直接アプローチの威力 (農業者の商談術)

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農業者が抱える誤解の話をします。商談に対する誤解です。

この誤解があるために、チャンスを逃してしまう農業者がいます。かつて僕もそうでした。展示商談会へ出るためのセミナーにいくと、間違った情報が教え込まれます。

今からこの誤解を解いていきます。他のセミナーで言われていることと、違うことを言うかしれません。でも僕の体験を踏まえた事実です。

農業者が抱える2つの誤解

誤解その1:
商談は、展示商談会に出て、段階を踏んで進めるのが一番効率的である。

誤解その2:
バイヤーは数カ月先の企画商品を探している。(農業者が)商談タイミングを逃すと、次のチャンスは数カ月後となる。

僕もそれらを信じてました・・・

例えば、ゴールデンウィークに向けて商品を入れ込んでもらうためには、年末には商談をして、企画を進めないといけないと思っていました。クリスマス商戦向けであれば、春にはバイヤーさんにアプローチをかける必要があると思っていました。

そのタイミングを逃すと、もう遅い・・・とあきらめてました。

またバイヤーさんにアプローチする方法として、展示商談会への出展することが一番だと思っていました。多くのバイヤーさんに出会えますし、段階を踏んで商談を進められるからです。

今振り返ると、大きな機会損失であったと思います。これらを打開する方法とは・・・

直接アプローチ、直接商談

前職時代、農園の売上が伸びず、6次化の加工品が不良在庫となり、さらには雹が降って作物が大打撃を受けた年がありました。農園は瀕死状態でした。営業部長をしていた僕は責任を感じて、もっと瀕死状態でした。

もう自分の居場所はないと思い、辞める覚悟をしました。展示商談会に出る資金はなく、売り上げを伸ばす手段も絶たれているように感じました・・・

瀕死状態の中でやけくその、営業アプローチを取りました。

それは、スーパーや百貨店の購買部の電話番号をインターネットで調べて、電話するというアプローチ。なんのコネも、なんの紹介もありません。

「もしもし、私、xxx農園のタナカと申します。弊社で作っているブドウの加工品を紹介させていただきたいと思い、お電話しました。一度、商品サンプルをもって、ご紹介に伺いたいと存じます。よろしいでしょうか?」

すると、大半の購買部は「じゃあ、xx月xx日のxx時に来て。」と言ってくれました。

瞬間で商談成立、そして来週納品

訪問すると、2人のバイヤーさんが対応してくれました。僕は必死に商品説明をしました。バイヤーさんは、

「商品が良いことは分かったけど、いくらなんでも高いなー。」とう反応でした。値段が高い理由を説明しようとしたけど、まともに聞いてもらえませんでした。

そこから、バイヤーによる説教が始まりました。商品のダメ出しをトコトンされました。僕は聞くことしかできませんでした。もう無理かと思い帰ろうとしたとき、バイヤーさんが・・・

「残りの在庫全部持ってきて。納品は来週。大丈夫だよね?契約書類は後追いで。」

え?全部ですか?まじで?

決定権のあるバイヤーに当たると即決となる

その商談席にいたのは、実は決定権のあるバイヤーさんでした。常務クラスの人でした。厳しいダメ出しをされたのは、商品を色んな角度から検証する、バイヤーさん特有の口癖みたいなものだったのです。

確かに、このクラス人と商談できたのは、運が良かったのかもしれません。

しかし展示商談会にこのような決定権のある人が来るかというと、なかなか来ないような気がします。新人クラスのバイヤーさんが来ることも多いです。そのバイヤーは、商品情報を会社に持ち帰り、稟議書を上司に上げます。上司は、またその上司に上げます。決定権のある人にたどり着くまで、時間がかかるわけです。会社勤め経験のある人なら、このもどかしいプロセスを理解できるでしょう。

それに比べて、直接購買部に乗り込む直接アプローチでは、運が良ければ決定権のある人が同席します。その会社内で商談するわけですから、同席の確率が高まります。そして、一発で商談がきまります。来週納品となるわけです。

なにも展示商談会が悪いと言っている訳ではありません。しかし、直接アプローチは、あなたの可能性を引き出す強力な手法だということも、覚えておいてください。

-田中良介

この記事を書いた人

田中良介
田中良介
Innova Market Insights社の日本カントリーマネージャー。世界の最新トレンドとマーケティングに精通しており、食品企業の商品開発やマーケティング活動を支援している。自身もかつては食品企業で、苦労しながら商品開発と販売をしていた経験あり。 日本と世界をつなぐ架け橋となり、食品企業のレベル向上に貢献することがミッション。 海外での講演活動にも精力的に取り組む。
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