販路開拓、ちょっと待った!

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 3
直売所

近所の直売所で、商品を販売している生産者さんは多いと思います。でも販売できる量は限られているので、いずれは都市圏へ販路開拓を進めようと考え始めるのが自然な流れなようです。

そのステージの生産者さんが、よく相談にきて、販路開拓の一歩目を学んでいかれます。先日もある方に、販路開拓のやり方をお教えしました。彼は6次産業化に取り組んでおり、商品も素晴らしいものでした。その方は「やってみます!」と意気揚々と帰られました。

そのあと、僕のなかでなにかが引っかかり、考えてしまいました。その生産者さんにとんでもないことを教えてしまったのではないかと思い始めたのです。

本当はまだ販路開拓すべきではないかも・・・。もし彼が販路開拓のあらゆる手法を使って、取引先を広げてしまったら、彼のビジネスは破綻するかもしれない・・・。

慌てて電話をして、もっと話を聞いてみたところ、やはり僕の直観は当たっていました。販路開拓へ向けてテンションの上がっていた彼をなだめ、もっと下地づくりをしようということで納得してもらいました。

じつは、彼の商品の価格設定に問題があったのです。あらためて原価を計算してみると、利益がほとんど出ていないことが分かりました。もし販路開拓がスムーズに進んでしまうと、売れば売るほど赤字になる可能性がありました。

この罠に陥る生産者さんが多くいます。

地域の直売所の手数料は、販売価格の15~20%が通常ですよね。そのくらいであれば十分利益を確保できるでしょう。しかしスーパーや百貨店や商社に販売していく場合、小売価格の40%くらい取られます。あなたの取り分は60%です。(これを掛け率と言います。)

あなたは卸価格を設定して、見積もりを提示することになります。取引先の業態や地域などによっても掛け率は変わってきます。

掛け率が60%になると、利益幅が急に小さくなります。場合によっては赤字になることもあります。直売所とは大違いですよね。販路開拓をするということは、改めてあなたの商品の価値と価格を考え直さないといけない一つのタイミングであると言えます。

利益がほとんど出ない商品を、もしあながた大量に売ってしまったら、悲惨なことになります。量産して働けども働けども、なにも手元に残らないからです。社員やスタッフは疲弊します。そして商品クオリティは、どんどん下がっていき、クレームが出はじめます。品質向上のための投資ができないからです。

なにがなんでも粗利!

あなたが絶対把握しておかなければならない会計上の数字があります。難しい数字ではありません。

それは粗利です。

粗利とは商品価格から原価を引いたものをいいます。原価とは原料の仕入れコストや生産にかかるコストです。(厳密には農業の場合は生産にかかる人件費もここに入ります。)

企業活動にはさまざまなお金がかかりますが、そのすべてが粗利から支払われます。もし粗利が十分出てないと、資金繰りが厳しくなります。だから粗利を常にウォッチしましょう。粗利の出ない商品を、なにも考えずに売りまくると、たいへんなことになってしまうことは、想像に難くないと思います。

もちろんあなたの言いたいことも分かります。

「とはいっても価格をいくらすればよいのか?」ってことですよね。

それはあなたの商品の魅力やターゲット顧客によっても変わってきます。詳細を知りたい方は、以下の記事をご一読ください。

いくらに設定したらよい?

ちょっとヒントを言うと、まずは思い切って直売所で値上げしてみましょう。それでも売れるか観察してみるのです。値上げしても、売れ行きが変わらないことはよくあります。むしろもっと売れるようになることすらあります。あなたの商品の価値が一体どこにあるかは、テストしてみないと分かりません。マルシェなどの直接販売を通しても、価格テストはできます。本格的な販路開拓へ向けて、まずは下準備です。

いろいろ書きましたが、これだけは絶対に忘れないでください。

「その商品、粗利は出ているか?」

もし十分に出ているのなら、販路開拓ゴーサインです。

– 田中良介

この記事を書いた人

田中良介
田中良介
食品企業の販路拡大や6次産業化を支援。産地に軸足を置き、現場視点でのサポートが特徴。自らも一農業者として、6次産業化を地を這いつくばりながら進めた経験あり。世界の食品トレンドにも精通している。
2015年 新潟市主催(日本食糧新聞社運営)の6次化大賞グランプリを受賞
2016年 中央サポートセンター(全国版)の6次産業化プランナー認定
2017年 日本食糧新聞社 特派員としての活動も開始
2017年 世界最大の食の見本市「ドイツ・アヌーガ」へプレスとして参加
  • このエントリーをはてなブックマークに追加