紹介本シリーズ③「3風土産業」(第一回)

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2回にわたってこの本を紹介します。
読み終わったとき、これから地域の特産物を開発しようとするあなたの気持ちは、いやがうえにも高まるでしょう。

それほど、私が一押しする素晴らしい本です。
ただ、正直に言うと難点があります。ずばり、本の価格が高い

農文協から著作集全4巻が出版されていますが、私が揃えた時点で全巻計2万8千円!!この「3風土産業」一冊の古本価格は6千円です!(先ほど見た価格)

入手するハードルが高いということは、ある意味、読んでいる人はごく少数と思われ、他と圧倒的に差別化できるということです。私も、本当は紹介したくない本ですが・・・(笑)

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書いた人を教えてください

長野県立諏訪中学校(現・諏訪清陵高校)地理科教師の三澤勝衛という人です。
1885(明治18)年~1937(昭和12)年に生き、52歳の生涯でした。

彼は、農業に従事しながら勉学に励み、小学校の補助代用教員からスタートして各種検定に合格(一度も不合格なし)、ついに旧制中学校教諭になりました。尋常ではない努力家です。

地理学、鉱物学、太陽黒点観測をはじめとする天文学の研究に打ち込み、総合的で独創的な風土論を展開しました。

「自分の目で見て自分の頭で考える」教育を実践し、独自の風土の思想を確立。風土に根ざした産業・暮らし・地域づくりに人生をささげた郷土の偉大な人物です。

大正時代の人の本が出版されるのは珍しいですね。

三澤は、地域の人々とともに風土産業の調査をし、郷土人の観方や知恵によって観察を深め、風土産業の啓発を天命としました。

村長や小学校校長などは、疲弊した農村の再建や地域振興を図るため地域を挙げて調査に協力し、徐々に三澤への期待が高まりました。

彼の考え方と実践の根拠である三澤風土論がやがて評判を呼び、講演が増えたことから、著作・論文としてまとめ発表となったのです。

彼の死後も、多くの教え子が師である三澤を語り著作全集の発行に協力したのは、彼の風土論が時代を超えて普遍性を持っているからでしょう。

今まで2回にわたり著作集が出版されていますが、在野で地方の人物では異例といわれます。

三澤の風土論の特徴はなんでしょうか。

彼の唱える風土とは、「大気と大地の接触面」であり、この接触面=風土を知り尽くすことが自然を活用した産業を育成する基礎であるということです。

日照、雨、風、地形、土質、温湿度、日向と日陰、雪……それぞれが互いに影響し合って微妙な風土が生まれます。
まず、その対象をよく見て考えること。土質しか考えないのは視野が狭い「土百姓」であると喝破します(今もこういう人が多いですよネ)。

三沢は、その風土に合う作物を作る=「適地適作」を強調しています。
あんず・ぶどうは乾燥を好み、そばや桃やさくらんぼはやせ地、梅や柿は湿り易いところ、インゲン豆や養蚕は風の吹くところを好むなど、風土を知って作ることが重要なのです。

「地域資源の活用」という面からは、乾燥と冬の低温を生かした産業として、ワイン醸造、製糸業、凍み豆腐製造、寒天製造他をあげています。

以上の通り、風土を活かして農産物を作り加工することを提唱しており、この風土産業は現代の6次産業化への道を示唆していると私は思います。

マーケティングとの関係はどうでしょうか。

風土は個性の強いもので、その風土を織り込んで生産したものもまた個性が強い。
したがって、風土を織り込めば織り込むほど生産物は差別化され、需要化されます。逆に、市場対応中心の産業は個性を喪失していくと主張します。

では、風土を織り込んで差別化するとはどういうことでしょうか

例えば、その土地で泣かされているものに注目することです。豪雪地帯の雪利用(シャクヤクやチューリップ栽培)や低温利用(凍み豆腐、寒天、信州味噌、高原野菜ほか)があります。これらは、「価格競争」面でも優位となりえます。

さらに、三澤は市場での需要を考慮に入れて、そこの風土と併せ考えたうえで作物生産を計画すべき、という持論を展開します。

その上で、彼はできるだけ多く自然を織り込んで差別化し生産すべきと主張するのです。大変優れたマーケティング的な見識といえます。
長くなりました。

次回は、昭和初期に書かれたこの本が、現在を予見していることを述べます。
大変刺激的です。

この記事を書いた人

長谷川 正之
長谷川 正之
アグリフード(風土)アドバイザー

長野県の農産物統一ブランド「おいしい信州ふーど(風土)」を創設し中心となって推進。また信州6次産業化推進協議会副事務局長として、地域6次産業化を主導。H28年3月をもって任期満了し、地域創生を支援するアグリフード(風土)アドバイザー業務を開始する。長野県内で幅広いネットワークを持つ。現上田市農政課職員。中小企業診断士。
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