グローバリズムは成長鈍化をもたらす②

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「グローバリズムが経済成長を鈍化させるという仕組み」について、引き続きいくつかの要因をあげてみます(単純にしか書けませんが)。

グローバルマネーの影響

規制無き金融自由化は、「グローバルマネーが利潤を求めて世界を瞬時に移動すること」を担保します。それゆえに不安定化し、結果コストが増加します。レバレッジの効いた投機マネーは、株式・商品市場に投入され、それも「おいしい投資先」に集中してバブルが膨らみ、何か問題が生じたりよそに「おいしい投資先」が見つかるとすぐ移動してバブルが崩壊します。

この株式市場のバブル形成・崩壊は、その国の経済を直撃します。安定的成長の阻害要因となります。(リーマンショックでの世界の株価暴落他)。

為替変動リスク

政府の言う輸出促進に関して、輸出を検討する企業は、関税率よりも考慮しなければならないことがあります。それは・・・為替変動リスクです。自由貿易は、為替変動の影響を大きく受けますが、為替損失等のコストが増加し、企業の収益に大きな影響を与えます。グローバル企業でない限り為替ヘッジなどコストがかかってできません。

ここで、通説のように言われる「日本の農産物輸出はオランダを見習うべき」という主張について一言触れておきます。これは、為替リスクについての認識がないと言わざるを得ません。どういうことか・・・

オランダの農産物の輸出先は8割がEU加盟国で、関税がなく為替リスクもありません。日本の輸出企業を考えてみれば分かるように、為替は輸出にとって最大の懸念材料であり、日本とオランダでは置かれた条件が違い過ぎるのです。そのことはほとんど触れられていません。

さらに、世界経済の全体図を眺めてみます。

グローバリズムがもたらした需要不足

自由貿易で、中国や日本が輸出国としてやってこれたのは、世界に新たな需要があり拡大していたからです。では、その需要はどこが引き受けていたのか。お分かりでしょう・・・

アメリカの過剰消費のおかげです。米国がドル紙幣を刷って、3億人という消費者がサブプライムローンという仕掛けで消費を続けてきたからです。世界規模で需要調整をしていたのは8,000億ドル(2015年)の貿易赤字を抱えているアメリカでした。その仕掛けが2008年のリーマンショックで崩れ、地球全体が構造的な需要不足に陥ってしまいました。

少なからずのアメリカ国民の家計は打撃を受け、またバブル崩壊のたびに企業はリストラを進め中間層が最大の被害者になりました。一方、ウォール街の金融資本は公的資本で救済され、2極化がさらに促進されたと思います。これがウォール街とつながっているヒラリー・クリントンに対し、嫌クリントンの流れの起点になったのではないでしょうか。

グローバル企業の行動原理は、自分たちの国内市場の為に生産するのではなく、規模の利益を求めて大きな外部市場へ輸出する為に生産する道を選択します。最大利潤を求めるため、賃金を純粋なコストとみなし、内需に貢献する要素」であることを止めてしまいます。そして、企業は賃金コストの削減の論理に入っていきます。

あらゆる国のあらゆる企業が次々に賃金コスト抑制の論理に入っていく世界、言うまでもなく需要が世界規模で不足していきます。

自由貿易は互恵的か

一般的には、自由貿易はいいことといわれる理論的根拠は、リカードの比較優位(比較生産費説)があげられます。比較優位の商品に特化した方がお互いの利益=互恵的になるというもので、池上彰さんも常識として解説しています。

が、この大原理には前提条件があります。それは・・・

為替が固定相場であること、完全雇用の状態であること、将来の優位産業を潰さないことなどです。そして特に重要なことは次の事です・・・

完全雇用の世界とは、世界市場のパイが需要増により拡大している時であり、どの国もプラスになります。しかし、世界のパイが縮小(需要不足)していく時は、パイの奪い合いが始まり、損だけする企業・国も出てきます。

経済学者は、市場全体が膨らんでいるときと縮んでいるときの区別をしないといわれます(エマニュエル・トッド他の主張)。私は、パイが縮んでいる時は、互恵的ではないと考えます。

