上田市の合併前の真田町で教育長をされた大塚貢さんという方がいます。
校長で赴任した中学校は、いじめ・非行・暴力が日常化していましたが、地産地消の「給食」に変えたら無くなり、優秀校に変身させた実践者です。
「長野県真田町の奇跡」として、教育界では大変高名な方です。叙勲もされています。
最近、ご縁があり、直接お話を伺う機会がありました。80歳を超えた年齢にも関わらず、いまだ精力的に全国を講演で飛び回っています。
お話しを伺うと、色々な壁にも直面されたとのことですが、柔和なお顔ながら強靭な意志を目に宿す姿を拝見しつつ、私は一人の人物を思い浮かべました。
それが・・・森鴎外です。意外でしょうか。
地産地消の「給食」と森鴎外がどうつながるのか。以下、私の勝手な考えを記します。最後まで読んでもらえればと思います(たぶん、誰も書いていないのではと思うので・・・)
大塚さんの実践
大塚さんの実践は、ネットで調べれば詳しく出ています。概要は以下の通りです(私の理解です)。
校長として赴任した中学校は、非行が続出し、授業にならない状況でした。そこで先生方に授業を変えてもらい、花壇を作り、給食を変えました。
それまでの給食は、好きな揚げパンや中華麺、スパゲッティ、ソフト麺などであり、みんな大好き。一方、ご飯は1週間に1回程度、副食は肉が主流。
そこで、まず主食はご飯、さらに副食も魚や野菜たっぷりのメニューに変えました。保護者からは、給食費を払うのは私たちだ、校長の勝手にはさせない等、いろいろ言われ困難を伴いましたが、何とか実行しました。
続けていくと生徒が変わり、非行ゼロ、成績がアップするという劇的な成果につながったのです。
その後、教育長として、管内の中学校の給食を地産地消の米・野菜や魚のメニューに変える実践をし、非行が消え学力アップをもたらしました。
無視という反応
長野県内はもとより全国を講演して回り、大塚さんの取組みを実践する学校や自治体も現れ、成果も上がっています。
しかし、ご本人が言うには、いまだ反応しない、あるいは無視するところも多いとのこと。
たぶん、地元の食材(米・野菜・魚など)を使った給食だけで非行がなくなったり、学力がアップすることはありえないと思うのでしょう。
そんな単純なことではなく、先生方の授業の改善が大きな比重を占めるはずで、花壇づくりを含めた複合的な効果であり、結局個々の学校の状況による、との考えです。
科学的なデーターや検証、ロジックも不十分ではないか、という意見が多いのではと推察します。
無視は「証拠より論」による
つまり、取り組んだ事例は成果が出ているが、地産地消の給食が直接貢献しているとの学術的な論拠がない、ということでしょう。
「論より証拠」ではなく、「証拠より論」を重視する人たちが多いのです。
このことが、私には森鴎外を連想させるのです。
私が鴎外を気にするのは、「文豪」としてではなく、「軍医」として行動し発言してきた人物だからです。
ですから、軍医として正しくは森林太郎と表記すべきですが、同一物なので、鴎外で進めます。
鴎外は軍医として「ある病気」の解決に関わっており、一貫して現在の多くの教育関係者と同じ「証拠より論」の立場でした。ある病気とは何か・・・
「脚気」です。これが大きな問題になっていきます。
少し長くなりました。地産地消の給食と森鴎外の脚気との関係については、次回に。
この記事を書いた人

-
長谷川戦略マーケティング研究所所長
1955年生まれ、長野県埴科郡坂城町出身。長野県信連勤務後、政策研究大学院大学で公共政策修士を取得。長野県や上田市で統一ブランドの創設や農産物マーケティングを推進。また、小学校PTA会長や地域活動にも積極的に取り組む。現在、中小企業診断士・公共政策修士として「長谷川戦略マーケティング研究所」を立ち上げ、企業や行政のマーケティング支援に従事している。落語鑑賞が趣味で、「上に立つより前に立つ」や「やってみなければ幸運にも巡りあえない」という言葉が好き。
この投稿者の最近の記事
【長谷川正之】2023年11月22日「地方創生とSDGs」(2)CO2排出問題
【長谷川正之】2023年11月15日「地方創生とSDGs」(1)「持続可能」を考える
【長谷川正之】2023年7月24日「突然の携帯メッセージに思わず涙」
【長谷川正之】2023年7月12日「これは本物ですか?」