駆けこんできた味噌屋さん

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「ハセガワさん、5分でいいから時間ありますか」
突然の電話でした。市内の味噌屋さんの若旦那からです。
夕方、帰る直前の私は、その声の真剣さに「ハイ」と答えるしかありません。「すぐ行きます」といって電話は切れました。

出会いは

彼は2ヵ月前に私を訪ねて来て、初めて会いました。聞くと、私が地産地消の授業をした高校に彼も味噌醸造の授業で関わっていて、私という存在を知ったとのこと。

用件は、地元の大豆を使って味噌を作りたいが、仕入れルートを知らないので、教えてほしいという依頼です。JA支所の担当者を紹介し、その後は連絡もなくご無沙汰でした。

駆け込んできたわけは

そして、待つこと10分。彼は、息せき切って市役所に駆け込んできました。
大豆の仕入れでJAとトラブル発生か?
しかし、彼の口から発せられたのは、意外な言葉でした。

「試しに甘酒を作ったので、飲んでみてくれませんか」
試作した甘酒が広口瓶に入っています。当社は甘酒を作っていないので、まず試作してみたとのこと。紹介されたJA支所担当者から、地元産の米と大豆を少量分けてもらい、味噌は5月に味見できるといいます。

今回、まず甘酒(もちろんノンアルコール)を試作し、最初にぜひ私に味見して欲しいと、駆け込んできたといいます。

正直、嬉しかったです(心ではウルウルしていました)。
仲間の職員も呼んで試飲しましたが、あまり甘くなく、飲みやすく仕上がっています。評判は上々でした。この後、JA支所にも行って飲んでもらうとのこと。

まだ、いろいろ試行錯誤を繰り返し商品化に向けて研究したい、と開発意欲を語ってくれました。

商品づくりでのタッグ

マーケティング担当部署は、販路紹介や商談会、PRなどに関わることがほとんどかと思います。しかし、商品開発の段階で関われば、場合によっては、売り先を紹介し、その意見を取り込むことも可能です。
まさしく売れる商品作りを支援できます

市役所で、加工商品の製造加工に関わるのは他の部署ですが、マーケティング的には、部署間連携で柔軟に対応すべきと考えます。
なにしろ、味噌屋さんが駆け込んでこないことには、始まりませんから。そこには、人と人との信頼関係があってこそと思います。

タッグの決め手は

一度しか会っていない私を頼りにしてくれてありがとう!
彼の商品づくりへの熱意が、市役所とのタッグをもたらしたのですが、あえて、はやり言葉でいえば

彼の「アクション ファースト」が決め手です。

この記事を書いた人

長谷川 正之
長谷川戦略マーケティング研究所所長

1955年生まれ、長野県埴科郡坂城町出身。長野県信連勤務後、政策研究大学院大学で公共政策修士を取得。長野県や上田市で統一ブランドの創設や農産物マーケティングを推進。また、小学校PTA会長や地域活動にも積極的に取り組む。現在、中小企業診断士・公共政策修士として「長谷川戦略マーケティング研究所」を立ち上げ、企業や行政のマーケティング支援に従事している。落語鑑賞が趣味で、「上に立つより前に立つ」や「やってみなければ幸運にも巡りあえない」という言葉が好き。
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