お待たせ、キングダム後篇③

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前回、リーダーのあるべき姿として、「上に立つより前に立つ」と書きました。
今回は、キングダムを読み、「部下のあるべき姿」を私の人生に重ねて書きます。
少し長い文章になりますが、お許し下さい。

中国前漢の説話集から

中国の前漢に書かれた「説苑(ぜんえん)」という説話集は、儒教的立場から様々な伝説・故事を収録したものですが、そこに、君主に対する臣下のあり方として以下4通りの記述があります。

命に従いて君を利する、之をと為す
命に従いて君を病ましむる、之を(ゆ)と為す
らいてする、之をと謂う
命に逆らいて君を病ましむる、之をと謂う

逆命利君

4通りのうち、特に「逆命利君」に注目します。
「主君や上司の命令、たとえ国家の命令であっても、逆らわざるをえない場合は、敢えて正しいと思うことを言う。君に利することこそ本当の忠義」という強い意志を表すものです。

その対極にある「従命病君、為之諛」とは、「命令にへつらって従うのは、主君を病ましめ、国家を腐敗に導く」というもの(諛とは、へつらうこと)。

今、この国の官僚は政治家の言葉を忖度(そんたく)して部下に命令します
部下は、従ってはいけない命令と知りつつ、媚びへつらって応じることが常態化していると感じます。

キングダムでは、兵(部下)が将(上司)の命令に平気で意見し、止める場面がよく出てきます。それは、日ごろ、主人公の信という将が、自らの部隊の兵とコミュニケーションを図っていて、大切なことを共有しているからと思います。

そうでなければ、上司のために敢えて意見することなどできないし、上司も耳を傾けることはありません。
大切なことは、秦王・政が唱える大義(中華の統一)です。それを将も兵も胸に刻み、行動します。理念の共有化といってもいいでしょう。

では、実際に言っても上司が聞かない場合はどうするか・・・。

ずばり、「辞める」べきでしょう。
「そんな企業や組織に未来はない」と喝破(大声でしかりつける)すべきです。
ここまで書いてきて、私の人生の中である決断をした場面を思い出しました。

上司の顔より真理の顔を

私が前に勤めていた組織を選択定年するか迷っていた時、偶然、新聞で哲学者・梅原猛氏へのインタビュー記事を読みました。
目に飛び込んできた大きな見出しは2つ・・・

上司の顔より真理の顔を
辞表も出せる社員になれ!

ドキドキしつつ読みましたが、内容は確か次のようでした。  


創造的な仕事をするには、前例や慣習、常識にとらわれることなく、大胆な仮説を立て、それを検証する姿勢が大切。

保守的な先輩や上司の考えと対立すると組織の中で孤独になり、冷や飯を食いかねないが、それに耐える力を持つべき。上司の顔より真理の顔を見たほうがよい。

場合によっては、意志を貫くため、会社を辞める覚悟や勇気も必要。それはたとえ中高年であっても同じ。


私はこの文章に背中を押されるようにまもなく辞表を出し、新たに「まちづくり」を学ぶため東京の大学院に入学しました。54歳でした。

人生の転機

「公共政策修士」を取得し、その後は県庁の任期付き職員(課長級)採用試験に合格。
地方公務員として長野県産農産物のマーケティングに関わる人生を送るのですが、決断時には全く想定できないことでした。

今思うに、「逆命利君」の言葉と梅原猛氏の説く「部下のあるべき姿」とが共鳴しあい、私に新たな人生を与えてくれたと思っています。

以上、3回にわたりキングダム後篇を記しました。
上司は「上に立つより前に立つ」部下は「逆命利君」「上司の顔より真理の顔を」「辞表も出せる社員になれ」のメッセージが少しでも参考になれば・・・。
(佐高信著、「逆命利君」、講談社、参照)。

改めて、皆さんにキングダムを薦めます。
現在46巻ですが、私はレンタルで読み、最近は発売されたら即購入しています。マンガ喫茶でまとめ読みの方もいます。財力があれば全巻購入を(私は娘2人といまだ協議中)。

自分の人生です、お互い自分の座標軸を持って生きましょう!

この記事を書いた人

長谷川 正之
長谷川戦略マーケティング研究所所長

1955年生まれ、長野県埴科郡坂城町出身。長野県信連勤務後、政策研究大学院大学で公共政策修士を取得。長野県や上田市で統一ブランドの創設や農産物マーケティングを推進。また、小学校PTA会長や地域活動にも積極的に取り組む。現在、中小企業診断士・公共政策修士として「長谷川戦略マーケティング研究所」を立ち上げ、企業や行政のマーケティング支援に従事している。落語鑑賞が趣味で、「上に立つより前に立つ」や「やってみなければ幸運にも巡りあえない」という言葉が好き。
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