紹介本シリーズ①「道は開ける」

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前回のブログで予告した、「忙しいあなたへの紹介本」シリーズをスタートします。

本の分野はいろいろです。私が今まで読んできた中で影響を受けた本を、日々の出来事と結び付けて、経営学やマーケティングの視点を入れてあなたに紹介します。
まあ~、気楽にやってみます。

初回に取り上げる本は『道は開ける』です。

私の理解したこの本の内容をズバリ一言でいうと・・・「最悪を想定し攻める!」

先日、私はこんな経験をしました・・・。
あるご縁で、高校3年生80人に「大学受験の心構え」について授業をしました。

母校ではなく、教師でもなく受験産業に関わったことも全くない私が、どんな授業をしたのか。

終了後、全員の生徒から感想文(評価=チェック)をもらいました。
多くの生徒が「全く考えもしなかった○○○体験記を書き、普段気づかなかったことに気づく機会を与えてくれてありがとう」と書いてくれました。

タートはマーケットイン

普段、「マーケティング的な発想が大切」と主張している私が、まずはじめに行ったことは何か・・・。対象の3年生全員に、事前にアンケート調査をしました。

受験にあたり何を悩んでいるのか知らないことには、答えようがありません。
「私の授業」という商品の消費者は生徒たちです。生徒のニーズをつかみ、それに答える内容の商品(=授業)づくりが求められます。

アンケート調査の結果、実際の生徒の悩みは大きく4つでした。
○モチベーションを上げるには?
○集中して勉強する方法は?
○休憩時間をどう過ごすか?
○苦手科目の勉強の仕方は?

この悩みをあなたならどう解決しますか。
私が思いつき、仮説としたシナリオは、ある本を参考にしています。

それが・・・デール・カーネギーの著書「道は開ける」です。
この本は、あらゆる人間に共通する「悩み」の克服法を述べたもので、世界的に読まれていますが、あなたは読んだことがありますか。

悩みを解決する公式

そのなかでも、この公式は私が普段から悩みを克服する際、参考にしているものです。彼の紹介する公式は、おおざっぱに言って次の通りです。

①状況を大胆に分析し、その失敗の結果生じる最悪の事態を予測する。
②やむを得ない場合は、その結果に従う覚悟をする。
③これを転機として、少しでも好転させるよう、自分の時間とエネルギーを集中させる。

このやり方にそって、4つの悩みを解決すべく、進めました。
スタートは、受験において最悪の事態を予測することです。

そこで生徒に書いてもらったのが○○○体験記です。あなたはもうおわかりですね。○○○に入ることばは・・・「不合格」です。

3年生に、最悪の事態として「不合格体験記」を予測して書いてもらい、受験失敗の原因を考えてもらったのです。

最初は”まさか”という表情で一瞬静まり返り、なんで考えたくない自分の不合格を予測して書くのか、戸惑っていました。しかし、だんだん無口になりペンを一心に走らせています。

実際の不合格者が書いた体験記を例文として読み聞かせ、どうして落ちたかを疑似体験させたのです。

暇さえあればケータイをいじくり、部屋ではパソコンやゲーム、苦しいから逃げ出したい。生活のリズムも乱れ、焦り集中できない。そして不合格になったという最悪の予測です。

その事態を覚悟して受け止めることが、スタートラインです。そこに、さらに危機感を持たせ、「やる気」を喚起しました。

さらなる危機感を喚起

その危機感とは何か。
大学の未来についてです。「大学倒産時代の到来」は不可避というものです。

1つは2018年問題。18歳人口減少下、大学の数は増加。2018年以降、再び18歳人口が減少していき、大学の定員割れが顕著となり、経営困難な大学が増加する。

二つ目は、東京オリンピック問題。2020年の開催以降は、バブルがはじけ不況に突入。だから、大学倒産時代はかなりの確率でやってくる。

また、志望を問わなければ全員合格でき、誰でも手に入る「大学卒」の肩書は、価値がなくなるでしょう。倒産する可能性大の大学に行ってどうする、何のために大学に行くのか敢えて考える機会を持ちました。

親のお金で受験し、大学の費用も親が負担する。親の人生を中途半端に使っては申し訳ないと思わないのか。高卒後は労働することが基本ではないか、と問いました。

受験するなら、今後の自分の人生を考え、自分がどうしても入りたい志望大学を明確にすることが不可欠です。 だからこそ、こういう大学倒産時代の到来という危機情報も必要と思ったのです。

具体的に取り組む事項を学ぶ

その上で、少しでも好転させるよう自分の時間とエネルギーを集中させます。モチベーションアップ策や集中力を高めるやり方(私のかつての泥臭い方法等)を述べ、最後に行ったことは・・・。

あるべき姿としての○○体験記

受験生の「あるべき姿」として○○体験記を書いてもらいました。
もう、あなたならわかりますね。〇〇は・・・そう、合格体験記です。

最悪の事態を予測して不合格体験記を書き、問題の原因は何かを自分で考える。
大学の危機を自覚し、少しでも好転するよう自分の時間とエネルギーを集中する方策を学ぶ。そしてあるべき姿として合格体験記を書くのです。

この一連の作業では、Plan→Do→Checkの最初のプラン作りで、何をしないとうまくいかないかを裸になって考え(不合格体験記を書く)、限られた時間内で何をどうするか自ら決め計画することを学びます。

そして、計画を実行し獲得する「あるべき姿」を明確化する(合格体験記を書く)ことで、今後に向け行動するエネルギーが湧いてきます。

実に効果的な手法と思います(生徒の感想も上々でした)。

このやり方は、あらゆる問題解決にも応用できると思います。
あなたがもしD・カーネギーの「道は開ける」を読んでいなければ、今からでも遅くありません。

手に取って見て下さい。日々に役立つ実践の書であることを実感し、きっとあなたの「道は開ける」でしょう。

この記事を書いた人

長谷川 正之
長谷川戦略マーケティング研究所所長

1955年生まれ、長野県埴科郡坂城町出身。長野県信連勤務後、政策研究大学院大学で公共政策修士を取得。長野県や上田市で統一ブランドの創設や農産物マーケティングを推進。また、小学校PTA会長や地域活動にも積極的に取り組む。現在、中小企業診断士・公共政策修士として「長谷川戦略マーケティング研究所」を立ち上げ、企業や行政のマーケティング支援に従事している。落語鑑賞が趣味で、「上に立つより前に立つ」や「やってみなければ幸運にも巡りあえない」という言葉が好き。
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