っても、そんなのまやかしです。加工品の良し悪しは、あなたの判断で決まるものではありません。

あなたの加工品は、お客さんに提供されるものであり、お客さんの判断で決まります。加工品の味だけでなく、デザインや価格ももちろん加味されます。

実際、販売するまで、良し悪しは分からないのです。

だからこそ、時間をかけて商品を完璧に作り上げる前に、なるべく早く販売を開始しなければなりません。なぜなら、お客さんからのフィードバックがあるまで、何が完璧かも分からないからです。販売する前に完璧を目指した時間は、無駄になることが大半です。

市場のフィードバックを素早くもらう裏ワザ

委託加工で、最小ロットを作ってもらうのも良いのですが、それはそれで時間とお金がかかります。小回りの利く加工業者でも、ジャムやジュースの最小ロットは、500個~になるはずです。20万円程度の初期費用がかかります。そしてたった500個でも不良在庫になるリスクがあります。

もっと良い方法をお教えしましょう。

一番お金を掛けずに、商品を市場に出して、フィードバックをもらうやり方です。実際、僕もやっていた方法です。

それは、あなたが作ろうと考えている商品と、類似商品を他から仕入れて販売する、という手法です。少量を仕入れます。50個くらいでもよいしょう。できれば表ラベルは、あなたのオリジナルラベルを貼ります。

それをまずは既存のお客さんに販売してみます。「超試作版ですが」と言います。そして売れるかどうか確認します。改良点について、お客さんの意見を貰います。

場合によっては、これを何回か繰り返します。フィードバックが十分に得られれば、次はあなたの商品を作る番です。最小ロットを委託加工、そしてまた販売してみて、お客さんの意見をもらいます。これを繰り返せば、いずれは量産体制へとつながります。

紆余曲折してきた僕が今振り返ってみると、この手法が一番で安全で着実です。

-田中良介

この記事を書いた人

田中良介
田中良介
Innova Market Insights社の日本カントリーマネージャー。世界の最新トレンドとマーケティングに精通しており、食品企業の商品開発やマーケティング活動を支援している。自身もかつては食品企業で、苦労しながら商品開発と販売をしていた経験あり。 日本と世界をつなぐ架け橋となり、食品企業のレベル向上に貢献することがミッション。 海外での講演活動にも精力的に取り組む。
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