生産者が持つ言葉の深み

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ソムリエと生産者

先日、ソムリエの方と話をしていて、とても興味深いことを聞きました。ソムリエとは、ワインや葡萄のことに詳しく、巧みに語ることのできる人ですよね。

「これはフランスのブルゴーニュ地方のxxxという生産者がつくったワインで、ブドウの品種はシャルドネで、洋ナシのような香りが・・・・」

まー、よくそんなにスラスラ、ペラペラと話せますな~、と僕はいつも感心してしまうのですが、先日話した人から意外なことを言われたのです。そのソムリエ曰く、自分の言葉には深みがないというのです。

いったいなぜ??

そのソムリエの答えは

「生産者と比べて、私の自分の言葉には深みがないと感じます。やはり作り手にしか語れないことがあります。」

とのことでした。彼が言うには、同じ言葉を使っても、生産者のほうが深みがあり、伝達者であるソムリエにはそれをマネできない、ということなのです。

その方は、実は今はブドウを栽培しています。作り手としての、深みを手に入れたかったとのことです。行動力のある方です。

世間一般的には、生産者は販売活動が苦手で、営業トークや自己PRがあまり上手くない・・・というようなことが言われます。農業の世界ではそれが顕著です。

僕自身、さまざまな生産者さんとお付き合いがありますが、実際、営業に苦手意識を持っている方が多くいます。あなたもそうかもしれませんね。しかし、上で述べたソムリエの方は、自分は生産者のようには語れないと言っているのです。生産者のほうに分があるのです。

生産者であるあなたにも、この事実をぜひ知ってほしいと思います。本当は、あなたの商品説明や営業トークが一番深みがあり、説得力があるのです。あなたが最も商品のことや、製造方法を知っているからです。商品を我が子のように想っているからこそ、出てくる言葉があります。

どれだけ3次事業者(販売者)が、あなたの商品のことを語り、代弁者として上手く売ろうとしても、それには限界があります。3次事業者は、表面的な言葉使いには優れていますが、そこに深みがあるかというと、物足りません。ムリがあるのです。

だから、あなたは自信をもって、自分の商品について語っていいのです。ペラペラしゃべれなくても良いし、たどたどしくても構いません。たとえ朴訥とした話かたでも、そこには生産者しか表現できない深みが間違いなく存在します。あなた以外、誰にもマネはできません。

事実、生産者が店頭で試食販売をすると、お客さんは喜ぶし、店頭が盛り上がりますよね。

大切なのは、自信を持って語ること。
それが秘訣です。

– 田中良介

この記事を書いた人

田中良介
田中良介
世界の最新トレンドとマーケティングに精通しており、食品企業の商品開発やマーケティング活動を支援している。自身もかつては食品企業で、苦労しながら商品開発と販売をしていた経験あり。 日本と世界をつなぐ架け橋となり、食品企業のレベル向上に貢献することがミッション。 海外での講演活動にも精力的に取り組む。
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