ふっかけられた喧嘩のゆくえ

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5月6日のゴールデンウィーク最終日に起こったことです。
突然でした。心構えもなく喧嘩を受ける羽目になったのです。ことの成り行きを少し長くなりますが、話しましょう。

上田市が発酵関わりのイベント(日本酒・ワイン・味噌食品の飲食と販売)を主催し、大変な混みようでした。

併せて、地元の棚田で酒米を作り、酒蔵で醸造して日本酒に、酒店で販売・居酒屋で提供する一連のドキュメンタリー映画を上映したのです。

上映後、私が司会役で出演者たちとトークセッションをしました。監督はじめ、生産者グループ代表、酒蔵杜氏、酒店店主、居酒屋経営者、ソムリエの計6人が勢ぞろい。

目的は、「地産地消を多彩な人のネットワークで地域循環する大切さ」を語り合うことです。

映画では言い足りなかったこと、出演者同士による質問等、1時間ほど活発なやり取りをし、最後に会場から質問を受け終了という段取りでした。

ところが、その最後の質問者から喧嘩をふっかけられたのです。
その方(彼)はいきなりこんな質問をしました。

「今回の映画に直接関係ないが、”棚田のサスティナビリティ”について、司会者や出演者の考えを聞きたい」

そこまでなら私は、自分はさておき、どうふったらいいか考えればいいと安易に思ったのですが、思いがけない言葉が待っていたのです。

「特に聞きたいのは、司会の長谷川さんの意見です」

大きな声で喧嘩腰の言い方です。周りの参加者もシーンとなりました。
エーッ、何で司会に聞くの、公務員の私に。それって掟破りじゃないの。内心ムッとしましたが、立場上黙っているわけにはいきません。

今回のテーマに関連づけてこんな内容を返しました。

棚田の持続可能性についてですね。地域の農家は高齢化し維持できなくなっています。棚田に価値を見いだす内外の人たちと今後も広くつながりながら関係性を大切にし、等身大の取り組みをしていくことではないでしょうか」

聞いた後の彼の言葉は強烈でした。大きな声で・・・「違うな!」

私は・・・絶句。公の場で正面から全否定された記憶が無い(記録ではない)ので、どう対処すべきか1~2秒間高速回転で考え、出した結論は、これ以上彼を刺激しないこと

満足いく回答ができなかったことを素直に詫びました。公務員の性(さが)として「ことを荒立てない」を第一に考えた次第。

他の出演者も意見を述べましたが、彼の反応はなく、腕を組んだままでした。
最後に、参加者全員を前に私はこんな言葉で締めくくりました。

「今日、映画上映に集まった皆様は、”つながる意志”を持った方たちです。このご縁を大切にしていきましょう」(彼はあんな質問や態度からして”つながる意志”を持っていないだろう、当てこすりも含めて大きな声で言いました・・・イヤな自分ですネ)。

終了後、これまた思いがけない場面に遭遇します。
喧嘩を売った(と私や参加者は思っている)彼が歩み寄ってきて、「先ほどはすいませんでした」と謝るではありませんか。サプライズです。

よく見ると、顔が赤いので、同時開催している日本酒・ワインを飲んで勢いがついての発言かと、合点(ガッテン)しました。

なぜ彼が喧嘩腰の質問をしたのか。振り返って見ると私には心当たりがあります。
司会しながら言った言葉です。

「生産者は、英語ではプロデューサーという。文字通り日本語的な意味のプロデューサーになって地域のいろんな人と関わり仕掛けてほしい」
(関連記事:6.6.30「プロデューサーということば」

この言葉が彼を挑発したと私は思っています。後で聞いたのですが、彼は国内トップクラスの広告代理店出身者とのこと。

彼はプロのプロデューサーだったので、安易にプロデューサーという言葉を使ってほしくないと思ったのでしょう(推測です)。私を標的にしたい欲求が沸き起こったことは想像に難くありません。

よく考えれば、誰も質問せず、何事もなく予定調和で終わったであろう流れを変えてくれた彼に、本当は感謝しなければなりません。「緊張して考える」場面を提供してくれたからです。

翌日、さっそく彼から自己紹介のメールが届きました。彼も”つながる意志”を持っていたのです。
次に上田に来た時に会う約束をしましたが、今度は彼の思うサスティナビリティを聞き、議論するのが楽しみです。

それにしても、久しぶりに緊迫したネットワークに関する仕事でした。
まさしく、「熱闘ワーク」でした(笑)。
(関連記事:6.5.28「地産地消はネットワークで勝負!」)


※ 過去のブログ記事はマーケティング本形式の「農業の売れる仕組みづくり」
https://agri-marketing.jp/masayuki-hasegawa-book-summary/
をクリックしてお読みください。お待ちしています!:lol:

この記事を書いた人

長谷川 正之
長谷川戦略マーケティング研究所所長

1955年生まれ、長野県埴科郡坂城町出身。長野県信連勤務後、政策研究大学院大学で公共政策修士を取得。長野県や上田市で統一ブランドの創設や農産物マーケティングを推進。また、小学校PTA会長や地域活動にも積極的に取り組む。現在、中小企業診断士・公共政策修士として「長谷川戦略マーケティング研究所」を立ち上げ、企業や行政のマーケティング支援に従事している。落語鑑賞が趣味で、「上に立つより前に立つ」や「やってみなければ幸運にも巡りあえない」という言葉が好き。
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