商品開発をするにあたって、あなたが意識していることに、「時短、手軽さ」があると思います。この忙しい現代社会で、中食市場が伸びていることから分かるように、お惣菜や冷食など、簡単に食べられる食品が、大きなトレンドであることは間違いありません。
しかしその先にあるものはなんでしょうか?今日は「時短や手軽さ」を一歩進めたコンセプトをお伝えたいと思います。これからの商品開発でこれを意識できれば、大きな差別化に繋がります。ポイントは3つあります。
1.面倒なことはしたくないが、自分でやった感を得たい
2.作り手の製造プロセスに程よく関わりたい
3.自分にぴったりの商品が欲しい
では順番に見ていきましょう。
1.面倒なことはしたくないが、自分でやった感を得たい
先日のブログで、中食と内食の間に位置する商品が増えてきていることを述べました。それにも関係しています。中食とは、消費者のために「手とり足取り」やってあげる食品です。たとえば電子レンジでチンすれば、すぐに食べられる商品です。でもこのような食生活が続くのは味気ないんもんです。楽しくありません。まったく料理しないのって(少なくとも田中家では)なんだか罪悪感すら感じます。
今の消費者は、主導権を取り戻したいと考え始めています。
レシピもスパイスも基本食材も用意されているが、肉と一部の野菜だけは自分で加えて料理する類の商品です。中食でもあり内食でもあるコンセプト。
自ら調理してプロの味を再現。この場合、主導権は消費者側にあります。いや、あるように見せないといけません。売り手の役割は、お客さんをそっと手伝ってあげること。さりげなく、気づかれないように。
2.作り手の製造プロセスに程よく関わりたい
僕自身、様々なワイン葡萄生産者さんを取材させてもらっていますが、大半の作り手さんが、収穫体験ボランティアを募集しています。そして多くの消費者が東京から、わざわざ長野の交通の便の悪い場所まで駆け付け、農作業を手伝ってくれます。都会の人にとってストレス発散になります。
同時に、そこに見える大きな欲求があります。作り手のプロセスに関わりたいというニーズです。自分が収穫したブドウが、1年後にワインになる・・・。考えただけでもワクワクしますよね。
また、僕がブドウ農園で働いていたときにやったことをご紹介しましょう。剪定で切り落としたブドウ樹の小枝を、加工品注文をくれたお客さんに同梱して送りました。剪定枝は、実は生きており、水挿しにすると葡萄の新芽が出てきます。その栽培マニュアルを添付して送ると、とてもお客さんが喜んでくれるんですよね。
これはお客さんを葡萄栽培のプロセスに巻き込む一つの方法です。本来捨てていた枝なので、追加コストは0円です。
ポイント、お客さんは「楽しみながら程よく関わりたい」と思っていることです。そこの距離感を見誤ってはいけません。
3.自分にぴったりの商品が欲しい
現代社会では顧客ニーズは多様化しています。たとえば一般的な傾向として、小パッケージ商品が求められることが多くなっています。しかしコストコに行くと、すべての商品がアメリカンな大型サイズです。そしていつもお客さんでごった返しています。
栄養素についても、たんぱく質を求める人もいれば、ポリフェノールに魅力を感じる人もいます。スーパーフードという言葉自体に引かれる人もいます。ラベルデザインだって、ターゲット顧客によって求めるものは異なります。お客さんは自分にぴったりの商品を求めているのです。
小規模事業者であるあなたが、これらすべてのニーズに対応することは不可能。だからまず考えないといけないのが、あなたは誰に商品を売っていきたいかということ。ターゲットの的をできるだけ絞りましょう。お客さんの意見を聞きながら、彼らにぴったりの商品を開発するのです。これが、均一な大手商品だけが勝てるわけではない理由です。スピーディで柔軟なカスタマイズ対応は、小規模事業者のほうに分があります。
相手が百貨店などのバイヤーさんなら、彼らのニーズに見合ったサイズ、デザインを提供することもできます。過去に僕も、特定の百貨店向けに新ラベルデザインを制作したことがあります。そのおかげで、大きく売り上げを伸ばせました。これも個別ニーズに応える施策です。
◇◆
これら新しいニーズは、簡便さが行き過ぎた中食市場の反動から生まれてきたとも言えます。ただしこれらは「時短や簡便さ」と対立する概念ではありません。プラスアルファされるべきコンセプトです。
・便利かつ、主導権がお客さんにある商品
・便利かつ、お客さんに関わりや体験を提供できる商品
・便利かつ、個別ニーズも満たした商品
ぜひあなたのビジネスに取り入れてみてください。
– 田中良介
この記事を書いた人

- Innova Market Insights社の日本カントリーマネージャー。世界の最新トレンドとマーケティングに精通しており、食品企業の商品開発やマーケティング活動を支援している。自身もかつては食品企業で、苦労しながら商品開発と販売をしていた経験あり。 日本と世界をつなぐ架け橋となり、食品企業のレベル向上に貢献することがミッション。 海外での講演活動にも精力的に取り組む。
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