こんな「ぜいたく」 

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先ごろ、お誘いを受け、参加した新酒お披露目会でのこと。
お酒の名前は「八重原(やえはら)純米大吟醸」。長野県東御市八重原地区で栽培した酒米「ひとごこち」を、松本市の大信州酒造㈱で醸造した新酒です。

そこで飲んだお酒の感想は、ひとことで充分。
「美味しかったぁ~!」

会のはじめの挨拶で、田中隆一社長(大信州酒造)は、最初からドキッとするようなフレーズを発します。

「この酒にストーリーなんかありません」

どういう意味?その場は一瞬静まり、続けて言うには・・・
「今は、商品のストーリーが先行し過ぎている。八重原地域と松本市がつながるストーリーなんてありません。私と生産者3人とのつながりもありませんでした」。

田中社長が彼らと出会ったのは、県の日本酒展示試飲会でのこと。社長が所用で自社のブースを空けていた1時間、彼らは佇んで待っていました。一人が「大信州の大ファンです。是非、僕たち3人が生産した米でお酒をつくってほしい」と熱心にアピール。

彼らは試飲を重ね少しボルテージも上がっているので、「明日、蔵を見に来たら」と少し突き放すように言いました。ところが、翌日、本当に訪ねてきたのです。そこからのお付き合い。

社長は、彼ら米生産者の情熱と自信を強く感じ、一緒にやろうと決めました。その時、心に浮かんだ言葉は

「情熱が人を動かす」

大信州酒造の杜氏が、3人の愛情込めて育んだ米を用いて、精魂込めて醸したのがこの酒。大信州酒造の部長が言いました。

「世界で初めてこの酒を飲むのは皆さんです」

「今年の酒はどうか。今日の飲み手に判断してもらいたい」。
私は無心で、盃(さかずき)に満たされた新酒をそーと唇で触わり、舌で感じてみます。キレがあり、香りが立ち、かつやさしい。表現下手の私が言える言葉は、「めちゃくちゃ、美味しい」。目が潤んできました。

続いて、「和らぎ水」の紹介です。和らぎ水とは簡単に言うとチェイサー、お酒を飲む際、酔わないように合間に飲む水のこと。
この水がまた良かった。

「この和らぎ水は、仕込み水です」

酒を仕込んだ水を合間に飲んでみると、さらに体の中でしっとりと馴染んでくるよう。お酒の味が薄まるのではなく、酒が体にやさしくしっくり納まる感じです。

また、当日の継ぎ手が生産者の奥様達で、着物姿がとっても素敵(どうりで美味しいわけだ、と思ってもらえましたか・・・笑)。

そこでリクエストです。酒と仕込み水のセット販売を是非、検討してください。売れると思います。

オッと、忘れてはいけません。限定品なので、どこで手に入るのか。
大信州酒造㈱ http://www.daishinsyu.com/に聞いてみて下さい。
萬屋酒店 (上水内郡信濃町|酒店|電話番号:026-255-2078
https://www.facebook.com/kurohime2711/
には入手したとの情報が出ています(売り切れの場合は、ごめんなさい)。できれば、親しい方とゆっくり味わうのがベスト。

この日、会場を後にしてしみじみ思ったのは次のこと。

「ストーリーは、人の情熱と関わりから生まれる」

それにしても、田中社長が挨拶の中で言ったことばが頭から離れません。「トランプがどんなに大金を積んでも、この場でこの酒を飲むことはできません」

声をかけてくれた八重原米研究会の3人、有難う。そして、世界でここにしかない、こんな「ぜいたく」に乾杯!

この記事を書いた人

長谷川 正之
長谷川戦略マーケティング研究所所長

1955年生まれ、長野県埴科郡坂城町出身。長野県信連勤務後、政策研究大学院大学で公共政策修士を取得。長野県や上田市で統一ブランドの創設や農産物マーケティングを推進。また、小学校PTA会長や地域活動にも積極的に取り組む。現在、中小企業診断士・公共政策修士として「長谷川戦略マーケティング研究所」を立ち上げ、企業や行政のマーケティング支援に従事している。落語鑑賞が趣味で、「上に立つより前に立つ」や「やってみなければ幸運にも巡りあえない」という言葉が好き。
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