グローバリズムは成長鈍化をもたらす①

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トランプ次期大統領誕生で、世界中が大騒ぎしています。テレビに映るこの大統領候補の特異な言動とパフォーマンスに違和感を感じつつ、一方で報道されたアメリカの予想以上の疲弊を見て、私が心に浮かんだことは、次のことです。

「アメリカが世界に向け推し進めてきたグローバリズムがなぜ自国をこんなにまで疲弊させてしまったのか」また、「日本政府が前のめりにTPPを進めていることが何をもたらすのか」です。

それまでは、堤未果著「沈みゆく大国アメリカ」「㈱貧困大国アメリカ」(自治体の破綻が急増する他、ショッキングな内容満載)や町山智浩著「アメリカ人の半分はニューヨークを知らない」などの著書を読み、アメリカの経済・社会疲弊の実態について関心を持っていましたが、著者は、少しデフォルメして発信しているのではと少なからず思っていました。

しかし、今回の選挙の結果、アメリカの白人中間層中心の不満がこれほど大きいこと(今回のトランプ現象は「アメリカの白人中間層の革命である」といった表現もネットでみられます)を、自国内のメディアや識者のほとんどが読み間違えました。

今後の世界はどういう方向に動いていくのか、私は既存メディアや識者に一方的に依存せず、今こそ自分で考えることが必要だと思った次第です(還暦を過ぎた身として、当然ですが)。それが、日々の仕事を行う上でも基軸になると思うからです。

そこで、今私たちが直面しているグローバリズムによる自由貿易推進、TPPの締結という一連の流れを、少し偏った見方でもいいから疑い批判的に捉え、自分が納得できるよう整理しようと思います。その上で、さらに情報を収集し考えを修正していくという取組み方です。そこでの基本的な問いは次のものです。

「グローバリズムは何をもたらすか」

グローバリズム・自由貿易関連では多くの本が出ていますが、その中から何冊かの本を読み(計10冊くらい、読むのに時間がかかりブログ更新が遅れました、すいません)、ネット等での議論もある程度踏まえ、今時点での私の整理を一言で言うと・・・

「グローバリズムは、成長戦略ではない、成長を鈍化させるものです」

できるだけ経済専門用語を用いず、常識的なシンプルな考え方をしたいと思います(私は難しい専門的な考え方ができません、はっきり白状いたします・・・トホホ)。わたくしの考えるそのロジックは・・・(参考図書はこのシリーズの最後にをあげます、それまではお待ちください)

実際に先進国全体の成長率をみてみると鈍化しています。

1960年~1980年の平均は3.2%ですが、グローバル化した1980年~2010年の平均は1.8%で半減しており、客観的には、「グローバリズムは成長を鈍化させる」というものです。一般常識と異なると思いますが、どうしてなのでしょうか。以下理由をあげます。

「経済成長を鈍化させるロジック」

グロ-バル企業(多国籍企業)は、短期的利益を追求します。

当然、株主(大きなファンド中心)から短期的な利益を求められます。安価な製品で輸出国の市場を奪取しようとし、国内外の価格競争が激化します。そうすると、手っ取り早く人件費を抑制すべく労働者の賃金を抑え雇用も流動化させ(表向きは労働者の選択の自由確保といいますが・・・)、短期間で利益を得ようとします(=人件費という固定費を変動費化するといいます)。労働者の所得は上がりません

長期を見通した取組みは回避されます。

他方で、グローバル企業は、時間のかかる設備投資や研修、リサーチといったことが疎かになり長期的な成長に欠かせない生産性の向上や、所得を伸ばすための長期的なコミットメントも生まれ難くなります。よって技術開発も進まず、目先のパイの奪い合いだけが激化し、パイ自体を大きくしようとしません

