美由子さん 前回の予告で、「ネットワークづくり」について役に立つ、大変刺激的な本を紹介するといわれました。
私 はい。この頃、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の利用が常態化し、フェイスブックやツイッター依存の人が多いですね。
美由子さん 私もフェイスブックやインスタグラムをやっています。情報交換するのにとっても便利です。
私 SNSについては素人なのでパスです。
今回は、読者のあなたが限られた人材で販売促進や販路開拓等を行う際、どうネットワークをつくって役立てるか、改めて考えてみたいと思います。
紹介する著書は「遠距離交際と近所づきあい-成功する組織ネットワーク戦略」。西口敏宏著、2007年発行です。
狭い世間の不思議
美由子さん 「遠距離交際」?何か恋愛関係の本ですか、変わったタイトルですね。
私 世界や日本の事例を中心に書かれたネットワーク論です。興味深い本です。最初に書かれている「エピソード」を紹介しましょう。
「Aさんは取引先のパーティーに呼ばれ、都心のホテル会場に行った。ほとんど知り合いはいない。混んでいて偶然軽く肩がぶつかった紳士Bさんとお互い謝りつつ、自己紹介から会話が始まった。
数分後、BさんはAさんの妻の友人の夫であることがわかった。気が合い、ドリンク片手に話し込み、Aさんが転職先を探しているというと、数か月後にBさんの紹介で彼の親友の姉の夫が開設した企業に取締役で迎え入れられる、というオイシイ話まで飛び込んできた」
美由子さん こういう話はめったに無いけど・・いやあ、世間は狭いですね。
私 日本人はそういうけれど、英米では「スモールワールド(小さな世界)現象」 といわれ、専門的には「6次の隔たり」として知られています。
6次の隔たり
美由子さん それ、聞いたことが有ります。確か、何人経由して知り合ったかということですよね。メモ帳に書くと・・・
A⇒妻(1次)⇒友人(2次)⇒友人の夫B(3次)⇒Bの親友(4次)⇒親友の姉(5次)⇒姉の夫・経営者(6次)
5人の仲介者を経てつながり、めでたい話になったということですね。
私 これを「6次の隔たり」現象といいます。この出会いには一見、法則性はないように見えるけど、実験で実証されています。
美由子さん えー、本当ですか。
私 見知らぬ人に届くように手紙を出す実験を行った結果、平均6人を経て届いています。まさにスモールワールド(小世界)ネットワークの証明です。
数字で説明しましょう。手紙を出す人材が50人いるとして、それぞれ重複しないで出すと2次(2人)では50人×50人=2,500人。5人では50人の5乗で3億人ほどにつながるのです。
望ましいつながり方の構造
美由子さん そこから、私たちは何を学んだらいいのでしょうか。
私 結論から言うと、日常的なネットワークである「近所づきあい」の土台の上に、適度のランダム(不規則)性を持った「遠距離交際」(普段は意識せず接触も少ない遠い人とのつながり)で「スモールワールド・ネットワーク」を形成することが良い結果をもたらします。
美由子さん 人的ネットワークや、組織・地域等が資源の制約を超えて繁栄する秘訣は、スモールワールド・ネットワーク化にあるということですね。
それは、「運がよい」人とか「成功し続ける」組織は、濃密な近所づきあいをしつつ、他方ではいくつかの触手を遠くの知人に伸ばし、その知人のネットワークとも短い経路でつながっている。そこから得られる情報を巧みに利用している、といえますね。
私 そうです。身近な具体例で説明しましょう。以前、ブログに書いた「私の家の料理よ」(2017.3.23)の大豆料理講習会講師・北沢シェフと大豆生産者グループ「しおだSUNダイズ」のつながりは・・・
生産者グループ代表M氏⇒市議会議員K氏⇒私⇒農協県連職員Y氏⇒北沢シェフ
両者は「4次の隔たり」でつながりました。
講習会は市が日常的なネットワークで動かす「近所づきあい」で運営します。そのネットワークに、私から数えるとそれぞれ2次の遠距離交際(市会議員や農協県連職員は普段話さない人)でつながり、スモールワールド化したといえます。
ポイントは、「近所づきあい」と「遠距離交際」のバランスが大切です。
この大豆料理講習会がきっかけとなり、年間の料理教室に発展しています。
あるニュースでのつながり方
美由子さん わかりました。まとめに入る前に、最近、上田市の「ふるさと納税」で雹(ひょう)害りんごを返礼品にしているってNHKのニュースで見ました。
市はNHKとどうつながったんですか。興味があります。
私 10月3日のNHKニュースウォッチ9で報道され、大変な反響を呼んでいます。長くなるので、その話は次回に・・・。
美由子さん NHKとつながるって、すごいですよね・・・。説明を期待してます。
この記事を書いた人

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長谷川戦略マーケティング研究所所長
1955年生まれ、長野県埴科郡坂城町出身。長野県信連勤務後、政策研究大学院大学で公共政策修士を取得。長野県や上田市で統一ブランドの創設や農産物マーケティングを推進。また、小学校PTA会長や地域活動にも積極的に取り組む。現在、中小企業診断士・公共政策修士として「長谷川戦略マーケティング研究所」を立ち上げ、企業や行政のマーケティング支援に従事している。落語鑑賞が趣味で、「上に立つより前に立つ」や「やってみなければ幸運にも巡りあえない」という言葉が好き。
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