熱狂的なファン

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過日、市内の地産地消協議会直売所部会の主催で、熊澤南水さんの「南水ひとり語り」が開催されました。南水さんをご存知の方は多くないでしょう。私も知りませんでした。

なぜ、直売所部会が演劇を、それも「ひとり語り」を主催したのか。取組み経過には、マーケティングを考えるヒントがあると思うので記します。

急な話

昨年末頃、この公演の話が持ち上がりました。1月23日の開催には1カ月もありません。

話を直売所部会に持ち込んだのは、以前ブログに書いたある直売所の副組合長さん(古希を過ぎでも若々しいレディ)です。思いを情熱的に話されました。

以前、南水さんのひとり語りを聴き、心が震えるほど感動した。その後、何度か聴いたが、新たな感動を覚え、是非、生産者やお客様たちに聴いてほしい。直売所単独では実現できないので、協議会直売所部会で主催してもらえないか。

普段なら、あまりに唐突で無理!と即答するところですが、次の一言を聞くと関係者一同、ウ~とうなりました。

外堀を埋めてある

「もう、南水さん本人の日程と会場は押さえてあります」。
もうそこまで進んでいるのか。

この後の直売所部会長の判断が早かった。
「大阪城の外堀は埋められたということですね」
「ならば、やるしかないでしょう」。
皆、真田丸の幸村の戦う心境です。

その日からの取組みは怒涛の勢いで、チラシづくり、チケット作成、それぞれの直売所がお客様に前売り券を販売し、当日を迎えました。
部会関係者と私を含む市役所職員が役割分担し、平日にも関わらず会場はほぼ満席。ホッと一安心。

会場の中高年の皆さんは、ひとり語りの「お吟さま」を咳一つせず、集中して聴いてくれました。終演後、涙を流している方達もおり、皆さんは大満足で帰られました。

もちろん、一番満足していたのは副組合長さんです。無理を言っての実現に責任を感じていましたから。この成功は、直売所部会の結束を高めました。協同でやる意義です。

熱狂的なファンは営業マン

この公演は、副組合長さんという一人の熱狂的ファンがいたからこそ実現しました。
ひるがえって、この熱狂的なファンは、私たちが日々関わっている顧客志向のマーケティングでも、欠かせない存在です。

「1人の熱狂的なファンが、多くのお客様を呼んでくる強力な営業マンになる」のです
10,000人の一般客よりも、100人の熱狂的なファンが大切といわれるゆえんです。

熱狂的なファンのつくり方

南水さんは、同じ話を何百回となく講演しており、客様の反応を実感し修正し、お客様が満足するまで努力を積み重ねています。

同じように、農産物の商品も、お客様と対話をし、クレームを含めそこからヒントを見つけ、より良いものを見出していく努力しかない、と思います。そのなかから、熱狂的なファンが現れます。

今回の協議会による取組みは、単体の直売所ではできない協同による「顧客満足度アップ策」になったと思います。

農閑期のこの時期に、関わる生産者や消費者に演劇で心身を癒してほしいとの思いは、それぞれの直売所にプラスに返ってくると思います。

会場を出る参加者に、お土産として直売所のジュースを渡し、またの来店を促したことは言うまでもありません(観劇が感激につながっていればと思いつつ・・・)。

この記事を書いた人

長谷川 正之
長谷川戦略マーケティング研究所所長

1955年生まれ、長野県埴科郡坂城町出身。長野県信連勤務後、政策研究大学院大学で公共政策修士を取得。長野県や上田市で統一ブランドの創設や農産物マーケティングを推進。また、小学校PTA会長や地域活動にも積極的に取り組む。現在、中小企業診断士・公共政策修士として「長谷川戦略マーケティング研究所」を立ち上げ、企業や行政のマーケティング支援に従事している。落語鑑賞が趣味で、「上に立つより前に立つ」や「やってみなければ幸運にも巡りあえない」という言葉が好き。
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