■以上から、労働者の所得は上がらず、需要不足となり、成長は鈍化します。

デフレ時にはさらに物価が下がることになり、農家のみならず経済全体が打撃をこうむります。経済成長を鈍化させてしまいます。

グローバル企業は安い賃金労働者求めて世界を移動します。

グローバル企業は、人件費を抑えられなくなれば、より安い労働力を求めて他国へ工場を移転します。そして、グローバルな賃金引き下げ競争が持続されます。アメリカの製造業(自動車や鉄鋼など)に携わる白人労働者等が、中国や移民労働者に仕事を奪われ失業増加(白人死亡率が上昇)をもたらしている実態は、今回の選挙戦で世界に報道されました。

■一方、グローバル企業の経営者は莫大な利益を得ており、格差は拡大。

経営者は労働者の賃金抑制と人員調整により短期的利益を獲得することで、株主に配当や株価上昇の恩恵を提供し、その見返りに自身も莫大な報酬を得ています。ますます貧富の拡大による2極化が世界レベルで進んでいます。(2015年:世界人口の貧しい半分にあたる36億人の資産と、資産上位62人が保有する資産と同等の額。)。

ここまで述べてきて、「グローバリズムが経済成長を鈍化させるという仕組み」を企業レベルでは理解いただけるかと思いますが、さらに経済成長を鈍化させる重要な要因があります。その説明は次回に。

この記事を書いた人

長谷川 正之
アグリフードビジネスアドバイザー

□1955年生まれ、長野県埴科郡坂城町出身。慶應義塾大学法学部政治学科を卒業後、長男としての責任を感じ故郷・長野県の農林系金融機関に就職。在職中は、融資や資金証券運用業務ほかに携わる一方、企画業務では「中小企業診断士」の資格を活かし経営戦略(経営理念の策定含め)を立案し事業展開を図る。54歳時に、「上司の顔より真理の顔を」という言葉に出会い、「ソロで力量を磨き、パーティーを組んで更に高い目標に挑戦していく!」意識を自覚。思い切って選択定年で退職。
□55歳で一念発起し、政策研究大学院大学政策研究科まちづくりプログラム(修士課程)に学び、ダントツの高齢者ではあったが無事「公共政策修士」を取得。 
□56歳で長野県庁の民間登用試験を受け、任期付職員として採用(課長級:農政部農産物マーケティング室企画幹)。県農畜産物の統一ブランド「おいしい信州ふーど(風土)」を玉村豊男氏と共に創設し普及。6次産業化推進や「信州ワインバレー構想」策定等にも関わり、任期満了につき退職。
□61歳で上田市農林部農産物マーケティング推進室・専門員に採用。「発酵で輝く上田のまちづくり」を提唱し、民間の「信州上田・発酵の女学校」等の設立を支援。上田市の統一ブランド「信州上田なないろ農産物」を創設し、地産地消を強力に推進。講演では「尊農上位論」を熱く説く。現在、ながの農協非常勤監事も務める。
□地域活動として、地元小学校PTA会長、さらに当時の小学校連続殺傷事件発生に際し地域で自主防衛すべく歴代PTA正副会長会(ビーナス会)を組織し現在会長。「地域の子どもは地域で育てる」を合い言葉に実践中。春・夏休みには、町内児童館で本の読み聞かせを楽しく行っている。
1995年阪神淡路大震災時には、友人の落語家や中学同級生たちといち早く復興支援寄席を開催。以降、高齢者福祉につながればと坂城寄席を継続開催中(現在休演)。地区の自治活動にも積極的に関わり、来年は区長を担う。コロナ禍や自然災害多発のなか、自治会(区会)が自治体(町行政)を構成する確かな「共同体」の仕組みを作りたいと意欲を持つ。
今後、「中小企業診断士」「公共政策修士」の知識・経験を活かし、さらに地域に貢献したいと前を見すえる。紆余曲折の人生のなかで培った多彩な人脈が自らの強み。
□趣味は落語鑑賞。好きな言葉として 「上に立つより前に立つ」 「スピードが感動を呼ぶ!」「笑いで輪(和)来!」「他人の言葉を気にして生きるには人生は短すぎる!」。
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