前々回のブログで、総合農協は、地域の「問題解決業」として力を発揮できると書きました。
地方が高齢化・人口減少で疲弊しているのは確かです。
また、地方自治体の財政も余裕はなく、行政の担っている業務の一部を民間に移行する流れが、今後起こると思います。
そこで、前回触れた「地域を拓く農協」の出番です。
行政との関係づくりが重要
地域を知らない株式会社が個々に行政業務を受託した場合、委託料は安いかわりにサービスの品質は低下し、地域の生活維持は困難になると懸念されます。
現にアメリカで先行して起こっている事例は深刻です(堤未果著「㈱貧困大国アメリカ」参照)。
農協はいろいろ言われますが、協同組合組織です。病院や福祉施設もあり、地域のインフラサービスの担い手として適していると私は思います。
どういう業務を受けるかは、ケースバイケースですが、「地域のニーズを把握し地域を拓く」視点で、研究会等を作って取り組む姿勢を示すべきと考えます。これから協同組合の逆襲が始まります、少し言い過ぎでしょうか(笑)。
説明責任を果たせる組織づくりが前提
しかし、行政や他業態と連携して行うには、高度な経営が必要となります。
農協の経営を理事会(執行=マネジメント)と経営管理委員会(支配・監督=ガバナンス)に分け、責任を持って経営していくスタンスが求められます。
事業を他業態と連携して行う限り、必然です。ここで、ストップしてしまうと、地域からの支持は得られないでしょう。
また、農協のみこのような立場を与えてよいのか、という異論が出るでしょう。
しかし、人的結合体の農業協同組合は、地域で目に見えない役割を果たしていることにもっと注目すべきです。
農協職員の地域での役割
特に、地方の農協職員は、重要な役割を果たしていると思います。それは何か・・・
地域を支える「消防団」活動や「PTA」活動、スポーツ少年団等の指導に関わっている職員が少なからずいると思います。
地域によって濃淡はあるでしょうが、農協職員はそういう地域の安心安全や人材育成の役割を果たしてきました。お祭りや行事という地域文化の維持・継承もそうです。
その地に愛着を持っている職員が集う農協は、「地域の問題解決業」として行政業務の連携先にふさわしいと思います。
農協は対抗軸を打ち出せ
一方、政府は、農協の岩盤を打ち壊すといって、なし崩し的に規制を緩和し、競争参入を鼓舞し、専門的農業者を支援するといっています。
その結果、今起きていることは悲しいかな・・・
権力者が自由化・規制緩和促進という美名の下に、私的に親しい特定企業に便宜を図ったり、格安で国有財産を払い下げるなど、やりたい放題です。
つまりは、勝手に規制緩和といって法をゆるゆるにし(特区など)、特定の者が法外な私的利益を得る環境を作っているのです。
また、TPP推進でグローバル資本に日本農業を切り売りするために、その阻害要因である農協をターゲットにしているとしか私には思えません。
農協は、それらに対して、しっかりと対抗軸を出し、自ら「地域を拓く」主体として変革していく覚悟を持つべきです。
地域において、総合農協が農畜産物の生産・販売事業を中核に、他業態と連携し水平的に事業展開する時、地域において農協の存在は不可欠となるでしょう。
この記事を書いた人

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長谷川戦略マーケティング研究所所長
1955年生まれ、長野県埴科郡坂城町出身。長野県信連勤務後、政策研究大学院大学で公共政策修士を取得。長野県や上田市で統一ブランドの創設や農産物マーケティングを推進。また、小学校PTA会長や地域活動にも積極的に取り組む。現在、中小企業診断士・公共政策修士として「長谷川戦略マーケティング研究所」を立ち上げ、企業や行政のマーケティング支援に従事している。落語鑑賞が趣味で、「上に立つより前に立つ」や「やってみなければ幸運にも巡りあえない」という言葉が好き。
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