農業参入する企業は、地域と共に!

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前回のブログで書いた㈱ベジアーツ山本社長(37歳)のことで、もう一つ記します。
彼は、大手ハンバーガーチェーンのモスフードサービス㈱と共同出資会社・㈱モスファーム信州を設立しました。

この会社は、本拠地の御代田町ではなく、隣の小諸市に設立しました。耕作地の確保が見込めなかったからです。

小諸市側から見れば、「外からの企業参入」です。この企業が地域でどんな農業をやるのか。儲からなければすぐ撤退してしまい、耕作放棄地にならないか、地域生産者や住民は不安になると思います。

そこで、山本社長はある行動に出ます。それは・・・

参入企業が心すべきこと

共同出資のモスフードサービス㈱と歩調を合わせ、ある協定書の締結に向け小諸市役所と折衝を始めます。

紆余曲折を経て、小諸市・モスフードサービス㈱・㈱モスファーム信州の3者で締結した協定書の骨子は、以下の通りです。

1.営農組織・集落等との話し合いが生じた場合は、積極的に対応すること
2.道路・水路等の共同利用施設の維持管理に関する取り決めを遵守
3.住民の健全な生活環境保全に努めること
4.必要な設備建設・資材購入は地元調達を優先
5.雇用確保における地元優先

地元は、外から農業に参入する企業にはどうしても警戒感を持ちます。地元農業の発展に寄与する姿勢を理解してもらい、締結に至りました。

小諸市が協力的なのはなぜでしょうか。
締結内容にある設備建設・資材購入や雇用面で、地元を優先することのほかに、私にはもう一つ思い当たる理由があります。

それは、山本社長の「自治体の抱える問題解決に役立ちたい」という熱い思いからの行動です。

自治体との関係づくり

どこの市町村も共通に抱えている問題。それを解決する行動とは・・・
 市に「耕作放棄地を紹介してほしい。条件不利地から耕作を引き受けます」と申し出たのです。

実際に私もその畑を見させてもらいました。耕運機等はかろうじて畑に入りますが、傾斜地で放棄地だったことから、土壌改良が必要で、通常の栽培には数年かかるでしょう。

そのような放棄地を再生する役割を担う存在は、市として頼りになります。生産者や住民も、市が代表して協定書を結ぶことで安心できます。

広く知ってもらいたい

では、協定をどう地域に認知してもらうか。
私が県農政部に在籍していた時です。関係者が県知事を表敬訪問し、新会社設立と協定書締結について報告してもらう段取りをしました。県内に広く知ってほしいと思ったからです。

実際に山本社長、モスフードサービス㈱社長、小諸市長が揃って県知事に報告し、その後県庁にて記者会見をしました。マスコミが大きく反応したのはいうまでもありません。

このような、農業参入企業と自治体がタイアップして耕作放棄地を解消する、という仕組みづくりを進めていきたいですね。

地元農協も一緒につながれば、さらに良いのですが、さて・・・。

この記事を書いた人

長谷川 正之
長谷川戦略マーケティング研究所所長

1955年生まれ、長野県埴科郡坂城町出身。長野県信連勤務後、政策研究大学院大学で公共政策修士を取得。長野県や上田市で統一ブランドの創設や農産物マーケティングを推進。また、小学校PTA会長や地域活動にも積極的に取り組む。現在、中小企業診断士・公共政策修士として「長谷川戦略マーケティング研究所」を立ち上げ、企業や行政のマーケティング支援に従事している。落語鑑賞が趣味で、「上に立つより前に立つ」や「やってみなければ幸運にも巡りあえない」という言葉が好き。
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