先日、とある百貨店のバイヤーさんに言われました。
「この商品に”無添加”表記するのはNGです。」
この商品とは農産物の加工品。裏面を見ても、添加物や着色料など一切入っていません。一見、無添加に見えるのですが・・・。でもバイヤーさんは「これは本当に無添加か分からない」と主張します。
問題は不透明な原材料にあります。原材料が、どのように製造(生産)されたか分からないということなのです。
栽培過程で使われる農薬も、厳密なことをいうと、何かしらの添加になります。加工業者や6次化事業者が、原料仕入れの段階で、その安全性をしっかりチェックできていないこともあります。原材料が農産物ではなく、そもそも加工品で、その作り方が明確でないケースもあります。
そこをバイヤーさんは突いてきているのです。
言われてみれば「無添加」という言葉はとても曖昧。
一般的なイメージでいうと、加工段階で化学的な添加物を入れいないことを指します。特に、小規模事業者さんは、大手との差別化を図るため、無添加で勝負しているとことが多いです。僕だって、商品開発するときは、できるだけ無添加を心がけます。そして無添加という言葉を、無意識に使ってしまいます。あなただってそうかもしれませんね。
今、その「無添加」の定義が揺らいでいます。
たしかに数年前からその兆候はありました。当時僕が販売していた加工品は”無添加”だったのですが、それに対してバイヤーさんにこう言われたことがあります。
「無添加を証明しろ。」
え、どうやって?(困惑)。その時は、苦肉の策として、代表的な添加物が含有されていないことを、検査機関で確認してもらいました。添加していないものは、もちろん検出されません。
そして今「すべてを明確に証明できないなら無添加を謳うな」になってきています。
理由は上記で述べたように、原材料生産段階での添加物が分からないこと。そしてもう一つ大きな理由として、消費者の存在が挙げられます。
「無添加表記NG」が表すもの・・・
消費者が、細かいところまで突っ込みを入れ、確認してくることがあるのです。見方によってはクレーマーということになりますが、それだけで片づけることができない、大きなトレンドが出てきていると僕は見ています。
消費者の見る目がますます厳しくなってきており、そしてすべての原材料や加工プロセスを把握しておきたいという欲求が高まっているのです。
これは、僕がブログで頻繁に述べている「クリーンラベル」の傾向。
日本ではまだ馴染みのない言葉ですが、世界的には一大トレンドとなっています。安心安全な原材料のみが使われていることと、その原材料の生産工程や、加工品の製造プロセスの透明性を、消費者が強く求め始めているのです。
国内でも、まさに「クリーンラベル」が始まったと言って過言ないでしょう。
「無添加」という一言で、安心安全を語れる時代は終わったのです。
– 田中良介
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この記事を書いた人

- 世界の最新トレンドとマーケティングに精通しており、食品企業の商品開発やマーケティング活動を支援している。自身もかつては食品企業で、苦労しながら商品開発と販売をしていた経験あり。 日本と世界をつなぐ架け橋となり、食品企業のレベル向上に貢献することがミッション。 海外での講演活動にも精力的に取り組む。
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