ケインズの「貨幣愛」

ケインズによれば、「資本主義」とは、貨幣を稼ごうとする「貨幣愛」をもった人々の本能に強く依存したシステムのことです。現在の時点で何かを消費する満足度は、将来の時点で何かを得るという満足度と、ある意味では均衡します(流動性プレミアム)。

しかし実際には、貨幣を保有し過ぎれば、現在よりも将来の満足度が勝ちすぎて、「貨幣愛」となり、実体経済のほうに貨幣がとんと回らなくなります。

特に、景気の見通しが悪い不況時は所得を受け取っても貨幣を貯め込んでしまう現象がおきます。アメリカの経済学者サムエルソンは、「不況期には貨幣愛が資本主義を停滞させる」と言っています。ケインズ的に言えば、貨幣が回らず、有効需要の減少となります。日本の不況の原因は、この一言に尽きるでしょう

以上、グローバリズムについて、何冊かの関連本を読み、考えてみました。次回は①②のまとめと、私自身が今後どのような立場に立って考え行動していくかを、「信州ワインバレー」「ドイツの哲学者ハンナ・アーレント」を絡めて述べてみます。さてどんな展開になるやら・・・。

この記事を書いた人

長谷川 正之
アグリフードビジネスアドバイザー

□1955年生まれ、長野県埴科郡坂城町出身。慶應義塾大学法学部政治学科を卒業後、長男としての責任を感じ故郷・長野県の農林系金融機関に就職。在職中は、融資や資金証券運用業務ほかに携わる一方、企画業務では「中小企業診断士」の資格を活かし経営戦略(経営理念の策定含め)を立案し事業展開を図る。54歳時に、「上司の顔より真理の顔を」という言葉に出会い、「ソロで力量を磨き、パーティーを組んで更に高い目標に挑戦していく!」意識を自覚。思い切って選択定年で退職。
□55歳で一念発起し、政策研究大学院大学政策研究科まちづくりプログラム(修士課程)に学び、ダントツの高齢者ではあったが無事「公共政策修士」を取得。 
□56歳で長野県庁の民間登用試験を受け、任期付職員として採用(課長級:農政部農産物マーケティング室企画幹)。県農畜産物の統一ブランド「おいしい信州ふーど(風土)」を玉村豊男氏と共に創設し普及。6次産業化推進や「信州ワインバレー構想」策定等にも関わり、任期満了につき退職。
□61歳で上田市農林部農産物マーケティング推進室・専門員に採用。「発酵で輝く上田のまちづくり」を提唱し、民間の「信州上田・発酵の女学校」等の設立を支援。上田市の統一ブランド「信州上田なないろ農産物」を創設し、地産地消を強力に推進。講演では「尊農上位論」を熱く説く。現在、ながの農協非常勤監事も務める。
□地域活動として、地元小学校PTA会長、さらに当時の小学校連続殺傷事件発生に際し地域で自主防衛すべく歴代PTA正副会長会(ビーナス会)を組織し現在会長。「地域の子どもは地域で育てる」を合い言葉に実践中。春・夏休みには、町内児童館で本の読み聞かせを楽しく行っている。
1995年阪神淡路大震災時には、友人の落語家や中学同級生たちといち早く復興支援寄席を開催。以降、高齢者福祉につながればと坂城寄席を継続開催中(現在休演)。地区の自治活動にも積極的に関わり、来年は区長を担う。コロナ禍や自然災害多発のなか、自治会(区会)が自治体(町行政)を構成する確かな「共同体」の仕組みを作りたいと意欲を持つ。
今後、「中小企業診断士」「公共政策修士」の知識・経験を活かし、さらに地域に貢献したいと前を見すえる。紆余曲折の人生のなかで培った多彩な人脈が自らの強み。
□趣味は落語鑑賞。好きな言葉として 「上に立つより前に立つ」 「スピードが感動を呼ぶ!」「笑いで輪(和)来!」「他人の言葉を気にして生きるには人生は短すぎる!」。
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