6次産業化に取り組んでいる小規模農家さんに付きまとう、一つの不安があります。
こんなに心を込めて、年月をかけ開発したこのレシピや配合。商品には自信があるし、お客さんにも喜んでもらえると確信している。
でも競合に、原材料や配合をマネされたらどうしよう?
苦労して開発したレシピを盗まれたらどうしよう?
自分より資金力があって、技術力も高い競合が、同じような商品を作って販売してきたらどうしよう?
委託加工先が、秘伝のレシピを他の業者にコッソリ売ったらどうしよう?
不安は尽きませんよね。
実際この不安感から、委託加工に出すことを躊躇する生産者さんもいます。自分ですべてやるのは非効率的であると分かっていながら・・・。
かといって食品レシピを、工業製品のように特許で守ることは、現実的ではないでしょう。よほどの技術や先進性があれば不可能ではありませんが。
また商品デザインを刷新したらすべてが解決する!ようなことを言っている諸先生たちもいますが、それにも無理があります。デザインが良いに越したことはありません。でもデザインだけを良くして売れるなら苦労はありません。そしてデザインだって、簡単にマネができてしまう要素です。
お客さんは浮気性で、もっと美味しそうで、もっと安い商品があれば、簡単にそちらへなびきます。あなただって一消費者として同じだと思います。要するに、商品とお客さんの結びつきなどというものは、とても脆いものなのです。
唯一、あなたを守る方法があります。
小規模生産者だからこそ、特に有効な手段です。
それは誰が作ったかを明確にすること。商品とお客さんの結びつきではなく、作り手とお客さんの結びつきを作ることです。
あなたの生産者としてのポリシーや熱い想いを、競合が完全にマネをすることができません。あなたの過去の苦労経験を、競合は盗むことができません。生産者の個性や想いというものは、とても強い差別化の要素なのです。
もしお客さんが生産者に惚れて、その生産者の商品だから買いたい!というふうになれば、それは理想的な状態です。競合のつけ入る隙が、ほとんどなくなります。
だから、あなたはお客さんとの関係性を強くする必要があります。まずはこの商品を誰がどんな想いで作ったかを伝えましょう。一回ではダメです。伝えて、伝えて、伝え続けなければ、すぐに忘れられてしまいます。
信頼関係を構築するには時間がかかりますが、関係が強化されればされるほど、お客さんはあなたの商品を継続的に買ってくれるようになります。お客さんは、商品を買いたいのではなく、あなたから買いたいのです。
関係を強化するためには、お客さんとコミュニケーションを取らないといけません。対面がベストですが、もちろん遠方のお客さんもいるでしょうし、全員とは無理です。でも今の時代、電話もあれば、e-mailもあれば、SNSもありますよね。もちろん昔ながらの手紙を出すこともできます。これら手段をフル活用して、あなたからお客さんへコンタクトを取っていきましょう。
気を抜くと、すぐに関係は薄まってしまいます。だから継続性がポイントです。
もしあなたの加工品の商品力が高く、売れる商品であれば、遅かれ早かれ競合にマネされます。競合に見つからないように商品PRすることはできませんし、目立てば必ず競合の目に留まります。
だからその前に、お客さんとあなた自身の関係性を作り上げましょう。商品単体で勝負してはいけません。お客さんとの関係性が、いつの日かあなたを助けてくれることになります。
-田中良介
この記事を書いた人

- Innova Market Insights社の日本カントリーマネージャー。世界の最新トレンドとマーケティングに精通しており、食品企業の商品開発やマーケティング活動を支援している。自身もかつては食品企業で、苦労しながら商品開発と販売をしていた経験あり。 日本と世界をつなぐ架け橋となり、食品企業のレベル向上に貢献することがミッション。 海外での講演活動にも精力的に取り組む。
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