今、農協は政府から改革を迫られています。
今の農協は中国の清朝末期に似ていて、肥大化した組織は環境適応ができません。まもなく歴史的使命を終えると極論する人もいます。
さすがに言い過ぎと思いますが、一方ではこんな農協も出てきました。組合員の声を虚心坦懐(きょしんたんかい)に聴き、組織を改革して立ち向かう農協です。その一つが、私が関わる「信州うえだ農協」です。
このところの動きをみていると、変わる予感がします。その変わる方向とは・・・
売ってなんぼの組織
「作るほうは組合員がやる。農協は売るほうに専念してほしい。」
農協の組合員が求めているものです。
人口減少・高齢化の進展、女性の社会進出。受けて、生鮮野菜・果物の消費減少、中食・外食の増加等。この流れは、市場流通の減少、直接取引の増加をもたらし、農協を取り巻く環境は大きく変化しています。
しかし、相変わらず量で勝負する市場取引中心主義を脱却できず、マーケットインは口先だけ。なぜなら・・・農協にとって量で手数料を抜く(収益を確保する)のが一番楽だから。
そんな農協はいらない、というのが組合員の本音です(私も組合員です)。
市場流通が減少している実態を直視するなら、農協は直接販売に軸足を置くべきです。信州うえだ農協は、3月1日付でこれに応える組織に変えました。
「売る組織」づくり
販売部門で、市場販売課に加え「直販課」を新設(総勢14人)。そこに営農指導課を併設しました。狙いは明確、売れる農畜産物を作ることです。
人材育成の一手
新たな組織を担う人材が必要で、長期的な視点が求められます。そこで、農協がとった新たな一手は何か。
上田市農政課農産物マーケティング係への人材派遣です。市との人事交流は初めてですね。
物(農畜産物)を持っていない行政は、農協と組んでこそ効果的かつスピーディなマーケティングが展開できます。農政課内でも、農産物マーケティング係が4月から推進室に格上げされ、新たな動きが始まります。
それだけでは、形を整えただけと言われかねません。この機に、農協はさらに思い切った手を打ちました。
地域とつながる農協
農産物の高付加価値化で、6次産業化支援が求められています。地域で行うには、2次・3次の多様な事業者との連携が欠かせません。
そのために、4月から農協が上田市商工会議所に加盟します。商工会議所側も歓迎で、農協が加わる6次産業化の仕組みづくりの進展等が期待されます。全国的にも注目される動きで、いろいろな展開が想定できます。
地産地消・販路開拓GO!
地元の旅館・飲食店への食材提供が広がり、商工事業者のお中元・お歳暮品の取り扱いも増えるでしょう。菅平高原の新鮮レタスのお中元なら、贈られたほうは、ご近所におすそ分けするかもしれません。
その反応を農協がじかに把握し、生産者にフィードバックします。従来の「市場に売って終わり」ではない大切な役割が果たせます。
トップがリードする
この組織改革をリードするのは、今年度、一気に交代した組合長や専務・常務の皆さんです。新たに農協と市役所との定例会議をスタートさせました。連携事項を打ち合わせし、共同歩調をとっています。
新組織が動きだす次年度からが勝負。いろいろな障害も想定されます。
しかし、組合員の声や地域からの要望を真摯に受け止め対応していく限り、農協は地域でなくてはならない存在です。
農協系統組織出身の私も、微力ながら支援していきます。
敢えて、このところテレビで毎日報道されている幼稚園児のフレーズをもじって、力強く言いましょう。
「農協」ガンバレ!「農協」ガンバレ!
この記事を書いた人

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長谷川戦略マーケティング研究所所長
1955年生まれ、長野県埴科郡坂城町出身。長野県信連勤務後、政策研究大学院大学で公共政策修士を取得。長野県や上田市で統一ブランドの創設や農産物マーケティングを推進。また、小学校PTA会長や地域活動にも積極的に取り組む。現在、中小企業診断士・公共政策修士として「長谷川戦略マーケティング研究所」を立ち上げ、企業や行政のマーケティング支援に従事している。落語鑑賞が趣味で、「上に立つより前に立つ」や「やってみなければ幸運にも巡りあえない」という言葉が好き。
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