農業の世界に入る前はボッシュ(Bosch)で働いていました。ドイツ系の自動車部品メーカーです。ボッシュというと電動工具のイメージの方が強いかもしれませんね。
そこでは、ドイツ人、インド人、中国人、スイス人など、グローバルチームで働いていました。グローバル拠点を結んで、自動車部品を開発していました。ぼくの役割は、顧客対応や、グローバルチームのマネジメントでした。
あるとき、いろんな国のメンバーで議論になりました。お客さんをどのように捉えているかです。
とある日本人が言いました。「お客様は神様です。」
日本では一般的にこのように言われています。多くの日本人は、お客さんからの無理難題に対して、報酬や責任の範囲外だとしても対応しますよね。(ブラック)残業もいといません。
それに対してドイツ人が言いました。「いや、違う。お客さんはパートナーだ。どちらが上でどちらが下ということではない。」
彼らは、業務分担として決められたことしかやりません。休暇もしっかり取ります。残業もほとんどしません。お客さんに明確にその旨を伝えます。
その場にインド人がいました。彼の考えを聞いてみました。「う~ん、どちらかというと、私は日本人の感覚に近いです。お客様は神様だと思います。」
ほぉ、そうなんだ~。僕はインド人はドイツ人に近い感覚を持っていると思っていました。しかし、その彼は日本人と同じように「お客様は神様」だと言ったのです。
「お客さん(様)」という言葉ひとつとっても、捉え方は、人それぞれ異なります。これら前提条件を知ることなく一緒に仕事をすると、お互いの行動の意味が理解できずに、議論も噛み合いません。
ちなみに僕はお客さんはパートナーだと思っています。ドイツ人ほど割り切れておりませんが。(笑)
言葉の定義
それは人よって千差万別です。同じ日本人でも異なります。
社外の人とコミュニケーションを取るときは、上記のような誤解がさらに生じやすくなります。あなたが常識だと思っていることは、外の人にとって常識ではありません。
「6次産業化」という言葉についても、農家と行政では異なるイメージを持っています。議論がずれてしまっているシーンをよく見かけます。それが行き過ぎると、お互いの批判に繋がってしまいます。
「販路開拓」についてはどうでしょうか?やはり、そこから連想するものは様々です。誰に対して売るか、どこまで力を入れるか、その難易度についても、人によって異なるイメージを持っています。会社の規模や業界によっても変わってきます。
また、あなたの農作物や加工品の魅力も、上手くお客さんには伝わっていない可能性があります。「無添加」や「農薬不使用」など一般的に使われている言葉も、人によって捉え方はまちまちだからです。こだわり製法も、専門用語が難しすぎて、相手に伝わっていないことが良くあります。
もし何かが噛み合っていないと感じたら、相手と基本的な言葉の定義が違っていないか、確認してみてください。「そういうことだったのか!」と意外と腑に落ちます。
-田中良介
P.S. 永遠に理解できないケースもあります。あしからず。(>_<)
この記事を書いた人

- 世界の最新トレンドとマーケティングに精通しており、食品企業の商品開発やマーケティング活動を支援している。自身もかつては食品企業で、苦労しながら商品開発と販売をしていた経験あり。 日本と世界をつなぐ架け橋となり、食品企業のレベル向上に貢献することがミッション。 海外での講演活動にも精力的に取り組む。
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