美由子さん 前回のブログで言った「このシャルドネを飲んだ感想」です。
フレッシュな果実味や酸を素直に引き出し、新緑のような柑橘系の青リンゴの香りがするワインです。
私 ソムリエのような答えですね。それって、ネットで出ているこの銘柄の感想に酷似していますよ。
美由子さん バレましたか(笑)。先ほどトイレに行った時、スマホで調べました。
やっぱり表現は難しいので。でも私はほんとうに清々しく美味しいと思います。
私 ありがとう。それでいいんです、難しく考えない。
誰のワイナリーで作られた何というワインか答えられますね。
ワイナリーのオーナーは
美由子さん はい。長野県東御市在住のエッセイスト玉村豊男さんで、経営するヴィラデストワイナリーの「プリマベーラシャルドネ」です。
このワイナリーのシャルドネは、違う銘柄ですが、昨年の伊勢志摩サミットで日本を代表するワインの1つとして提供されたんですよね。
紹介する本
私 その玉村さんが書いた「千曲川ワインバレー」という本を紹介します。
副題は、「新しい農業への視点」です。
玉村さんとは、私が県職時代に仕事を通じて知り合い、今もおつき合いいただいている間柄です。この本は、長野県が平成25年に策定した「信州ワインバレー構想」のベースとなりました。
美由子さん 何が新しい農業なのか、教えてください。
私 この本の「第三章 ワイン農家は新人類」と、「第五章 農業はライフスタイルである」でワインづくりを通して語られています。
ライフスタイルは「農的生活」
例えば、「収入源として農業という職業を選ぶのではなく、農業に携わる生活というものを自らのライフスタイルとして選びたい」という人たちが就農しているといいます。
美由子さん ヘェー、ワインでいえば、いろんな職業の方が、自分好みのワインを飲みたいために、ワインぶどうの栽培や醸造をライフスタイルにしたいと思っているんですね。
私 でも、ワインぶどうの栽培や醸造の技術、ワイナリー建設計画策定や経営の知識等を習得するには時間と資金を要します。県や市町村のバックアップが不可欠です。
信州ワインバレーの現在・今後
美由子さん 玉村さんは、この本のあとがきで、「信州ワインバレー構想」をこう表現しています。
「千曲川ワインバレー」「桔梗ヶ原ワインバレー」「日本アルプスワインバレー」「天竜川ワインバレー」からなる一大ワイン地帯とする壮大な構想
実際の展開はどうなんですか。
私 県庁の知人に聞いたところ、書かれている長野県の「ワイン生産アカデミー」(基礎講座)は平成25年に開講し、昨年度までに修了者は150名ほどになります。
受講生のうち県外者はなんと4割を占め、女性だって2割います。
県内のワイナリー数は、構想発表時は25でしたが、現在は36と大幅に増加しています。
美由子さん 他に、玉村さんが開講している千曲川ワインアカデミーや塩尻市ワイン大学もあり、教育機関が充実していますね。
私 玉村さんは、2つ目のワイナリー「アルカンヴィーニュ」を作り、小規模のワインぶどう栽培者から委託醸造を受け、ワインづくりを支援しています。
ワインは土地(テロワール)ごとに異なるので、飲み比べて違いを味わってもらったほうが魅力的です。本には、ワイナリーは集積するほど良いとありますが、競争より共存ですね。
千曲川ワインバレー流域の8市町村は広域特区を形成しており、連絡協議会を結成して小規模ワイナリーを行政と民間がシステム的にバックアップする体制ができつつあります。
美由子さん 信州大学も千曲川ワインバレー分析センターを設置しました。また、しなの鉄道のワイントレインも毎週土日に運行しています。
さらに最近、ビッグなニュースが飛び込んできました。
大手ワインメーカーのメルシャンが来年、上田市に待望のワイナリーを設置するとのこと。ワイン産業拡大に向け、大きな弾みになると思います。
また、鉄道・バス・タクシーという交通機関が連携し、軽井沢に来る女性中心のワイン愛好者を呼び込むワインツーリズムが期待されますね。
私 千曲川ワインバレーに触発され、他のバレーの動きも見えてきました。天竜川ワインバレーは、「シードル」「やまぶどう」に特色を見出そうとしています。
日本アルプスワインバレーも、行政が連携し広域特区を申請するとのこと。
ワイン産業による地域経済の活性化が確実に進みつつあると実感しますね。
最後に
美由子さん 最後に何かあればお願いします。
私 この本に出てくる島崎藤村の素敵な詩を紹介します。
一葉は花は露ありて
風の来て弾く琴の音に
青き葡萄は紫の
自然の酒とかはりけり 若菜集
美由子さん 小諸市に在住した藤村は、ワインと出会っていたんですね。
千曲川ワインバレーの地が、ワイン文化を発信していくリード役を果たせ
そうな気がしてきました(^▽^)/。
この記事を書いた人

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長谷川戦略マーケティング研究所所長
1955年生まれ、長野県埴科郡坂城町出身。長野県信連勤務後、政策研究大学院大学で公共政策修士を取得。長野県や上田市で統一ブランドの創設や農産物マーケティングを推進。また、小学校PTA会長や地域活動にも積極的に取り組む。現在、中小企業診断士・公共政策修士として「長谷川戦略マーケティング研究所」を立ち上げ、企業や行政のマーケティング支援に従事している。落語鑑賞が趣味で、「上に立つより前に立つ」や「やってみなければ幸運にも巡りあえない」という言葉が好き。
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