この大型連休中、農協組織について考えました。 まとまった時間が確保できたので、集中して取り組んでみました。
論点は、一般によく言われる農協は「組合員のための組織」が「組織のための組織」になっていないか、という指摘を考えることです。私もそう思うからです。
農協組織職員OBとして、また現在も仕事で農協と関わる機会が多いことから、先送りせず、農協のルーツにまでさかのぼり考えを私なりに整理したいと思います。
日本の農協は官製
日本の農協のルーツをたどれば、戦前は農会(農業技術普及や政治活動)と産業組合(購買事業、販売事業、信用事業等)がありました。戦時中に2つの組織が統合されて「農業会」という統制団体になり、全農家が加入しました。
戦後、食料難の時代に、政府は米の配給制度を維持するため農業会を衣替えし、農業協同組合法を制定し昭和23年に農協を発足させました。
こうして農協は行政の下請け機関となるとともに、行政と同じく全国・都道府県・市町村の三段階で構成される上意下達の官製的組織が誕生したのです。
なぜ農協だけが「系統」組織か
農協には「系統」農協ということばがあります。この「系統」とは、三段階がまとまって統一のある組織を形成していることを意味します。
そこでは、組合員が利用する農協は普通に「末端の単位農協」と表現されます。この「末端」「単位」という言葉は系統という三段階の上位下達の組織構造をよく表していると私は思います。
もちろん、「系統」という言葉は生協他の協同組合にはありません。現場の組合員からなりたつ協同組合は、上からの統制的な関係などないのは当たり前だからです。
この特殊な生い立ちから、農協組織は中央集権的な官僚的組織にならざるを得ないことがわかると思います。組合員を外れると、いまだに嫌がらせを受けることがあるといわれますが、上からの堅固な統制の仕組みが保守的な行動につながっていると思われます。
農協は組合員の自主的組織ではない
多くのみなさんは、農協が協同組合なので組合員が自主的に作った組織と思っているかもしれません。アメリカやヨーロッパの農協は、確かに自発的に設立された専門農協ですが、以上のように日本は違うのです。
もう一つ触れておきます。農協法をつくる際、当初欧米型の専門農協が検討されましたが、米を政府に供出させるための代金決済に信用事業は必要との強い主張があり、総合農協が担保されたことです。この総合農協が、やがていろいろな議論を呼びます。
高度成長時代の農協
戦後の長い間、農業者はみな小規模・均質的であり、上からつくられた農協で組合員は等しく共同購入・共同販売のメリットを享受しました。
高度成長期の重厚長大産業に携わった多くの労働者の胃袋を満たしたのは、間違いなく農協の食料供給力に負うところが大きかったと思います。戦後の復興を支えたと自負していいと思います。
しかし、食糧管理制度のもと、米価を抑制しようとする行政と米価引き上げを求める農協の間で対立が激化します。食糧管理制度廃止後も、米の生産流通への市場原理導入に対し行政と農協の考え方は一致するはずがありませんでした。
また、食の多様化や規制緩和が進められる状況下、食料輸入問題や企業の農業参入等に直面した時、上からの官僚的農協組織は、「反対」という硬直した結集軸しか打ち出せなかったとの印象はぬぐえません。
多様化する組合員
一方、農業生産法人や大規模農家が次々に出現し、農協を離れ、あるいは入らずに独自の生産主体として認知されつつあります。
また、農業者の減少や兼業農家も増加する中、政府は、農協に改革を迫っており、農協も独自の改革案を策定し取り組み始めました。
そこで、時代の大きな変化に適応し、本来の「組合員が主体となる協同組合」を組成するには、系統組織を思い切って変える必要があると私は考えます。
私が考える系統組織の方向
それは、思い切って上からの「系統」組織を、組合員を最上位に置く「逆さまのピラミッド」に転換することです。それによって、多くの可能性が開けてくると考えます。
その話は、次回に。
この記事を書いた人

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長谷川戦略マーケティング研究所所長
1955年生まれ、長野県埴科郡坂城町出身。長野県信連勤務後、政策研究大学院大学で公共政策修士を取得。長野県や上田市で統一ブランドの創設や農産物マーケティングを推進。また、小学校PTA会長や地域活動にも積極的に取り組む。現在、中小企業診断士・公共政策修士として「長谷川戦略マーケティング研究所」を立ち上げ、企業や行政のマーケティング支援に従事している。落語鑑賞が趣味で、「上に立つより前に立つ」や「やってみなければ幸運にも巡りあえない」という言葉が好き。
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