「小さな大巨人」

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1月のある出来事が私の心の中で発酵してきましたので、今回記します。

私は地元小学校の歴代PTA正副会長会の会長を現在務めていますが、 昨年聴き感動したジャズの演奏を全校生徒に聞いてもらう機会を持つことができました。

ダメもとでミュージシャンに接触。ご本人には一度しか会っておらず、何回か熱意をもっ てメールのやり取りをしたところ、思いがけずOKをもらいました。 費用は私たち夫婦が持つということで、PTA正副会長会や学校側の了解を得てスムーズに実現したのです。

来ていただいたのは、日本を代表するサックス奏者と、コンビを組むピアニストのお二人です。 前泊していただき、色々なお話をお聴きし大きな学びがありました。特に、「70歳を過ぎた今でも修行中」とのことばは、これからの私の大きな目標となりました。

翌日は「夢の演奏会~サックス&ピアノの響きを心で感じる!~」と題して1年生から6年生、 先生方を含めて350人ほどで聴きました。 45分間、演奏曲目はアンコールも含めて全6曲の大熱演でした。

生徒達は、見たことのない演奏にあっけにとられたり、ジーッと見入ったりでしたが、全体としてこの時を逃すまいという真剣な態度が読み取れました。迫力を魂で受け止めたという感じです。生徒はそれぞれ時間をかけて解釈していけばいいと思います。それが成長です。

生徒の感想文をもらいましたが、なかでも私が印象深かったのは、”A Good For Nothing (役立たず)”という曲です。独特の曲で、歌詞・曲・テンポなど、小学生にわかるかと思いましたが、奏者が演奏後に生徒に語ったことばが、時間を経て私の心によみがえってきたのです。 たしか、こんなシーンだったと記憶しています・・・

「みんなの中で、零点をとったことがある人はいますか」
素直に会場から何人かがハーイと手を挙げました。

「では、100点取ったことのある人は手を挙げて」
何人かの生徒が無言で手を挙げます。

「いいですか、100点の人は、零点をとった人に感謝しなければいけません。 みんなが100点なら嬉しくもないし、やる気も出ないでしょう。零点の人がいるから、 ヤッター、嬉しいと思えるんです。だから100点の人は零点の人に感謝しなければいけません」

「零点の人も、俺は役立っていると思えばいい、そういうものです。役立たずとして、 役に立っているんです」

感想文で、この「役たたず」という曲が良かったという生徒が多かったことは、奏者の 「人間は生きているだけで価値がある」という人生における大きなメッセージ(私の解釈ですが)を小学生なりに直感的に受け止めたのではないかと私は思うのです。

そして、この演奏会は先生方にも大きな感動をもたらしたと確信します。なぜそういえるのか。それは・・・

先生方からサプライズ的な行動があったからです。 演奏会の翌日、ある先生が少ないですがといって、先生方から集まったカンパを代表して私に届けてくれました。

名もない私たち夫婦が全額費用負担したことを感じてくれたのでしょうか。 思いがけないことであり、目頭が熱くなりました。こちらこそ先生方に感謝です。

生徒達や先生方と一緒に聴き、大きな感動と素晴らしい体験を得た私たち夫婦ですが、元音楽教師だった妻がひとこと私につぶやきました。

「坂田明さんは小さな大巨人だね。」

この記事を書いた人

長谷川 正之
長谷川戦略マーケティング研究所所長

1955年生まれ、長野県埴科郡坂城町出身。長野県信連勤務後、政策研究大学院大学で公共政策修士を取得。長野県や上田市で統一ブランドの創設や農産物マーケティングを推進。また、小学校PTA会長や地域活動にも積極的に取り組む。現在、中小企業診断士・公共政策修士として「長谷川戦略マーケティング研究所」を立ち上げ、企業や行政のマーケティング支援に従事している。落語鑑賞が趣味で、「上に立つより前に立つ」や「やってみなければ幸運にも巡りあえない」という言葉が好き。
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