紹介本シリーズ⑥「戦略思考学」(上)

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美由子さん 今回は、長谷川さんが中小企業診断士の仕事をしているうえで、バイブルにしている本と聞きました。さあー、どんな本ですか、楽しみです。

 書名は「戦略思考学【創造的問題解決の手法】」。著者ハーベイ・ブライトマンで監訳・大前研一です。今から34年前の1983年発行です。

美由子さん また古い本ですね。それも診断士用の専門書じゃないんですか。書名からしてちょっと難しそう。戦略とか、創造的とか・・・。私にもわかりますか、役に立ちますか?

この本の読み方

私 大丈夫です。農産物の栽培・加工方法や商品化、流通・販売方法、顧客の集め方などでいきづまっているあなたには、アイデアを出すいいトレーニングになると確信します。

ただ、あなたには、ある「読み方」をしてほしい。私のいう読み方をすれば、大変刺激的な本となるでしょう。

美由子さん 本と(ホント)?長谷川さんに影響されてつまらないダジャレが出てしまいました(笑)。でも俄然、興味が湧いてきました。

 読み方とは、本の中の「問題や事例に焦点を当て、読み進める」ことです。
使われる言葉が「戦略的意思決定」とか、「戦略的問題の診断」とか、硬い用語が多く出てくるので、気になりだすと10分と持たないでしょう。

でも、書かれている「問題」以外は読み飛ばして通読すると大変面白い。なるほどと感心した問題の前後の文章を重点的に読めば、十分です。
パズル的な問題がいくつもあり、飽きません。

興味深い問題とは

美由子さん その問題を教えてください。まさか前回言われた著作権上の制約がありダメ、なんて言わないでしょうね(笑)。

 リスク管理上から言っているんです。図は出せませんが、概要ならいいと思うので問題を3つ紹介します。ただ答えは本を読んでもらわないと・・・。
美由子さん わかりました。さあ・・・。

 最初の問題は「四本の木を互いに等距離に植えようとしている。どのように植えたらよいか。正方形の四隅に植えたのでは対角線の関係が出て等距離にならない。」

美由子さん この問題、テレビのクイズ番組で見ましたよ。私、わかります。次をお願いします。
 それは失礼。でも、すぐにはわからないだろう(失礼)あなたにヒントを出します。「平面にとらわれない」ことです。
美由子さん それって、解答を言ってますよね。私が解るからって、ズルーイ。

 ゴメン。気を取り直して二問目。
何もない部屋の天井から二本のひもが下がっている。二本を結びつけたいが、片方をつかんでいるともう一方には手が届かない。どうするか」

美由子さん 部屋には何もないか・・・。図がないとイメージしにくいですね。でも逆に、問題を図に描ければ、解決方法を思いつくかもしれない。

 その通り。図に描くことは、右脳で考えることにつながるからね。せっかくだからこれも考えよう。大きなヒントになってしまうが、「有るものを活かす」ことです。有るものとは、人間を含めてです。

美由子さん ハイ、もしかしたら・・・アレかな。

 最後の問題は、少し込み入っていて図に描かないと理解が難しいかもしれない。紹介しますか。
美由子さん ここまできたら、ややこしい問題でもお願いします!

 「何も置かれていない広い部屋のコンクリートの床に鉄パイプが垂直に置かれていると想定する。このパイプの中にはピンポン玉が一つ落ちていて、パイプの内径はピンポン玉の直径より1.5ミリだけ大きい。突き出したパイプの高さは10センチ」

「与えられている道具は、ひも30m、金づち、たがね、ビスケット1箱、針金でできたハンガー、電球、やすり。
そこで、ピンポン球やパイプ・床を壊したりしないでピンポン球をパイプから取り出す方法を考えなさい」

美由子さん 今の問題をメモ帳に描いてみました。こんな感じですよね。


 まあ~そんな感じだよ。イメージがつかめればいい。ポイントは、出された条件をうのみにしないことなんだ。
たぶんあなたには思いつかない方法があります。道徳的な制約で思いつかないのです。

美由子さん 道徳的制約ですか。そう言われると、解きたくなります。答え合わせをしたいので、購入したいのですが、手に入りますか。

 手に入らない本は紹介しません。この本も、前回同様ネットにて超格安で購入可能です。図書館で借りることもできるので、大丈夫でしょう。

まとめます。
私が考えるこの本の要諦(肝心なところ)は、問題を「統制(コントロール)可能な行動」と「統制不能な事象」とに分け、しっかり考え、解決策を見出すことです。

統制不可能要因とは

美由子さん 統制不能な事象って何ですか。長くなってごめんなさい。

 外部環境のことです。政治・経済・社会の動き、顧客や協力企業、競争企業の状況などで、社外に存在するため一般に統制は難しい。

戦略的問題解決とは何か

美由子さん 最後に、難しそうな「戦略的な問題解決」とは一言でいってなんですか。
 この本では、定義していません。ただ、文章を読み私が考えたのはこんなフレーズです。

「未来の生存機会を探り、重要な経営資源を配分して積極的な手を打つこと」です。

美由子さん 有難うございました。アイデア出しのトレーニングとして役に立つと思いました。
でも、具体的な経営事例の説明があればもっと良かったかな・・・。独り言です。

 しっかり聞こえましたよ。では、リクエストに応えて、最近私が関わっている「ある蕎麦屋がワイン用ブドウを植え、経営革新を目指している事例」を次回話します。
この本の続きで考えてみましょう。

美由子さん ほんとですか。蕎麦屋さんがワイン用ブドウを作っているなんて、聞いたことが無いです。それが「戦略的な問題解決」といえるのですか。

どんな経営を目指しているのか、次回も今から楽しみです。

この記事を書いた人

長谷川 正之
長谷川戦略マーケティング研究所所長

1955年生まれ、長野県埴科郡坂城町出身。長野県信連勤務後、政策研究大学院大学で公共政策修士を取得。長野県や上田市で統一ブランドの創設や農産物マーケティングを推進。また、小学校PTA会長や地域活動にも積極的に取り組む。現在、中小企業診断士・公共政策修士として「長谷川戦略マーケティング研究所」を立ち上げ、企業や行政のマーケティング支援に従事している。落語鑑賞が趣味で、「上に立つより前に立つ」や「やってみなければ幸運にも巡りあえない」という言葉が好き。
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