前回のブログで、ストーリーに活かすマイナス情報について、温泉旅館の事例で説明しました。
マイナス情報はストーリーの導入部分で「おやっ」と注目してもらい、プラス情報をより強調させる効果があると思いますが、その他に少なくても3つの効用が期待できます。
マイナス情報開示の効用
■クレームを未然に防ぐ効果
特に、エレベーターがないことは、高齢者や足の不自由な方には大きな障害ですし、眺望が望めないことも期待するお客様には不満となります。事前情報で伝えていれば、期待する方はこの宿を選択しないでしょう。
■ターゲットを絞る効果
エレベーターや新しい建物、眺望を望む顧客はターゲットから外れ、「本物の温泉を求めるお客様」をメインに満足してもらう戦略が明確になります。
■改善・改修の優先順位が明確になる効果
お客様の満足度アップや要望に応えるための改善・改修等について、何を優先させるか、はっきりさせやすいと思います。
マイナス情報等によりターゲット客を明確化していれば、自慢の設備・サービス等をよりレベルアップさせていく意思決定ができます。
さらにマイナスをプラスに転化させる
前回のブログで書いたこの旅館の3つのマイナス情報は
・エレベーターがない ・階段が多く、わかりにくい構造 ・眺望がのぞめない
でした。そのうち、「階段が多くわかりにくい構造」については、逆手にとってある仕掛けをし、好評でした。どんな仕掛けか・・・
「館内オリエンテーリング」です。曲がりくねった廊下の館内をくまなく回り、ポイントごとに質問があり、それに答え10問正解すると、次回の宿泊が割引となるものです。
私が何気なく発言したことを、当主は聞き漏らさず、数日後にはHPにアップして「商品化」してしまいました。お客様がどう受け取るかは、やってみなければわかりません。これも評判につながりました。
「わかりにくい構造の建物」というマイナス情報を、「館内オリエンテーリング」という遊びに変換すると、思わぬ顧客満足を獲得できるよい事例となりました。
経営が回復し人気温泉旅館に!
この旅館はHPでこのストーリーを発信後、徐々に宿泊客が増加し売上がアップしました。その利益による投資は各部屋の露天風呂設置に振り向け、今では温泉好きから支持される人気の温泉旅館となっています。
この旅館は、以上のストーリーがバッチリはまり、経営的にも劇的に立ち直り、設備投資の方向もぶれずに行うことができました。
一般には、「プラスの経営資源を強調し魅力的な商品を作る」と言われます。
そこに、敢えてマイナス情報を組み入れることでストーリーが生まれるという事例でした。
では、農産物や加工商品のストーリーづくりに、マイナス情報をどう活かすか、私の考え方を簡単な事例を使って次回に説明します。皆さんもご自身の商品で考えてみてはいかがでしょうか。
この記事を書いた人

-
長谷川戦略マーケティング研究所所長
1955年生まれ、長野県埴科郡坂城町出身。長野県信連勤務後、政策研究大学院大学で公共政策修士を取得。長野県や上田市で統一ブランドの創設や農産物マーケティングを推進。また、小学校PTA会長や地域活動にも積極的に取り組む。現在、中小企業診断士・公共政策修士として「長谷川戦略マーケティング研究所」を立ち上げ、企業や行政のマーケティング支援に従事している。落語鑑賞が趣味で、「上に立つより前に立つ」や「やってみなければ幸運にも巡りあえない」という言葉が好き。
この投稿者の最近の記事
【長谷川正之】2023.07.24「突然の携帯メッセージに思わず涙」
【長谷川正之】2023.07.12「これは本物ですか?」
【長谷川正之】2023.05.30環境を変えてみる!
【長谷川正之】2023.05.03原点を思い出した再会