6次化「メープルサイダー物語」 その1
柱が折れたとき
―自然災害等によるリスク管理―
第1次産業は、大自然との共存です。6次化も、1次がなければ、2次も、3次もできません。そんな1次産業ですから、大自然の力で、大きくもなればゼロになることもあります。
東北の農業に携わる私たち生産者は、あの東日本大震災3・11でそのことを経験しました。
さらに、便利さを追求した結果が、人間の力ではどうすることもできない大自然の災害以上の大事故を起こすことも知りました。
これから農業を始めようとする生産者の農地の選び方にも、新たな条件が加わったように思います。近くに(とくに30km圏内に)原子力発電所がないことでしょうか。
まだ、事故は起きていませんが、福島県以外の場所も心配です。福島と同じ事故はあってはならないと心から思います。私もあの日から、順調に伸びていたキノコ生産を中止することになってしまった生産者の一人です。
私の農業経営の太い柱は「キノコ」(シイタケ・キクラゲ)でしたから、その柱が折れてからは、本当にたいへんな思いをしました。今回のような放射能汚染は考えてもいませんでしたから・・・。
キノコ生産を始めたときに私たちのこだわりをなんとか証明できるものがほしいと考え福島県初椎茸JGAP認定農場となりました。
注:JGAP(ジェイ・ギャップ)は、Japan Good Agricultural Practice(日本の良い農業のやり方)の略
JGAP認証の椎茸は東京のミシュランの星のついた料亭・レストランなどとの取引もあり、そのときのリスク管理といえば、JGAPに基づいた項目のものしか頭にありませんでした。放射能汚染という項目はなかったように思います。
あの事故の後、海外取引のキャンセル、東京のお得意様からのキャンセル、地元の売り場からの撤去、県からの生産停止指示・・・モニタリングを事故後3ケ月目から始め、安全性を証明しても、風評被害というものを払拭することはできませんでした。
そうです。農業にも「リスク」があるのです。そのことを、十分に考えて、農業経営をすることがとても、とても、重要です。
農業のリスクはこのような自然災害ばかりではありません。生産者の健康管理もすごく大切なことです。生産物の管理も消費者の方々に届くまでには、リスクがたくさんあります。リスク・リスク・リスク・・・です。
話を経営の柱に戻しましょう。
柱は1本では、屋根はのりません。2本でも、屋根は不安定です。3本柱があるとなんとか、屋根はのります。でも、4本のほうが安定しますし、さらに5本、6本と柱があれば、かなり安定します。
うちはキノコ生産と、米を少しつくっている小さな専業農家でした。そんな小さな専業農家の大黒柱のキノコの柱が折れてしまったのですから、屋根は落ちかかっています。
なんとか、米で柱を立てようと思い、価格の安い米の6次化の可能性を追求しました。
米の6次化は、おかゆ缶詰・ポン煎餅・ポン菓子・玄米茶・玄米食パン・玄米アンパン・玄米クルミパン・大麦&玄米パン・米粉・玄米粉・発芽焙煎玄米粉等・・・。
現在は、本みりんまでつくっています。2次加工が外注のため、儲けはでにくいですが、この柱も立てていきたいと考えています。まだまだ、柱の太さも数も足りませんが・・・。
話を5年前の事故の後に戻します。当時、
私たちは、福島県でのキノコ生産をあきらめ、車で5分の新潟県にハウスを移転して新潟県産のキノコを生産しようと考えていました。この場所から、離れるということは、この家も田圃も山も手入れはできなくなるということになります。
ある日、1枚のファックスが届きました。となり町の知人からでした。内閣府の復興支援の事業の合同説明会があるからぜひおいで下さいとのこと。わざわざ連絡をくださったので、行かないと悪いかな?と参加しました。いくつかの組織団体が説明をしました。その中で、一番支援金額の多いNPOの起業企画コンベティションに応募して、見事、起業支援対象者として、認定を受けました。
ここを去り新潟へ行くのではなく、ここでできる何かを起業できないか・・・そのとき、ひらめいたのが「縁側でカフェをすること」だったのです。縁側カフェを起業することになり、さらにこの起業がもう1本の柱「メープル」につながっていくこととなるのです。
縁側カフェのメニューに「ホットケーキ」を出すことにしました。来ていただいた方に、ホッとしてほしいという思いからでした。ホットケーキに何をかけようか?メープルシロップがいいね!どこのメープルシロップを仕入れる?カナダ産しかないの?国産は?
この流れで、国産のありそうな埼玉県秩父と山形県金山町を訪れることになったのです。採取の研修を受け、うちでも採取できそうだねということになり、4年前に試してみたら採取に成功!ということになったわけです。
人生は、不思議なものですね。たぶんご先祖様たち(47名おいでです)が、私たちに新潟県に行かないでここにいてほしい。そのためにキノコ以外の柱を立てさせようと考えられたのでは・・・と思います。
キノコの柱は折れましたが、今、米と縁側カフェとメープルの柱を建設中です。でも、まだまだ細いので、これから、どんどん、太くしていかなくてはいけません。
柱が折れるというリスク・・・たぶん、なかなか想像することはできないと思いますが、折れることもあるのです。
もしも、柱が1本折れてしまったときどう対処するかも、農業をやっていくうえでとても必要なことのように思います。
6次産業は、いろいろな可能性がありますから、柱を3本以上、立てておいてください。安心・安全は生産物だけではなくて、農業経営にもいえることです。
以下参考HP
http://dic.nicovideo.jp/a/%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%82%AF
リスク(risk)とは、「危険」「恐れ」「不確実性」「未来において損害が発生する可能性がある」などを表す英単語である。英語では「デンジャー(Danger)」が「そこにある危険」全般を表すのに対し、「リスク(risk)」は「ある行動や選択を行った場合に発生しうる危険」のことを意味する。即ち「自己責任により冒す危険」とも言い換えることができる。
リスクマネジメントは以下のHPで
http://www.ms-ins.com/pdf/business/rm/rmguide.pdf
つづく
(文責 佐藤昭子)
この記事を書いた人

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1956年東京生まれ東京学芸大学教育学部美術専攻工芸専修
公立中学校美術教師を23年勤め早期退職
2002年4月より夫の故郷福島県西会津町奥川にて専業農家となる。6次化による商品開発(焙煎椎茸「まぜらんしょ」・椎茸野草茶「會津ティー」・椎茸ふりかけ「おかわり」など)
2010年7月農業法人株式会社キノコハウス設立 翌年3月11日東日本大震災にて被災キノコ生産を中止する。
2013年自宅縁側にて「縁側カフェ」起業
メープル樹液採取成功
2015年メープルサップ(樹液)商品化
にいがた6次化大賞日本食糧新聞社賞受賞
2016年メープルサイダー商品化
フード・アクション・ニッポン・アワード2016入賞
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