紹介本シリーズ⑩「あの広告はすごかった!」

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 美由子さんに約束した「広告」本の紹介です。
美由子さん はい、書店にも関連本がたくさん並んでいます。

 そこで、今回は「あの広告はすごかった!」と心に残る選後のベスト広告500を掲載した本を紹介します。

「あの広告はすごかった!」安田輝男著です。

著者は、博報堂の制作ディレクターで、広告業界に精通しています。20年前に出版されましたが、手に入り易い本です。

広告は、「考え方の正しさ(市場分析・消費者分析・売場分析・社会分析など)」だけでは効果を発揮しません。

商品を消費者の心理にどう訴えるか。「アイデア」が備わって初めてコミュニケーション効果が飛躍的に高まるのです。

美由子さん 今回は長谷川さんから今までにない宿題が出ました。事前に読んできて、お互い気に入った広告を5点紹介し合うというもの。

500点の中から、ここで示せない「写真やイラストで見せるもの」を除いて、言葉中心と思うものを5つ選ぶのは大変でした。

 最近、漫才の全国一を決める大会をテレビで見ましたが、審査員と私の意見はことごとく不一致でした。

自分は自分、気にせずいいと思うものを自由に言い合いましょう。
では著者の区分を参考に、選択理由は簡単にして感覚的にいきます。

新しい考え方や表現

美由子さん まず、私が選んだのはこれです。

「本日は、お日柄のいい仏滅である」(尼崎市総合文化センター 結婚式場:1991年)

結婚式に仏滅はタブー。でも発想を「全ての結婚式はお日柄がいいのだ!」と考えたら・・という提案は斬新でした。

ネーミング

 私は、今は誰もが知っているフレーズをあげます。

「通勤快足」(レナウン:1987年)

最初のネーミングは「フレッシュライフ」。新しい防菌防臭加工の紳士用靴下なのに、売れませんでした。ところがネーミングを変えたとたん、爆発的に売れたのです。

時代を巧みにキャッチ

私 かつて、男は寡黙をよしとした時代がありました。そんな時代を代表するのが

「男は黙ってサッポロビール」(サッポロビール:1970年)

美由子さん 私は、働く女性に注目し出したころの

「女だって、女房が欲しい」(NTT:1985年)

NTTが働く女性に留守番電話の新機能をアピールしたもので、女性の心情をつかんでいます。

 私からもう一つ。子供が増え住宅事情が厳しいころ。今では考え難いが、こんな広告がありました。こういうのが私の好みです。

「子供がふえたぶん、部屋が狭くなってしまった。もちろん、子供のせいじゃない。私と妻のせいだ」(リクルート『住宅情報』:1984年)

パロディ

美由子さん 遊び心をくすぐる広告として、私が気に入ったのはこれです。

「堀田地下夫」(小松製作所:1986年)

広告の名刺には、会社名と部署(地下建機営業部)と名前が書いてある。
地下の環境を損なわずに地下埋設工事をスピーディにできるとアピールする広告です。
「地下を掘った」のパロディで、楽しいですね。

 私はこれを選びました。

「嫉妬商品」(松下電工:1989年)

もちろん「ヒット商品」のパロディです。嫉妬の対象商品は「電話でお風呂も沸かせるセキュリティホームテレホン」です。奥さんが隣の家にあるといってのぞきこんでいます。

常識を逆手に

美由子さん 家族のコミュニケーションを大切に、との思いを込めた広告がこれです。

「不便になろう(停電のススメ)」(日本経済新聞社/連合広告:1992年)

電気やテレビを消して、ローソクをつけて、家族でテーブルを囲む。
「子供のころの停電のワクワクしたあの夜を子どもたちにも経験させてあげて下さい」という社会派広告。
今でも通用しますね。

 最後の5つ目は、風刺性を持った広告です。

「諸君。学校出たら、勉強しよう」(日本経済新聞社:1982年)

華やかなキャンパスライフを送ってきた学生の心にグサッとくるフレーズです。「社会人になったら、しっかり新聞読んで勉強しよう」という誘導広告ですね。

美由子さん 私の5つ目は、常識を吹っ飛ばせという、きっぷがいいものです。

「時価が恐くて寿司が食えるか」(港すし:1992年)

新潟県の老舗「新潟 港すし」の胸のすくようなフレーズ。一度は言ってみたい!

 以上、お互い5つ上げてみましたが、楽しかったでしょう。折に触れて見ていると、柔軟な考えが維持できるよ。

ところで、美由子さんの写真を含めた全体の広告グランプリはどれ?
500点の中から勝手に決めましょう!

選んだグランプリ作品は

美由子さん エッ・・・1つだけあげるのはしんどいけど、思わず笑っちゃった作品にします。この写真とフレーズが強烈で、夢にまで出てきたんです。

「味の素のダイエット甘味料」の広告です。写真は、モナリザがコンピューターグラフィックスの仕業で大変ふくよかな女性に変身。

そして、そこに付けたフレーズが傑作。モナリザなら「レオナルド・ダ・ピンチ」。それをパロディ化して・・・

「コウナルト・ザ・ピンチ」

笑いました。私の選んだ大賞です。
 Me too(笑)

そういえば、つい先ごろ、ある温泉に入ってあまりにも気持ちよかったので、アイデアがフッと浮かびました。
アイデア出しの練習で書きなぐったものを次回にチラッと見せますね。

美由子さん ウーン、ではチラッとだけ見せてください(笑)。

この記事を書いた人

長谷川 正之
長谷川戦略マーケティング研究所所長

1955年生まれ、長野県埴科郡坂城町出身。長野県信連勤務後、政策研究大学院大学で公共政策修士を取得。長野県や上田市で統一ブランドの創設や農産物マーケティングを推進。また、小学校PTA会長や地域活動にも積極的に取り組む。現在、中小企業診断士・公共政策修士として「長谷川戦略マーケティング研究所」を立ち上げ、企業や行政のマーケティング支援に従事している。落語鑑賞が趣味で、「上に立つより前に立つ」や「やってみなければ幸運にも巡りあえない」という言葉が好き。
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