「ソクラテス的」アドバイス

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県内のA村直売所へのアドバイスを求められ、役場職員と直売所店長を訪ねました。そこで、直売所の「食事」を盛り上げることで意見が一致。そこで店長が言いました・・・

店長の依頼内容

これから、「すいとん(水団)」を村の食として売り出すんで、毎週直売所に来てアドバイスしてほしい。
「すいとん」とは、小麦粉の生地を手でちぎって丸め、匙(さじ)ですくうなどの方法で小さい塊にして、汁で煮た料理です。今は仕事を抱えているので毎週は無理と返事し、どう対応するか検討するとして別れました。
その後、役場職員と話した内容は次の通りです。

私の対案

私が片手間で月2~3回来て、村の食堂で「すいとん」をはじめ料理メニュー作りのアドバイスをしても、成果は出ないと思うこと。それよりも、この村の人口は2000人を切ってきたことから、急がば回れで、やることが有るのではないか。

続けて私が出した対案は・・・ 
3つの能力のある若い人を3~4人集めてほしい。持っている能力は

危機感を持っていること
尖がっていること
行動力があること

この皆さんと徹底議論をして、村の食を何に特化しアピールするか提案し実行する、というものです(私の経験上、3つの能力のどれかを持つ人はタッグを組むと力を発揮します)。

なぜこんな対案を出したのか。この村の活性化で、片手間の「一人アドバイス」をしても対症療法で終わってしまう。それよりも、時間はかかっても、自ら考え行動する村人達を支援したい。期限は1年、月2回ほど、後はメールでの意見交換・・・。

私は、村人の中の「自ら考え行動する人達」に対してバックアップすることしかできないと考えるからです。そもそもこの村はどう在りたいのか、近隣の村とどこが違うのか、なぜ村の食が大切なのか、どこに着眼して特化するのかなどを徹底して対話・議論したいのです(本来なら村長が主導すべきと思いますが)。 外からの小手先のアドバイスはかえって弊害です。

私がこのアドバイス中心の行動を、敢えて「ソクラテス的」アドバイスと表現する理由は・・・

「ソクラテス的」アドバイス

ソクラテスは生涯書物を書かず、アテナイ市民と対話し、生きる目的や真実等を問い議論した哲学者です。私は、このブログでも書いていますが、「対話によって互いに考え突き詰めていく」ことが、今こそ重要と思っています。

特に、尖がっている人は一般に周りに受け入れられず孤立していることが多いのですが、その人ならではの鋭い感覚があります。ソクラテスは、これはという人がいれば訪ねて対話していますが、私もいろんな方達と出会い、対話しつつ学びたいのです、年齢に関係なく(「唯一の真の英知とは、自分が無知であることを知ることにある」ソクラテス)。

また、ソクラテスの言葉に賢者は複雑なことをシンプルに考える」があります。議論を重ね余分なものをカットしていくとシンプルな考えに至り、他の村人も参加してもらえる環境を作っていけると思います。

一方、今はやりの地域創生のやり方は、ポストイットを使い多くのアイデアを出して集約しまとめていくものです。しかし、本質には迫れません(このことは以前のブログ『映画「君の名は。」を見て地域創生を考える②③』で書きました)。

その意味で、出来る限り「既存の出されている活性化策等を問い、本質的な議論をしたい」という思いも「ソクラテス的」の言葉に込めています。その上で、こっそりいえば、この機会に私の「ソクラテス学習」を加速したい、というのが素直な気持ちです。

役場担当者は、副村長、そして村長の同意が得られるか話してみるとのことです。しかし、正直に言って、私の対案を受け入れてもらうのはまず無理でしょう。なぜなら・・・

村長たちは間違いなく「村に尖がった人などいないし、そんな酔狂なことに反応する人など皆無なので、すぐ成果の出る”すいとんの売上増加策”のみアドバイスしてほしい」と言うと思うからです。

そもそも私には、村の特化した食として、「まず、すいとんありき」ではそのストーリーが見えませんし、私が「関わりたいという思い」も生まれてきません。もっと足元にある価値に光を当てたいのです。その光を当てる「足元の価値」は何か、私なりにつかんでいるのですが・・・。

「ソクラテス」を欲する個人的理由

今回、浅学の身の私が、この機会にかこつけて哲人「ソクラテス」をなぜ学ぼうとしているのか、自分ではウスウス気づいています。

ソクラテスの言葉に「とにかく結婚したまえ。良妻を持てば幸福になれるし、悪妻を持てば哲学者になれる」があります。

そう、このところの私は「哲学者」の気分なのです(妻には内緒です)。

この記事を書いた人

長谷川 正之
長谷川戦略マーケティング研究所所長

1955年生まれ、長野県埴科郡坂城町出身。長野県信連勤務後、政策研究大学院大学で公共政策修士を取得。長野県や上田市で統一ブランドの創設や農産物マーケティングを推進。また、小学校PTA会長や地域活動にも積極的に取り組む。現在、中小企業診断士・公共政策修士として「長谷川戦略マーケティング研究所」を立ち上げ、企業や行政のマーケティング支援に従事している。落語鑑賞が趣味で、「上に立つより前に立つ」や「やってみなければ幸運にも巡りあえない」という言葉が好き。
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