放牧黒豚、ありがとう!

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町内に最近できたワインレストラン・オーナーから、「貴重な豚肉を入手した」との情報を得た。それも残りわずか。

このところ、我が家での存在価値が低下している私は、即座に機敏な行動に出た。娘2人と妻との4人で昼食を予約。もちろん、この豚肉を食べるため高めの料金設定にも目をつぶる。

豚肉嫌いの下の娘もなだめすかして連れて行き、ダメなら他のメニューにスイッチすると言って彼女に一口食べてもらった途端、発した言葉が次のひとこと。

「これは豚肉ではないよね」。続けて「ウ~ン、美味しい」。滅多に見たことのない笑顔(幼児期以来か)。

牛肉しか食べないという世間に顔向けできない育て方をしてしまった私は、少し安堵の表情を浮かべた(と思う)。全員が美味しいの連発、シェフに感謝の言葉を告げて満足して帰る。

久々にこの豚肉を生産している知人の関泰秀さんのフェイスブックを見ると、放牧して育てた5匹の黒豚の商品セットは24セット中残り4セット。

価格は11,290円(いいにく)、娘の笑顔をもう一度見れると思えば安いものだ(と思うしかない)。電話をかけゲット。

さらに彼と飲む機会を持ち、今は閑散とした放牧場を案内してもらった。

彼は、他県から長野県の大学に入学し、東御市のワイナリーに勤めていたが、2011年3月11日を契機に、自分で安心・美味しい食をつくれるようになりたいと農業を志した。試行を重ね人とのご縁をいただき、放牧養豚に出会う。

悪臭を気にする住民もいて、用地の確保に難儀したこと。あきらめかけていた時、救いの手を差し伸べてくれた地域の先覚者。柵作りに大変世話になった地域の建設業・製造業の方々のことを一気に話してくれた。

その都度、出会った方たちは、関さんの情熱を持って放牧養豚をしたいという真摯な姿を見て協力・支援をしてくれたのだと思う。
その辺の事情は彼のフェイスブックに「コショノバン物語」としてに詳しく書かれている。

「耕作放棄地こそが放牧養豚の適地」という関さん。
豚は土を鼻で掘り起し、雑草や木の根や土そのものを喰らいミネラルを摂取し、排泄をして土を豊かにし再生してくれる得難いパートナーである。

豚は汗腺が無く汗をかけないので、発汗による体温調節は「泥浴び」だ。ご飯を食べ体温が上がると泥の中に横たわる。泥には紫外線から皮膚を守り菌や寄生虫から身を守る効果があるという。

主食の配合飼料のほかに、地元産の桑、アンズ、プルーン、ナシ、リンゴ、ドングリ、クルミ、米他、豊富な地産を地消して大きく育った美食家の豚。

愛情をこめて育てられた黒豚は、健康に成長しその生涯を私たちが受け継ぎ、命をいただく、感謝あるのみ。

放牧でストレスフリーを実現し、耕作放棄地再生、廃棄物ロスの解消、循環型農業の構築、自給率向上等を使命とする彼の試みは始まったばかり。

来年は、バークシャー種の黒豚を5匹から15匹ほどに増やす計画という。料理人たちの期待は大きいし、私を含めお客様も待ち遠しい。私も来年は子豚からの成長を見続け支援したい。

「コショノヴァン」という名前は、フランス語でワイン豚という意味だそうだ。

体重を気にしている娘に、豚の体脂肪率は15%ほどで、人間ではモデル並みということを教えてやろう。感謝して食べてくれるはずだ。

そして、私とワインも一緒に飲んでほしい。

この記事を書いた人

長谷川 正之
長谷川戦略マーケティング研究所所長

1955年生まれ、長野県埴科郡坂城町出身。長野県信連勤務後、政策研究大学院大学で公共政策修士を取得。長野県や上田市で統一ブランドの創設や農産物マーケティングを推進。また、小学校PTA会長や地域活動にも積極的に取り組む。現在、中小企業診断士・公共政策修士として「長谷川戦略マーケティング研究所」を立ち上げ、企業や行政のマーケティング支援に従事している。落語鑑賞が趣味で、「上に立つより前に立つ」や「やってみなければ幸運にも巡りあえない」という言葉が好き。
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